68 / 114
気が付いたほのかな思い。
しおりを挟む
いくつかの疑問の答えを求め、シルヴィーはダドリーの元に向かった。
「お帰りなさいませ、今日はシルヴィー様のお好きなチョレートケーキをご用意しました」
目当ての人物は特別棟の厨房に居た。
機嫌がいいのか悪いのか判らないが、ダドリーがお茶を用意していた。
お茶菓子だけで無く、シルヴィーが口にする物は、いつも厳選された最高の物がいつも用意されている。
「ダドリー、あのお花畑さんには……」
珍しくシルヴィーが言葉を濁す。
「あの阿婆擦れがどうかしましたか?」
一瞬にして、ダドリーの目が鋭くなる。
まだ何かに戸惑っているが、キュッと唇を噛んでから、真っ直ぐダドリーを見たシルヴィーの目が少し泣きそうだ。
「ダドリー、貴方はあのお花畑さんの事、好きなの?」
「えっ?」
どうしたらそんな結論が出てんだ?と、ダドリーは思ったが、シルヴィーの話を聞く方が先だ、と言わんばかりに作業の手を止め姿勢を正し、真っ直ぐシルヴィーを見詰めた。
「お花畑さんには、手作りのクッキーを渡しているんでしょ」
例え、爆発的に太る物でも、手作りの物を渡すなんて、好意がなければしない、とシルヴィーは思っていた。
それよりも、容姿が残念になれば狙う者が居なくなり、ダドリーの手を取る様になる、とさえ思っている。
ダドリーが、大きなため息でも吐きそうな顔でシルヴィーを見詰めた。
「……まず、誤解を招く行為をした事をお詫びします。あれは、昔の仲間に作らせた物で、私が作った物ではありません」
ダドリーのきっぱりした否定に、泣きそうだった目に少し光が戻ってきた。
「手作りじゃないのね」
「はい。私が手作りするは、シルヴィー様が口にする物だけです。むしろ、私が作った物以外、シルヴィー様に召し上がって欲しくありません」
ダドリーの要求に、光が戻ってきた目が、次第にオロオロし始める。
「えっと……、ダドリーはお花畑さんには何も作ってないの?」
「水一杯すら、与えた事などありません」
「もしかして……お茶の時のお菓子って……」
「シルヴィー様が召し上がる物は、全て私が作っております」
段々、シルヴィーの顔が赤くなって行く。
「ごめんなさい。凄く誤解していたみたい。いつも用意してくれるお菓子が、綺麗で美味しかったから、てっきり何処かで売っている物だと思ってたの」
「いえ、私も今迄、手作りだとお伝えしておりませんでしたので」
真っ赤になったシルヴィーは、何処か、恋する少女の様な、ふわふわした空気を醸し出している。
「では、誤解が解けた様なので、お茶をご用意しますね」
「……お願いします」
照れ臭いのか、バツが悪いのか、フラフラと厨房を後にする挙動不審なシルヴィーに笑みを向け、洗練された手付きでお茶を入れ始めた。
「お帰りなさいませ、今日はシルヴィー様のお好きなチョレートケーキをご用意しました」
目当ての人物は特別棟の厨房に居た。
機嫌がいいのか悪いのか判らないが、ダドリーがお茶を用意していた。
お茶菓子だけで無く、シルヴィーが口にする物は、いつも厳選された最高の物がいつも用意されている。
「ダドリー、あのお花畑さんには……」
珍しくシルヴィーが言葉を濁す。
「あの阿婆擦れがどうかしましたか?」
一瞬にして、ダドリーの目が鋭くなる。
まだ何かに戸惑っているが、キュッと唇を噛んでから、真っ直ぐダドリーを見たシルヴィーの目が少し泣きそうだ。
「ダドリー、貴方はあのお花畑さんの事、好きなの?」
「えっ?」
どうしたらそんな結論が出てんだ?と、ダドリーは思ったが、シルヴィーの話を聞く方が先だ、と言わんばかりに作業の手を止め姿勢を正し、真っ直ぐシルヴィーを見詰めた。
「お花畑さんには、手作りのクッキーを渡しているんでしょ」
例え、爆発的に太る物でも、手作りの物を渡すなんて、好意がなければしない、とシルヴィーは思っていた。
それよりも、容姿が残念になれば狙う者が居なくなり、ダドリーの手を取る様になる、とさえ思っている。
ダドリーが、大きなため息でも吐きそうな顔でシルヴィーを見詰めた。
「……まず、誤解を招く行為をした事をお詫びします。あれは、昔の仲間に作らせた物で、私が作った物ではありません」
ダドリーのきっぱりした否定に、泣きそうだった目に少し光が戻ってきた。
「手作りじゃないのね」
「はい。私が手作りするは、シルヴィー様が口にする物だけです。むしろ、私が作った物以外、シルヴィー様に召し上がって欲しくありません」
ダドリーの要求に、光が戻ってきた目が、次第にオロオロし始める。
「えっと……、ダドリーはお花畑さんには何も作ってないの?」
「水一杯すら、与えた事などありません」
「もしかして……お茶の時のお菓子って……」
「シルヴィー様が召し上がる物は、全て私が作っております」
段々、シルヴィーの顔が赤くなって行く。
「ごめんなさい。凄く誤解していたみたい。いつも用意してくれるお菓子が、綺麗で美味しかったから、てっきり何処かで売っている物だと思ってたの」
「いえ、私も今迄、手作りだとお伝えしておりませんでしたので」
真っ赤になったシルヴィーは、何処か、恋する少女の様な、ふわふわした空気を醸し出している。
「では、誤解が解けた様なので、お茶をご用意しますね」
「……お願いします」
照れ臭いのか、バツが悪いのか、フラフラと厨房を後にする挙動不審なシルヴィーに笑みを向け、洗練された手付きでお茶を入れ始めた。
109
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる