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第二部 獣人武闘祭
第177話
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現在も弟子は募集しているのだが、今のところ一人も入門者はいなかった。元勇者パーティーの一員であったネームバリューがまったく活きていないのは、言うまでもないが若干ショックである。
まあ、それも無理ないか。私が勇者パーティーを抜けてから、もうずいぶん経つものねぇ。諸行無常。かつては新聞の一面を騒がせた聖女ディーナも、世間様にとっては、今や過去の人ってことね。
・
・
・
そして、さらに一ヶ月が経ち、J1グランプリ予選まで残り一ヶ月を切った頃、突然『あの子』がやって来たのだ。
その日は、朝から良い天気だった。
裏の川で顔を洗い、使い古したタオルで垂れ落ちる雫を拭きながら道場に戻る。
「おはよう、ミャオ。今日の朝ごはんは何?」
道場の隅にある簡易調理場で煮炊きをしているミャオに、声をかける。一緒に暮らすようになってから、食事の準備は全てミャオがしてくれた。長らく一人暮らしをしていたためか、その料理の腕はなかなかのものである。
「おはようございますニャ、先生。今日の朝ごはんは鍋ですニャ」
「えぇ……また……?」
ここのところ、朝昼晩、全て鍋系の料理ばかり。
どれも美味しかったが、こう毎日ではさすがに飽きてくる。
「鍋は沢山の栄養を効率よくとれるニャ。J1グランプリまであと少しニャ。体づくりのためには鍋が一番ニャ」
「そりゃまあ、そうだけど、たまにはパンとサラダとか、そういう朝食が食べたいなぁ」
「そういうことなら、乾燥させた木の実をひき潰して作った、保存食の乾パンがありますニャ」
こじんまりとした壺から、ミャオはくるみサイズの不思議な塊を取り出した。それはお世辞にも美味しそうには見えなかったか、パンが食べたいと言った手前、素直に口に入れる。
バリ……ボリ……ガリ……
硬い。
石ころでも食べてるような感触だ。
だが。
「美味しい。食感は石だけど、色んな木の実の味が調和してて、味は凄くいいわね、これ。食感は石だけど」
「そんなに硬いですかニャ? まあ、人間の歯と顎は貧弱だから、そう感じるかもしれませんニャ。ニャフフ……人間……なんて矮小な種族ニャ。いずれ、大災害により世界から文明が消えたら、獣人族が覇権を握るのは間違いないですニャ」
「ミャオって時々、ナチュラルに差別発言をするよね」
「申し訳ありませんニャ。獣人族の誇りと荒ぶる本能のせいですニャ。大目に見てほしいニャ」
「もう慣れたしいいわよ。それで、サラダは?」
まあ、それも無理ないか。私が勇者パーティーを抜けてから、もうずいぶん経つものねぇ。諸行無常。かつては新聞の一面を騒がせた聖女ディーナも、世間様にとっては、今や過去の人ってことね。
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そして、さらに一ヶ月が経ち、J1グランプリ予選まで残り一ヶ月を切った頃、突然『あの子』がやって来たのだ。
その日は、朝から良い天気だった。
裏の川で顔を洗い、使い古したタオルで垂れ落ちる雫を拭きながら道場に戻る。
「おはよう、ミャオ。今日の朝ごはんは何?」
道場の隅にある簡易調理場で煮炊きをしているミャオに、声をかける。一緒に暮らすようになってから、食事の準備は全てミャオがしてくれた。長らく一人暮らしをしていたためか、その料理の腕はなかなかのものである。
「おはようございますニャ、先生。今日の朝ごはんは鍋ですニャ」
「えぇ……また……?」
ここのところ、朝昼晩、全て鍋系の料理ばかり。
どれも美味しかったが、こう毎日ではさすがに飽きてくる。
「鍋は沢山の栄養を効率よくとれるニャ。J1グランプリまであと少しニャ。体づくりのためには鍋が一番ニャ」
「そりゃまあ、そうだけど、たまにはパンとサラダとか、そういう朝食が食べたいなぁ」
「そういうことなら、乾燥させた木の実をひき潰して作った、保存食の乾パンがありますニャ」
こじんまりとした壺から、ミャオはくるみサイズの不思議な塊を取り出した。それはお世辞にも美味しそうには見えなかったか、パンが食べたいと言った手前、素直に口に入れる。
バリ……ボリ……ガリ……
硬い。
石ころでも食べてるような感触だ。
だが。
「美味しい。食感は石だけど、色んな木の実の味が調和してて、味は凄くいいわね、これ。食感は石だけど」
「そんなに硬いですかニャ? まあ、人間の歯と顎は貧弱だから、そう感じるかもしれませんニャ。ニャフフ……人間……なんて矮小な種族ニャ。いずれ、大災害により世界から文明が消えたら、獣人族が覇権を握るのは間違いないですニャ」
「ミャオって時々、ナチュラルに差別発言をするよね」
「申し訳ありませんニャ。獣人族の誇りと荒ぶる本能のせいですニャ。大目に見てほしいニャ」
「もう慣れたしいいわよ。それで、サラダは?」
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