二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第356話(タマラ視点)

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「待てよ」

 その呼びかけで、やっとわかった。
 おじさんは、あたしに話しかけていたのだ。

 えぇ。
 やだなあ。
 あたし、あんまり知らない人と、おしゃべりしたくない……

 でも、あたしは止まって、振り向いた。ドラムさんって人が亡くなって悲しんでるみたいだから、慰めてあげてもいいかなって、思ったんだ。

 びっくりした。

 おじさんは、突然あたしに殴りかかってきた。

 あたしは、ひらりとそれをかわす。

 けっこう、凄いパンチだった。
 この人、素人じゃないね。

 それにしてもあぶないなあ。
 あたしじゃなかったら、大怪我どころか、即死してもおかしくないよ。

 この人、あたしと喧嘩したいのかな?

 喧嘩は、ダメだよ。

 ノエル、いつも言ってたもん。
 喧嘩はよくないって。
 みんな仲良くしなきゃダメだって。

 あたしは、そのことをおじさんに教えてあげた。
 おじさんは、顔をトマトみたいに赤くした後、ニヤッと笑った。

「そうかい。そうかい。そりゃ、いい教えだ。確かに、喧嘩はよくないわなぁ。いいことを教えてくれて、ありがとうよ」

 どういたしまして。

「お返しによぉ。俺からもいいことを教えてやるよ。喧嘩はよくないが、殺し合いはいいんだぜ。とても、いいことなんだ」

 えっ。
 どうして?

「そりゃそうさ。喧嘩はな、終わった後に、遺恨ってやつが残る。負けりゃあ、自分をぶちのめした野郎が憎くて憎くてつらいし、勝ったら勝ったで、後々復讐されるかもしれない。ところが、殺し合いは違う。相手をぶっ殺せば話はそれで終わりだし、自分が死ねば、完全な無だ。恨みもクソもねえ。な? いいことずくめだろ?」

 なるほど~。
 おじさん、頭いいね。

「だからな、俺がお嬢ちゃんをぶっ殺してやるよ。……たっぷりなぶって、辱めて、生き地獄を味わわせてからな。ドラムの何倍も苦しめてやる。覚悟しろ」

 うーん。
 でもあたし、やっぱり殺されるのはやだなあ。
 今日からディーナとお泊りだし、やりたいこと、いっぱいあるもん。

 うーん。
 うーん。

 あっ、そうだ。あたしがおじさんを殺しちゃえばいいんだ。そうすれば、『イコン』は残らないし、おじさんは完全な無になるから、いいことずくめだ。
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