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第二部 獣人武闘祭
第371話
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「高い高いもして!」
仰せのままに。
私はベンチプレスのようにタマラを持ち上げると、サービスとして、ぽんっと空中に放り投げた。それを、優しくキャッチすると、タマラは大喜びだ。
「もう一回! もう一回やって!」
はいはい。
同じ動作を、もう一回やる。
あっ、しまった。
手が滑り、キャッチし損ねて、タマラは私の胸に直接落ちた。顔と顔が近づき、互いの目を見つめ合うと、なんだかおかしくて、吹き出してしまう。
「きゃはっ、きゃははは!」
「ふふっ」
ひとしきり笑った後、タマラが言った。
「お姉さん、誰?」
「えっ?」
何かの冗談?
そう聞き返そうとしたときには、タマラはもう眠っていた。
試合で、疲れたのだろう。
私は彼女をそっとベッドに横たえると、布団をかけてあげた。
・
・
・
翌日。
私はまだ眠ったままのミャオとタマラを部屋に残し、パトリックに会いに行った。タマラの心のケアをするという名目で貰ったお金を、返すためだ。
袋の中を改めて確認すると、1000ゴールド金貨が、50枚。つまり、五万ゴールドも入っていた。もう一試合あるならともかく、半日かそこら一緒にいてあげただけで、こんな大金を貰うわけにはいかない。
私は、パトリックの部屋をノックする。
「どうぞ」と、短い声が聞こえた。
中に入り、まずは昨日のタマラの健闘と、優勝に対する賛辞を贈った。
パトリックは、人のよさそうな笑みを浮かべ、私の手を握る。
「いやあ、すべてはディーナさんのおかげですよ。昨日の試合は、本当に素晴らしかった。少し調整に失敗すると、たちまち狂暴になってしまうタマラが、あれほどクレバーに、相手の技を学習するように戦うなんて。あなたに言われたことが、随分と心に響いたのでしょうね」
私は恐縮し、首を左右に振る。
「あの子は、もともと優しい子なんです。狂暴になりがちなのは、まだ子供で、闘志の使い方をよくわかっていないせいなのでしょう。なんたって、12歳ですからね。これから成長して、精神的に大人になれば、簡単に心を乱すようなことはなくなりますよ、きっと」
「ははは、さすがは格闘家同士ですね。短い付き合いなのに、私よりもよっぽどタマラを理解されているようだ。それで、今朝は何の御用でしょうか?」
「あっ、はい。この、昨日いただいたお金のことなんですが……」
仰せのままに。
私はベンチプレスのようにタマラを持ち上げると、サービスとして、ぽんっと空中に放り投げた。それを、優しくキャッチすると、タマラは大喜びだ。
「もう一回! もう一回やって!」
はいはい。
同じ動作を、もう一回やる。
あっ、しまった。
手が滑り、キャッチし損ねて、タマラは私の胸に直接落ちた。顔と顔が近づき、互いの目を見つめ合うと、なんだかおかしくて、吹き出してしまう。
「きゃはっ、きゃははは!」
「ふふっ」
ひとしきり笑った後、タマラが言った。
「お姉さん、誰?」
「えっ?」
何かの冗談?
そう聞き返そうとしたときには、タマラはもう眠っていた。
試合で、疲れたのだろう。
私は彼女をそっとベッドに横たえると、布団をかけてあげた。
・
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・
翌日。
私はまだ眠ったままのミャオとタマラを部屋に残し、パトリックに会いに行った。タマラの心のケアをするという名目で貰ったお金を、返すためだ。
袋の中を改めて確認すると、1000ゴールド金貨が、50枚。つまり、五万ゴールドも入っていた。もう一試合あるならともかく、半日かそこら一緒にいてあげただけで、こんな大金を貰うわけにはいかない。
私は、パトリックの部屋をノックする。
「どうぞ」と、短い声が聞こえた。
中に入り、まずは昨日のタマラの健闘と、優勝に対する賛辞を贈った。
パトリックは、人のよさそうな笑みを浮かべ、私の手を握る。
「いやあ、すべてはディーナさんのおかげですよ。昨日の試合は、本当に素晴らしかった。少し調整に失敗すると、たちまち狂暴になってしまうタマラが、あれほどクレバーに、相手の技を学習するように戦うなんて。あなたに言われたことが、随分と心に響いたのでしょうね」
私は恐縮し、首を左右に振る。
「あの子は、もともと優しい子なんです。狂暴になりがちなのは、まだ子供で、闘志の使い方をよくわかっていないせいなのでしょう。なんたって、12歳ですからね。これから成長して、精神的に大人になれば、簡単に心を乱すようなことはなくなりますよ、きっと」
「ははは、さすがは格闘家同士ですね。短い付き合いなのに、私よりもよっぽどタマラを理解されているようだ。それで、今朝は何の御用でしょうか?」
「あっ、はい。この、昨日いただいたお金のことなんですが……」
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