65 / 114
見え隠れする権力者の素顔。
しおりを挟む
実技の授業はイレギュラーな騒ぎの為、後日やり直す事となり、生徒達は興奮しながら各々の教室に戻ったが、流石に当事者のシルヴィーは戻る事が出来ず、ゼオン達と今後の予定を話し合っている。
「あの、ウィリアム殿下、お聞きしたいことが」
「さっき、シルヴィーがリリーって呼んでたね。聞きたいことって何?」
冷酷そうな顔が一転、人懐っこい笑顔にリリーがキュッと手を握り、ウィリアムの目を見詰めた。
「ジルコン公爵とは、ユーリファス・ジルコン様の事でしょうか?」
「そうだけど?」
ウィリアムが頷くと、途端にリリーの目が泣きそうになる。
「リリーの知り合い?」
シルヴィーの心配そうな顔に、リリーは首を横に振る。
「お顔は知りませんが、父が尊敬する方で、御身分が高すぎた為、騎士団に入れませんでしたが、剣聖の如き方だとずっと教えられてきましたので……」
リリーの話す人物像とウィリアム達が話す人物像がまるで一致しない。
「ベリル先生、どちらの話が先生が知るジルコン公爵に近いですか?」
フェーイックが付けた、ゴテゴテした装飾を剥がしながら、ベリルは真面目な顔で答えた。
「リリー嬢の話の方が、私が知るジルコン公爵様に近いです。ただ、あの方は20年以上も行方不明の御子息の安否だけを捜す頑なさもあります」
20年。それ程長い間、安否が分からなければ人は諦めるだろう。
「20年か、では公爵は政治に口出ししたり、自分の都合の良い者を政務に送り込んだりする様な人物か?」
「まさか!あの方は政治手腕は長けておりますが、国の安定を第一とする忠信溢れる方です」
ベリルのはっきりとした否定に、ウィリアムが頷いた。
「ならばベリル先生、まずは公爵に帰還の手紙を書いてくれ。文面の何処かに、シルヴィーの新しい魔法陣が盗まれた物を探し出してくれた、と入れて」
ウィリアムからの突然の申し出に、ベリルは困惑したが、ゆっくりと頷いた。
「あの、ウィリアム殿下、お聞きしたいことが」
「さっき、シルヴィーがリリーって呼んでたね。聞きたいことって何?」
冷酷そうな顔が一転、人懐っこい笑顔にリリーがキュッと手を握り、ウィリアムの目を見詰めた。
「ジルコン公爵とは、ユーリファス・ジルコン様の事でしょうか?」
「そうだけど?」
ウィリアムが頷くと、途端にリリーの目が泣きそうになる。
「リリーの知り合い?」
シルヴィーの心配そうな顔に、リリーは首を横に振る。
「お顔は知りませんが、父が尊敬する方で、御身分が高すぎた為、騎士団に入れませんでしたが、剣聖の如き方だとずっと教えられてきましたので……」
リリーの話す人物像とウィリアム達が話す人物像がまるで一致しない。
「ベリル先生、どちらの話が先生が知るジルコン公爵に近いですか?」
フェーイックが付けた、ゴテゴテした装飾を剥がしながら、ベリルは真面目な顔で答えた。
「リリー嬢の話の方が、私が知るジルコン公爵様に近いです。ただ、あの方は20年以上も行方不明の御子息の安否だけを捜す頑なさもあります」
20年。それ程長い間、安否が分からなければ人は諦めるだろう。
「20年か、では公爵は政治に口出ししたり、自分の都合の良い者を政務に送り込んだりする様な人物か?」
「まさか!あの方は政治手腕は長けておりますが、国の安定を第一とする忠信溢れる方です」
ベリルのはっきりとした否定に、ウィリアムが頷いた。
「ならばベリル先生、まずは公爵に帰還の手紙を書いてくれ。文面の何処かに、シルヴィーの新しい魔法陣が盗まれた物を探し出してくれた、と入れて」
ウィリアムからの突然の申し出に、ベリルは困惑したが、ゆっくりと頷いた。
106
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる