91 / 114
ユーノ視点 動き出した陰謀。
しおりを挟む
ギルドにある自分の部屋でユーノは、先日届いた依頼の手紙をカインに渡し、自分の前に立つ男達に頷いた。
「依頼は受けよう」
ユーノの返事に満足した男達は、一度頷きそのままギルドの本部を出て行く。
「カイン、勝算は?」
「私達に」
「では、手筈は任せて」
「勿論だよ、奥様」
「旦那様も宜しくね」
微笑み合う2人は、ゆっくりと扉の方に視線を向けた。
「ハザック、クリスタル子爵の下に行きなさい」
ユーノがギルドマスターとしての顔で、ハザックに指令を出す。
「了解。阿呆はどっちです?」
勇者であるハザックもいつもの厳ついが、気さくな表情では無く、何処か冷酷な笑い方をした。
「両方だ。無駄な事だ」
カイン達は依頼主のことも、ターゲットの事も話していないのに、誰が誰に対して、何を望んでいるのかハザックは理解している。
「本当に無駄な事だ」
カインが冷ややかに笑う。
理想や正義感は必要だが、綺麗事や純粋さだけでは国は滅びる。
ユーノやカインも、身を持って知っている。
だから余計に、確固たる信念を持ち、黒い事を躊躇いもせず行いながら欠片も曇らない、煌めく宝石の様な彼女に心酔しているのだ。
「そういう搦手で来るとは思わなかった」
ウィリアムがにやり、と意味深に笑う。
「情報は正確性と鮮度が命。時には危ない橋を渡る事も必要です」
試験勉強をしているシルヴィーが、教科書に目を落としながら答え、いくつかの魔法陣を描き上げた。
冬の試験まで2週間を切り、学生達は試験勉強に精を出している。
あの訓練場で泣き崩れた生徒達は図書館で、参考書の山に挟まれながら勉強している姿が当たり前になった。
「変われば変わるもんだな」
「今回は良いきっかけになった様です」
ついさっきまで、質問攻めにしてきた彼らの背中をシルヴィーは楽しげに見ている。
「それで、彼は許可したのか?」
「やっと。少々無茶しますから」
この計画を実行する為、シルヴィーはダドリーを必死に説得していた。
危険な事は十分承知しているが、勝算はある。
それをダドリーも理解はしてくれた。
「イザベルには伝えないで下さいね。きっと心配しますから」
教科書を閉じ、静かに笑うと
「すまん。もうバレた」
申し訳なさそうな顔のウィリアムが、頭を下げていた。
「脇が甘い」
「ちげーよ、ベルが鋭くなったんだよ。今までなら、絶対気が付かなかった筈だ」
「当然ですわ。王太子の婚約者が凡庸では、国が乱れます」
イザベルの登場にウィリアムとシルヴィーは顔を見合わせた。
天使だったイザベルが、驚くほど強かになっている。
「心が千切れてしまいそうな程心配ですが、新年の舞踏会には必ず出席してね」
本当は止めて、と言いたいのだろうが、イザベルも、この騒ぎを収束させなければ国に未来は無い、と言う事を理解している。
イザベルの気持ちを受け止め、シルヴィーは笑顔で頷いた。
「後は……パトリック様ですね」
「今回はあいつの役割が重要だからな。まぁ、大丈夫だと思うよ」
「そちらのフォローはお願いします」
寒さが厳しくなってきたが、笑い合う彼らの周りは、何故か暖かだ。
「依頼は受けよう」
ユーノの返事に満足した男達は、一度頷きそのままギルドの本部を出て行く。
「カイン、勝算は?」
「私達に」
「では、手筈は任せて」
「勿論だよ、奥様」
「旦那様も宜しくね」
微笑み合う2人は、ゆっくりと扉の方に視線を向けた。
「ハザック、クリスタル子爵の下に行きなさい」
ユーノがギルドマスターとしての顔で、ハザックに指令を出す。
「了解。阿呆はどっちです?」
勇者であるハザックもいつもの厳ついが、気さくな表情では無く、何処か冷酷な笑い方をした。
「両方だ。無駄な事だ」
カイン達は依頼主のことも、ターゲットの事も話していないのに、誰が誰に対して、何を望んでいるのかハザックは理解している。
「本当に無駄な事だ」
カインが冷ややかに笑う。
理想や正義感は必要だが、綺麗事や純粋さだけでは国は滅びる。
ユーノやカインも、身を持って知っている。
だから余計に、確固たる信念を持ち、黒い事を躊躇いもせず行いながら欠片も曇らない、煌めく宝石の様な彼女に心酔しているのだ。
「そういう搦手で来るとは思わなかった」
ウィリアムがにやり、と意味深に笑う。
「情報は正確性と鮮度が命。時には危ない橋を渡る事も必要です」
試験勉強をしているシルヴィーが、教科書に目を落としながら答え、いくつかの魔法陣を描き上げた。
冬の試験まで2週間を切り、学生達は試験勉強に精を出している。
あの訓練場で泣き崩れた生徒達は図書館で、参考書の山に挟まれながら勉強している姿が当たり前になった。
「変われば変わるもんだな」
「今回は良いきっかけになった様です」
ついさっきまで、質問攻めにしてきた彼らの背中をシルヴィーは楽しげに見ている。
「それで、彼は許可したのか?」
「やっと。少々無茶しますから」
この計画を実行する為、シルヴィーはダドリーを必死に説得していた。
危険な事は十分承知しているが、勝算はある。
それをダドリーも理解はしてくれた。
「イザベルには伝えないで下さいね。きっと心配しますから」
教科書を閉じ、静かに笑うと
「すまん。もうバレた」
申し訳なさそうな顔のウィリアムが、頭を下げていた。
「脇が甘い」
「ちげーよ、ベルが鋭くなったんだよ。今までなら、絶対気が付かなかった筈だ」
「当然ですわ。王太子の婚約者が凡庸では、国が乱れます」
イザベルの登場にウィリアムとシルヴィーは顔を見合わせた。
天使だったイザベルが、驚くほど強かになっている。
「心が千切れてしまいそうな程心配ですが、新年の舞踏会には必ず出席してね」
本当は止めて、と言いたいのだろうが、イザベルも、この騒ぎを収束させなければ国に未来は無い、と言う事を理解している。
イザベルの気持ちを受け止め、シルヴィーは笑顔で頷いた。
「後は……パトリック様ですね」
「今回はあいつの役割が重要だからな。まぁ、大丈夫だと思うよ」
「そちらのフォローはお願いします」
寒さが厳しくなってきたが、笑い合う彼らの周りは、何故か暖かだ。
68
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる