[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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怨霊ですか……(泣)

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「ようこそ、特別棟へ。我がアレキサンド王国の至宝殿」

授業の後、特別棟の豪華なサロンで顔を合わせたウィリアム達は笑顔で迎える。

「で、真相は?」

物凄い目でウィリアムを睨むシルヴィーにウィリアムはヘラっと笑う。

「ラスティックの馬鹿王が君の誘拐を企てている、と言う情報が入ってね。此処は堅固な砦にも匹敵するから」

ウィリアムではなく、パトリックが説明をしてくれたが、その情報は本当かもしれないが、それだけでは納得がいかない。

「で、本当はなんですか?」
「まったく。たまには騙されてくれよ」
「殿下の参謀がそんなに簡単に騙されても良いのですか?」

シルヴィーの冷静な言葉に、ウィリアムは諦めたように頷いた。

「面倒な手続き無しでこういう風に話せるようにしておく必要が出来た」

女子寮と男子寮を行き来するには、かなり面倒な手続きが必要な事は知っていた。

「何がありました?」
「怨霊が復活した、と言う」
「怨霊が!4年ほど前から姿を見せなくなっていた筈です」

怨霊とは、なんらかの理由で悲惨な最後を迎えて死んだ魔獣や精霊のことで、人の魂を引き裂く凶悪な存在だが、除霊も浄化も出来ない厄介な存在だ。

「アレキサンド王国では怨霊の発生が少なくなっていたが、此処数ヶ月で増え続けて騎士団が調査に当たっている」
「眷属の子供達が拐われただけでも頭が痛いと言うのに」

魔獣王や聖霊王までサロンに姿を現し、事態の深刻さを物語っている。

「怨霊は何故、生まれるのですか?」
「理由は分かっていない」

聖霊王が苦しげに眉を寄せ、首を振る。

「至る所に出現しているのですか?」
「王宮や聖域と見做されている場所には出ていないようだが」

街のど真ん中だと民達が怯えて、生活基盤がぐらつきかね無い。

「怨霊が嫌っている場所は様々な防御の魔法が敷かれている場所ですから、一概に何を嫌っているか推測するのは難しいですね」
「今までの情報ですと、出現場所はほぼ市井か下級貴族の住む区画だそうです」

ダドリーもいつの間にかサロンに居り、シルヴィーのお茶を用意している。
ダドリーから甘い、焼き菓子のような香りがしたが、クールな見た目と違い、甘党のダドリーが食べていたのだろう、と思わず笑いそうになった。

「市井や下級貴族の住む地域ね。其方は防御の魔法がどうしても弱くなりますからね」

聖霊王の言葉に、シルヴィーの中で一つの疑問が生まれた。

「怨霊が苦手なものは解らなくても、好んで出る場所は判りますか?」
「好んで出る場所?そんなとこ、あったか?」
「今までの出現場所は防御の魔法が弱い所であって、好んでいるとは思えんぞ」

ウィリアムや魔獣王が首を傾げるが、パトリックが何か思い当たったのか、しきりに唸りなが首を傾げている。

「4年前までは至る所に、だったが洞窟や森などが多かったのに、今回は洞窟や森ではなく街にしか出ていない」
「バロスでも、怨霊は場所を選んではいなかったわ」
「出現件数が少ないからかもしれませんが、此処に意味が有りそうですね」

シルヴィーが唇に指を当て、何かを考え始めた。

「ねぇシルヴィー。ギルドのユーノなら詳しい場所を知っているかも」

イザベルが心配そうな顔でシルヴィーを見詰めている。

「勇者や冒険者達ならオレ達より詳しい事、知ってるかもしれないぞ」

王宮に住むものより、市井に住む彼らなら怨霊の噂や出現を見ていたりするかも知れない。 
「ダドリー、ユーノに極秘で今回の件を聞いてみて。出来れば詳しい出現場所の特定も」
「承りました」

ダドリーはすぐに頭を下げて、甘い香りと共にサロンから出て行った。

「お化けかぁ」

シルヴィーがガックリと項垂れる。

「シルヴィー、やっぱりまだお化けとか嫌い?」

イザベルが悲しげな顔をするが、こればかりは根性でどうにか出来る物では無い。

「物理的に排除できないものは苦手だから……」
「確かにお化けって触れないものね」
「話ができない、訳が分からないものでも人間ならどうにかなるんですが……」

シルヴィーにとって、怨霊は出来るならではない、絶対会いたくない存在だ。

「意外すぎてビックリだ」
「シルヴィー様には苦手なものなど無い、と思ってました」

年相応の女の子っぽい事だと思うが、ウィリアムやシンシア達にとっては意外すぎる弱点らしい。
魔獣王や聖霊王も呆気に取られている。

「駄目なものは駄目なんです」

ちょっとだけシルヴィーが不貞腐れた。
なにせシルヴィーの、前世から筋金入りのお化け嫌いは根性で直せるものでは無い。
前世ではお化け屋敷なんか入った事ないし、学生時代見た、井戸から女の幽霊が這い出るホラー映画なんて気絶しそうなくらい苦手。

「とにかく、まずは情報を集めないと対処できませんから」

不機嫌そうな顔でシルヴィーがお茶に手を伸ばした。
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