[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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ピンクの雪だるま?

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フェーイックが騎士団に逮捕されて数日経った。

フェーイックはゼオンの宣言通り、3日後にあの黒づくめの男達に引き渡された。

何処の武器商人の手先か調べれば解るが、騎士団は盗まれた武器が戻り、フェーイックに協力した者達の処分が済めば、彼らの正体や雇い主を、表向きには調べる事はしなかった事にしたらしい。
そして、フェーイックがどうなったかなど、まるで気にしていない。

ゼオン達は事後調査の為、何度も学園に足を向けてはシルヴィーやベリルと話をする様になり、ゼオン達にシルヴィーを独占されているせいか、ルーファスやジェフリーの機嫌がすこぶる悪い。

そして、何故かダドリーも神経をピリつかせており、あの甘い香りがしなくなった事にシルヴィーは首を傾げていた。

「ダドリー、随分と荒れているわね」

ゼオン達との話し合いが終わり、給仕をしていたダドリーを残し部屋を出たナタリアが、呆れた様にシルヴィーを見る。

「本当に、何を気にしているのかしら?」
「まったく。いま、それどころじゃない筈なのに」

水面下でざわついている、学園の醜聞が公になるのも時間の問題だろうか。
フェーイックを騎士科の主任教師に据えた学園長が、先日の騒ぎの煽りを受け、自身の不正を暴かれ、解任される事が密かに決まった。

シルヴィーの助言を受け、錬成士長のカインが開発した、残存魔力を基にした筆跡鑑定の結果、本来なら学園長への就任など出来ない、ジルコニア伯爵の従兄弟である男は、既に身柄を拘束されている。

「次期学園長は……」
「ハロルドに聞いて」

うんざりした顔のナタリアが最有力者だろうが、人選は難航しているらしい。

「ナタリア先生なら、学園も良い方向に立て直せると思います」
「此処は王国に取っても大切な場所だから、荒れたままにはしたくないわ」

ナタリアがシルヴィーの肩に手を置いた時、微かにあの甘い香りがした。

「ナタリア先生もクッキー、好きでしたっけ?」
「えっ?あぁ、この匂いね。これは例の問題児の謹慎牢に山積みになってるから、移ってしまったの」

ナタリアの何気ない言葉に、シルヴィーの胸が何故かツキン、と痛む。

「それって、市販のものでは無いですよね」

シルヴィーの声が少し沈んでいたが、ナタリアはふぅ、と息を吐いた。

「クッキーは嫌いじゃないけど、ただ、問題なのはあのクッキー、美味しそうなんだけど、食べると爆発的に太るのよ」
「はい?」
「見ればわかるわよ」

何の事だろう?とシルヴィーが首を捻ると、ドスドスと物凄い足音が廊下の向こうからした。
足音のした方を見て、シルヴィーの目が丸くなる。

「ピ、ピンクの雪だるま?」
「に、見えるけどカーボン男爵令嬢よ」

シルヴィーの視線の先には、入学式の後で見たはずの、ヒロイン像に固執していた令嬢では無く、驚く程巨漢になった、ピンク頭のお花畑さんが、重そうな音と共に廊下を走って?行った。

「この数日で?」
「そう。でも、カーボン男爵令嬢は自分の体型が変わった事にまるで気が付いていないのよ」
「えっ!あれ程変わったのにですか?」
「そう。誰が作ったか知らないけど、絶大な効果ね」

ナタリアの呟きを聞きながら、驚きだけで無い胸の痛みや言い表せないモヤモヤに、シルヴィーは胸を押さえていた。
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