文字サイズ
特大
244 / 389
第二部 獣人武闘祭

第244話

 しかし、良い香りだわ。

 ケチャップが熱で焼ける香ばしい匂いに、ソーセージと野菜、何よりニンニクの香りが混ざって、食欲をそそる。大量にあったゆで汁も、親父さんがフライパンで煮詰めていくと、あっという間になくなってしまった。

 そして、完成したナポリタンが私の前に運ばれてきた。

 早速口に含もうとした途端、後ろから声がかかる。
 私以外の三人のお客の誰からしい。

「お姉ちゃん、タバスコと粉チーズかけると、もっと美味いよ。おやっさん、出してあげなよ」

 私は声の主に、軽く会釈する。
 正面では、親父さんが無言でタバスコと粉チーズを出した。

 そんなのあるなら、最初からかけてくれればいいのに。

 私はタバスコをかけながら若干不満に思ったが、あることを思い出し、粉チーズを振ることを躊躇する。あれ、そういえば、ニンニクを使ったパスタって、普通は粉チーズをかけないんじゃなかったっけ。

 誰かに、そう聞いたことがある。しかし、わざわざ用意してもらって、かけないのも角が立つので、少しだけかけることにした。

 あっ。

 しまった。

 粉チーズの瓶。その口がかなり大きめであり、思ったより大量に粉チーズがかかってしまった。まるで、赤い大地に雪が積もったようだ。まあ、やってしまったものはしかたない。

 私は恐る恐るといった感じで、スパゲッティを口に運ぶ。フォークなどというしゃれたものは出されなかったので、箸を使ってである。

 ……美味しい。
 とっても、美味しい。

 私の良く知るナポリタンの味に、ニンニクの風味が加わり、絶妙だ。

 それに、なんというか、うま味が凄く強い。
 あの、良く分からない調味料のせいだろうか。

 そう思っていると、再び、背後から声をかけられた。

「料理中、ゆで汁をだばだばフライパンに入れたから、びっくりしたろ。でも、ああやってから水分を飛ばすと、スパゲッティのうま味が凄く良くなるんだってよ。そうだよな、おやっさん」

 親父さんは、聞き取れないほどの小声で、「ええ、まあ」と言った。
 ふうん。あれは調理ミスじゃなかったのね。

 それにしても、美味しい。
 粉チーズをかけすぎたのも、気にならないほど、美味しい。
 と言うより、大量の粉チーズが、スパゲティの味を引き立たせているのだ。
感想 290

あなたにおすすめの小説

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】 表紙

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……
ファンタジー 完結 長編
文字数:155,066
姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】 表紙

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……
ファンタジー 完結 短編
文字数:25,431
婚約破棄された「無能」聖女、拾った子犬が伝説の神獣だったので、辺境で極上もふもふライフを満喫します。~捨てた国が滅びそう?知りません~ 表紙

婚約破棄された「無能」聖女、拾った子犬が伝説の神獣だったので、辺境で極上もふもふライフを満喫します。~捨てた国が滅びそう?知りません~

「エリアナ、貴様との婚約を破棄し、この国から追放する!」 聖女としての魔力を使い果たし、無能と蔑まれた公爵令嬢エリアナ。 妹に婚約者を奪われ、身一つで北の最果て、凍てつく「死の森」へと捨てられる。 寒さに震え死を覚悟した彼女が出会ったのは、雪に埋もれていた一匹の小さなしっぽ。 「……ひとりぼっちなの? 大丈夫、私が温めてあげるわ」 最後の手向けに、残されたわずかな浄化の力を注いだエリアナ。 だが、その子犬の正体は――数千年の眠りから目覚めた、世界を滅ぼす伝説の神獣『フェンリル』だった! ヒロインの淹れるお茶に癒やされ、ヒロインのブラッシングにうっとり。 最強の神獣は、彼女を守るためだけに辺境を「極上の聖域」へと作り替えていく。 一方、本物の聖女(結界維持役)を失った王国では、災厄が次々と降り注ぎ、崩壊の危機を迎えていた。 今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくる王子たち。 けれど、エリアナの膝の上には、甘えん坊の神獣様(執着心MAX)が陣取っていて――。 「聖女の仕事? いえ、今は神獣様とのお昼寝の方が忙しいので」 無自覚チートな聖女と、彼女にだけはデレデレな神獣様による、逆転溺愛スローライフが幕を開ける!
ファンタジー 完結 長編
文字数:135,409
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ? 表紙

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
ファンタジー 完結 長編
文字数:106,846
完結 さようならと言った少女と、家族を失った父 表紙

完結 さようならと言った少女と、家族を失った父

私の本当のお母様は、もうこの世界にはいない。 6歳で母を亡くした少女。父親が連れてきた「新しい家族」の輪に入ることも許されず、食事さえ拒むようになった彼女に突きつけられたのは、父からの容赦ない暴言と手酷い一打だった。 「お母様のところへいきます」 一通の遺書を残して冷たい池に消えた少女の、切なくも温かな再スタートの物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:49,486
謎ギフト【きらきら】は万能です!追放された元社畜の転生聖女、辺境で洗濯屋を始めたら、勇者と騎士団長と訳ありおじさまが放っておいてくれません! 表紙

謎ギフト【きらきら】は万能です!追放された元社畜の転生聖女、辺境で洗濯屋を始めたら、勇者と騎士団長と訳ありおじさまが放っておいてくれません!

【完結ファンタジー10位感謝!】 「俺の村に、来るか?」 追放された私を拾ってくれた、 大人でちょっぴり不器用なおじさまは正直――どストライクでした。 「おめでと~! あなた、転生聖女よ!」 三徹のあげく目を開けると、転生聖女になっていた私。 雑で軽い女神様から告げられた使命は、魔王から異世界を救うこと。 なのに、授かったギフトは――「きらきら」? 女神様には「使えばわかるから~☆」と雑に送り出され――。 支援系ギフトだと思ったのに、勇者にも騎士にも効果がなく、王様に「役立たず」と決めつけられ、即追放されてしまう。 失意のなか、年上の彼――おじさまとの出会い。 やがて辿り着いた田舎の村で私はようやく気付く。このギフト、実は――戦うためのものじゃない? 村人の勧めで洗濯屋スローライフを始めたところ、やっぱり元社畜の私は、いつの間にか洗濯屋ビジネスを拡大してしまう。 少しずつ彼と距離が縮まり、やがて秘められた“過去”を知る。 そして、勇者と騎士団長、そしておじさまと共に、 ついに王様や魔王とも対峙することになり――。 追放聖女がイケメンズと訳ありイケオジと紡ぐ、 逆転「きらきら」スローライフ、開幕です! ※ほっこり笑えてちょっぴりドキドキの異世界スローライフコメディ ※しっかりざまぁ、恋愛はじれじれ寄り ※第一部+温泉郷編、全39話。完結済です。一気読みもどうぞ。 ※他サイトにも掲載しています。 ※MFブックスイケオジ小説コンテスト女性部門3位(8/13)
ファンタジー 完結 長編
文字数:94,009
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~ 表紙

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています
ファンタジー 完結 短編
文字数:14,584
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか? 表紙

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
ファンタジー 完結 長編
文字数:103,382