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第二部 獣人武闘祭
第370話
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「あの雌犬、めちゃくちゃ強かったけど、なんで試合中、ずっとアホづらしてたニャ?」
観戦を終え、ホテルへの帰り道を歩きながら、ミャオが言う。
「アホづらって……相変わらず、カズネに対しては辛らつよね、あなた。うーん、棄権したお姉さんのことが、心配だったとか?」
私に推測できる理由は、そのくらいだった。
「ふむふむ、なるほどですニャ。それにしても、いきなりの大逆転でビックリの試合だったニャ。タマラちゃんって、凄いニャねえ……」
「ええ。あの短時間で、カズネの合気を返しちゃうなんてね。でも、私はそのことより、タマちゃんが一回戦みたいな酷い戦い方をしなかったことが嬉しいわ」
「雌犬の技が凄すぎて、モーレツタックルを繰り返すしかなかったんじゃないのかニャ?」
私は、首を左右に振った。
「確かにカズネの技は凄かった。でも、ダーティーな方法を使えば、もう少し簡単にあの合気を破ることもできたのよ。カズネ自身に、全然集中力がなかったからね。タマちゃんほどの闘士なら、それに気がつかないはずがない。でも、あえてクリーンなファイトに徹したんだわ」
「ダーティーな方法って、どんなのニャ?」
「一番簡単なのが、血の目つぶしかな。自分で頬の中を傷つけて、口内に血を溜める。それで、接近した瞬間、一気に相手の両目に吹き付けるの。その後数秒間は、ほぼ無条件にこちらの攻撃が当たるわ」
「うわぁ~、なんかずっこいニャ」
「だから、ダーティーな方法って言ったでしょ」
「先生は、そういう技、使ったことあるニャ?」
「さあ、どうかしら。女の過去はミステリアスなものよ」
「先生の場合は、ミステリアスというよりバイオレンスな匂いがするニャ」
「言ってくれるわねえ」
そこで一旦会話が切れ、しばらく歩いてから、ミャオが静かに言う。
「僕は、ずっこい技や危ない技を使って潰し合うより、戦った後で仲良しなれる試合のほうがいいニャぁ」
私は、微笑を浮かべて頷いた。
「私もよ」
そんなことを話しながら、グランディア国際ホテルの自室に到着する。急遽予定が短縮され、今日で全試合が終了したということで、この豪華すぎるお部屋とは、結局この一晩だけのつきあいになりそうだ。
私は、ふかふかの究極を突き詰めたような柔らかベッドに、横になる。
ミャオは、窓から見える、グランディアの夜景を楽しんでいた。
突然、ノックもなしに、ドアが開く。そして、タマラが入って来た。彼女は声をかける間もなく私に伸し掛かると、胸に顔を埋めるようにして、スリスリと頭を押し付けてくる。
「ねえ、ナデナデして!」
そのおねだり通りに、私は彼女の頭を撫でてあげる。
観戦を終え、ホテルへの帰り道を歩きながら、ミャオが言う。
「アホづらって……相変わらず、カズネに対しては辛らつよね、あなた。うーん、棄権したお姉さんのことが、心配だったとか?」
私に推測できる理由は、そのくらいだった。
「ふむふむ、なるほどですニャ。それにしても、いきなりの大逆転でビックリの試合だったニャ。タマラちゃんって、凄いニャねえ……」
「ええ。あの短時間で、カズネの合気を返しちゃうなんてね。でも、私はそのことより、タマちゃんが一回戦みたいな酷い戦い方をしなかったことが嬉しいわ」
「雌犬の技が凄すぎて、モーレツタックルを繰り返すしかなかったんじゃないのかニャ?」
私は、首を左右に振った。
「確かにカズネの技は凄かった。でも、ダーティーな方法を使えば、もう少し簡単にあの合気を破ることもできたのよ。カズネ自身に、全然集中力がなかったからね。タマちゃんほどの闘士なら、それに気がつかないはずがない。でも、あえてクリーンなファイトに徹したんだわ」
「ダーティーな方法って、どんなのニャ?」
「一番簡単なのが、血の目つぶしかな。自分で頬の中を傷つけて、口内に血を溜める。それで、接近した瞬間、一気に相手の両目に吹き付けるの。その後数秒間は、ほぼ無条件にこちらの攻撃が当たるわ」
「うわぁ~、なんかずっこいニャ」
「だから、ダーティーな方法って言ったでしょ」
「先生は、そういう技、使ったことあるニャ?」
「さあ、どうかしら。女の過去はミステリアスなものよ」
「先生の場合は、ミステリアスというよりバイオレンスな匂いがするニャ」
「言ってくれるわねえ」
そこで一旦会話が切れ、しばらく歩いてから、ミャオが静かに言う。
「僕は、ずっこい技や危ない技を使って潰し合うより、戦った後で仲良しなれる試合のほうがいいニャぁ」
私は、微笑を浮かべて頷いた。
「私もよ」
そんなことを話しながら、グランディア国際ホテルの自室に到着する。急遽予定が短縮され、今日で全試合が終了したということで、この豪華すぎるお部屋とは、結局この一晩だけのつきあいになりそうだ。
私は、ふかふかの究極を突き詰めたような柔らかベッドに、横になる。
ミャオは、窓から見える、グランディアの夜景を楽しんでいた。
突然、ノックもなしに、ドアが開く。そして、タマラが入って来た。彼女は声をかける間もなく私に伸し掛かると、胸に顔を埋めるようにして、スリスリと頭を押し付けてくる。
「ねえ、ナデナデして!」
そのおねだり通りに、私は彼女の頭を撫でてあげる。
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