338 / 389
第二部 獣人武闘祭
第338話
しおりを挟む
タマラとドラムの凄惨な試合から二日後。
出そろったベスト4たちによる、二回戦の日程が始まった。
私とミャオは今、リングへと向かう道を歩いている。
あの、ミス・マウンテンゴリラ――アニー・アリエスと戦うためだ。
ミャオは、ネルロと戦った一回戦と同じように、コンディションを調節し、きっちりアップをして、ベストの状態だ。体は芯から温まり、うっすらとした汗が表皮を包んでいる。
肩、胸、背、腕、腹、足……全ての部位に、良い意味での張りがあり、強烈なエネルギーがうねっている。まるで、各部位の筋肉たちが、『今すぐに私たちを存分に使って、戦ってくれ!』と主張しているようだ。
こういう時、格闘技者は、最高のパフォーマンスを見せることができる。
もう一度言うが、まさしくベストの状態だ。
調整は、大成功である。
だが、ミャオの顔には、明らかに覇気がなかった。
無理もない。
知ってしまったのだ。
たとえ、この試合に勝ったとしても、自分は絶対に優勝などできないことを。
それほどに、タマラの試合は衝撃的だった。
彼女は、強すぎた。
技がどうとか、力がどうとか言う前に、そもそも次元が違う。
人間の陸上競技大会に、チーターが出てきたようなものだ。
勝てるわけがない。
ミャオは、そう思っている。
私も、そう思っている。
ああ。
私は、なんて情けないトレーナーなのだろう。
タマラと自分の間にある、凄まじい力の差を思い知ったミャオ。
自信や闘志を砕かれて、迷いが心を満たしているであろうミャオ。
それでも必死に『先生、僕、あの子に勝てるニャ……?』と聞いてきたミャオ。
……そんなミャオに、私は、何も言ってあげることができなかった。
でも、嘘をついてまで『勝てる』と言うことが、正しいことだとも思えなかった。しかし、やはり、何か言ってあげるべきだったと、思う。
でも、何を?
わからない。
ああ。
何をごちゃごちゃ考えているの。
これから試合だというのに。
私は、雑念を振り払おうと、頭を左右に振る。
いつのまにか、リングサイドに到着していた。
何か、言わなければ。
しかし言葉が出てこない。
出そろったベスト4たちによる、二回戦の日程が始まった。
私とミャオは今、リングへと向かう道を歩いている。
あの、ミス・マウンテンゴリラ――アニー・アリエスと戦うためだ。
ミャオは、ネルロと戦った一回戦と同じように、コンディションを調節し、きっちりアップをして、ベストの状態だ。体は芯から温まり、うっすらとした汗が表皮を包んでいる。
肩、胸、背、腕、腹、足……全ての部位に、良い意味での張りがあり、強烈なエネルギーがうねっている。まるで、各部位の筋肉たちが、『今すぐに私たちを存分に使って、戦ってくれ!』と主張しているようだ。
こういう時、格闘技者は、最高のパフォーマンスを見せることができる。
もう一度言うが、まさしくベストの状態だ。
調整は、大成功である。
だが、ミャオの顔には、明らかに覇気がなかった。
無理もない。
知ってしまったのだ。
たとえ、この試合に勝ったとしても、自分は絶対に優勝などできないことを。
それほどに、タマラの試合は衝撃的だった。
彼女は、強すぎた。
技がどうとか、力がどうとか言う前に、そもそも次元が違う。
人間の陸上競技大会に、チーターが出てきたようなものだ。
勝てるわけがない。
ミャオは、そう思っている。
私も、そう思っている。
ああ。
私は、なんて情けないトレーナーなのだろう。
タマラと自分の間にある、凄まじい力の差を思い知ったミャオ。
自信や闘志を砕かれて、迷いが心を満たしているであろうミャオ。
それでも必死に『先生、僕、あの子に勝てるニャ……?』と聞いてきたミャオ。
……そんなミャオに、私は、何も言ってあげることができなかった。
でも、嘘をついてまで『勝てる』と言うことが、正しいことだとも思えなかった。しかし、やはり、何か言ってあげるべきだったと、思う。
でも、何を?
わからない。
ああ。
何をごちゃごちゃ考えているの。
これから試合だというのに。
私は、雑念を振り払おうと、頭を左右に振る。
いつのまにか、リングサイドに到着していた。
何か、言わなければ。
しかし言葉が出てこない。
10
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる