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セレナサイド いざ、敵地へ
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セレナサイド
「馬車って思ってたよりも遅いのね。これなら馬に乗ってきた方が良かった気がする」
いざ、敵地へと意気込んで馬車に乗って数分後、セレナは文句を言っていた。
かなりのスピードで走る馬車の乗り心地は悪くないが、車に比べたら揺れるし遅いだろうが、この世界では早い乗り物だ。
「乗馬が出来るのですか?」
シルヴァンが驚いた声を上げたが
「セレナ様、できない事は言うものではありません」
と、蓮に怒られアリスに呆れられてしょげかえっていた。
「これって、ゾンビ?」
「なんか、気持ち悪いね」
「お時間はとりませんので」
ガザリン家の別邸に着くと、ゾンビの様に無表情で襲い掛かる護衛官達をセレナが気持ち悪い、と言い蓮達があっさり気絶させるとセレナ達はエントランスで魂を抜かれた様にへたり込むザガリン侯爵を横目に携帯で別邸内でセシリアの追跡していると、言い争う声が聞こえてきた。
声がした、別邸の奥にある成金趣味の部屋に飛び込むと、パチン、と誰かが叩かれるの音がし、セレナ達は驚きながらセシリアを見た。
「何を駄々を捏ねる子供の様な事を仰るのです。蔑ろにされるのがそんなに嫌ならこの世界から出て、ご自分の力で世界を勝手にお作りになれば宜しいでしょう」
セシリアの言葉に頬を叩かれたマーカスが目を見開いている。
いや、マーカスの中に居るバースの驚きが出ているのだろう。
「お一人で、何も無いところから全部始めれば、ライン様のご苦労や想いもご理解できる筈ですわ」
怒っているのに、微かに震えているセシリアは泣いている様に感じる。
「ならば共に行こう。其方が我が手の中にいれば、我の世界は光り輝く」
叩かれた頬に手もあてず、マーカスは、いやバースはセシリアを説得しようとしている。
「参りません。ライン様はわたくし達が生きる場所を与えて下さいました。貴方はわたくしに死ぬ事を求めた」
本当の死では無いが、大切な人達の苦しむ様を見せつけられる監禁などされたら心が死んでしまう。
「慈しみの無い神など不要です。お好きな場所で勝手になさればいい」
「セシ……」
セシリアの拒絶の言葉にマーカスが硬直した途端、眩い光が彼を包んだ。
『やっと封印できた』
その場にいるもの達の耳に、ラインの声が聞こえた。
「ライン!」
セレナ達が光の方に走り寄ると、はっきりとは見えないが、人の形になったラインが黒いモヤを閉じ込めたガラス玉を手にセレナの方を向いた。
『セレナ、君達と言う異種の力を混ぜる事でバースの動きを制限できた。感謝する』
管理者ゆえこの世界に直接関わる事が出来ないが、セレナ達のおかげで暴走していたバースの動きを鈍らせる事ができ、バースを真っ向から否定したセシリアのおかげで逃げ回っていたバースを封印できた。
『セシリア、君に無理をさせたね。だが、君のお陰でバースを封じれたよ』
「ライン様」
涙で瞳を潤ませ、儚げな微笑みを浮かべて見せたが、暖かな光に包まれセシリアの意識がふっ、と遠のいていく。
倒れそうなセシリアをシルヴァンが抱きとめた。
「お帰りなさい、セシリア嬢」
「シルヴァン様」
シルヴァンの腕の中で安心したのか、唇に微笑みを浮かべながらセシリアは意識を失った。
「セシリアたんは怪我してない?」
セレナが心配そうにラインの隣から走り寄って来た。
「お怪我はなさそうです。ですがかなり疲労されている様なので、早く休ませて差し上げたい」
シルヴァンはセシリアを抱き上げると、部屋を出よう、とマーカス達に背を向けた。
「馬車って思ってたよりも遅いのね。これなら馬に乗ってきた方が良かった気がする」
いざ、敵地へと意気込んで馬車に乗って数分後、セレナは文句を言っていた。
かなりのスピードで走る馬車の乗り心地は悪くないが、車に比べたら揺れるし遅いだろうが、この世界では早い乗り物だ。
「乗馬が出来るのですか?」
シルヴァンが驚いた声を上げたが
「セレナ様、できない事は言うものではありません」
と、蓮に怒られアリスに呆れられてしょげかえっていた。
「これって、ゾンビ?」
「なんか、気持ち悪いね」
「お時間はとりませんので」
ガザリン家の別邸に着くと、ゾンビの様に無表情で襲い掛かる護衛官達をセレナが気持ち悪い、と言い蓮達があっさり気絶させるとセレナ達はエントランスで魂を抜かれた様にへたり込むザガリン侯爵を横目に携帯で別邸内でセシリアの追跡していると、言い争う声が聞こえてきた。
声がした、別邸の奥にある成金趣味の部屋に飛び込むと、パチン、と誰かが叩かれるの音がし、セレナ達は驚きながらセシリアを見た。
「何を駄々を捏ねる子供の様な事を仰るのです。蔑ろにされるのがそんなに嫌ならこの世界から出て、ご自分の力で世界を勝手にお作りになれば宜しいでしょう」
セシリアの言葉に頬を叩かれたマーカスが目を見開いている。
いや、マーカスの中に居るバースの驚きが出ているのだろう。
「お一人で、何も無いところから全部始めれば、ライン様のご苦労や想いもご理解できる筈ですわ」
怒っているのに、微かに震えているセシリアは泣いている様に感じる。
「ならば共に行こう。其方が我が手の中にいれば、我の世界は光り輝く」
叩かれた頬に手もあてず、マーカスは、いやバースはセシリアを説得しようとしている。
「参りません。ライン様はわたくし達が生きる場所を与えて下さいました。貴方はわたくしに死ぬ事を求めた」
本当の死では無いが、大切な人達の苦しむ様を見せつけられる監禁などされたら心が死んでしまう。
「慈しみの無い神など不要です。お好きな場所で勝手になさればいい」
「セシ……」
セシリアの拒絶の言葉にマーカスが硬直した途端、眩い光が彼を包んだ。
『やっと封印できた』
その場にいるもの達の耳に、ラインの声が聞こえた。
「ライン!」
セレナ達が光の方に走り寄ると、はっきりとは見えないが、人の形になったラインが黒いモヤを閉じ込めたガラス玉を手にセレナの方を向いた。
『セレナ、君達と言う異種の力を混ぜる事でバースの動きを制限できた。感謝する』
管理者ゆえこの世界に直接関わる事が出来ないが、セレナ達のおかげで暴走していたバースの動きを鈍らせる事ができ、バースを真っ向から否定したセシリアのおかげで逃げ回っていたバースを封印できた。
『セシリア、君に無理をさせたね。だが、君のお陰でバースを封じれたよ』
「ライン様」
涙で瞳を潤ませ、儚げな微笑みを浮かべて見せたが、暖かな光に包まれセシリアの意識がふっ、と遠のいていく。
倒れそうなセシリアをシルヴァンが抱きとめた。
「お帰りなさい、セシリア嬢」
「シルヴァン様」
シルヴァンの腕の中で安心したのか、唇に微笑みを浮かべながらセシリアは意識を失った。
「セシリアたんは怪我してない?」
セレナが心配そうにラインの隣から走り寄って来た。
「お怪我はなさそうです。ですがかなり疲労されている様なので、早く休ませて差し上げたい」
シルヴァンはセシリアを抱き上げると、部屋を出よう、とマーカス達に背を向けた。
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