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23. イヴの悲劇
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[読者の皆様へ]
いつもご愛読頂き、誠にありがとうございます。実は、前回の投稿が少し誤作動を起こしてしまい、投稿したのですがかなり前になってしまいました。今回の話を読んでいて、「なんかつながらないなぁ」と思った皆様は、一話前に戻ってみてください。お手数おかけしますが、よろしくお願いします。
ーーーーふぃらむじか
カインside
後ろに並んでいる客などには気づかれていないようだ。大事になる前に、どこかに移動させるべきだろうか?
死産だけは免れなければ、と頭をフルで回転させる。
「私、何が、」
「喋らないで。ゆっくりと呼吸して。できる?」
手を離せば崩れてしまいそうなリリノアを、揺すらないように片腕に寄せる。空いた手でポケットからハンカチを取り出して、ワンピースの裾から手を突っ込んで彼女の内股を撫でる。拭き取ったハンカチを見ると、白の布は透明の液体で濡れていた。しかし、乾いたところから黄色くなっていき、分からない程度ではあるが微かに生臭さがある。
「…破水だ」
これはまずい事態だ。
「は、すい…?」
ノアが浮ついた声で訪ねてくる。しかし、俺の勘違いかもしれない。この場に医者はいないし、目で見て確認したわけでもない。早とちりや思い違いの可能性もある。
「大丈夫、心配しなくていいよ。」
そんな訳もないのだが、取り敢えずそういうしかない。周りを見渡すと、レジ打ちをしていたウェイターがこちらの様子に気づいてくれたらしく、お盆を持ったままこちらにやってきた。
「お客様、どうかなさいましたか?」
「えぇ、彼女が妊娠しているのですが、破水した可能性がありまして」
「なっ…!急いで事務室にいらしてください、すぐに救急車をッ!」
「いや、救急車は結構です。でも、休める場所を頂けないでしょうか?少し体質が特殊なもので、かかりつけの医師でないと手がつけられないものです。寝かせてやれる場所はあるでしょうか」
「分かりました。取り敢えずこちらへ」
声をかけようと腕の中のリリノアを見ると、既に眠ったように意識がなかった。あまりお腹を屈めさせないように慎重にノアを持ち上げる。赤子が入っているというのに軽いものだ。
そのままウェイターの案内に従って、店の事務室に足を踏み入る。中には店長らしき年配の女性が書類仕事をしていた様だが、俺達が入ってくるとすぐに手を止めた。
「ライナ店長、急病人です。少し休ませて欲しいとのことでお連れしました。」
「まぁまぁ、どうなさいましたの?」
ライナと呼ばれたその女性がこちらにやって来て、入口隣にあったソファーの荷物をどかしてくれた。
「お若い妊婦さんですね、大丈夫なのですか?」
そう声をかけながら、寝かせたリリノアに毛布をかけてくれる。
「えぇ、僅かではあるのですが、破水のような症状が見られたものですから。意識がないのは、不安から気絶してしまっただけなのでご安心ください。お手数おかけして申し訳ありません。」
休ませてくれるだけでいい、と伝えると、心配そうな表情のままライナはデスクに戻った。
俺はそれを横目に見つつ、ノアの脚をソファに上げて立てる。鞄からタオルハンカチを取り出して、彼女の尻の辺りの下に広げる。それから、救急セットのポーチを取り出して、薄いゴム手袋を両手に着けてもう1度ノアの内股の辺りをガーゼで探った。
(確か姉さんは、出血があるかどうかをまず確認しろと言った…それから、匂い。今回の場合は出血はないし、生臭さもそれ程ではない。すぐに気が付いたし、あまり動かしていないから、この調子なら…)
「カイン!リリノアちゃんは!?」
エキドナが薄らと汗さえ浮かべて飛び込んできた。案内してきたのであろう、さっきのウェイターも心配そうに見ている。
「気絶しているけど呼吸は安定してるし、出てる液体も羊水だけで血はでていないよ。つかぬ事を聞くけれど、エキドナ。破水の経験は?」
「無いわね。」
エキドナは俺の隣へ来てリリノアをのぞき込むように屈んだ。
「でも確かに、状態は悪くなさそうね。カイン、聞いて。」
彼女は俺の両肩に手を置いて、自分の方を向くよう促す。まるで息子に語りかける母親のような面持ちをしていた。慣れない感覚に、俺は動揺を隠しきれずに息を呑んだ。
「ラミアは逃がしてしまったけれど、警察には連絡したわ。それから、緊急で飛行機を出してもらうことにしたの。私の兄のツテで通せたわ。だから、今すぐ空港に行くわ。私が家に戻って荷物をとってくるから、その間にリリノアを飛行機に乗せるの。もう準備しているはずだから。まず、清潔なガーゼで産道を塞ぎなさい。羊水が出てしまった今、どんな菌からも胎児を守れずに、感染症にかかる恐れがあるの。それと、暖かくしてあげて。いい?」
「…はい」
いつもの穏やかな彼女とは打って変わって、真剣そのもののエキドナに、俺は呆気にとられるばかりだった。
話は聞いていた。俺がこんなことを思っている間にも、エキドナはライナに頭を下げて部屋を出ていった。俺は言われた通りに行動するだけだった。
●●●
××××side
「アルロ!ちょっとどうなっているのよ!何でラミアなんか野放しにしてるの!?」
八つ当たりのように、従者アルロの頬を叩く。彼女は赤い頬を抑えながらフラフラと立ち上がった。
「いいえ、ルリア様…っ、ラミアなんて存在を、私は聞かされておりません…、何かあったのですか?」
「何かじゃないわ!リリノアの…現当主の胎児が流産しかかっているの…ラミアは子取りよ。全く…せっかくあの頑固なカインがトラウマ押しのけて作ってくれた子なのに…!」
思わず下唇を噛み締める。こんな荒れている姿、リリノアにはとてもじゃないけど見せられないわね。あくまで、穏やかな母親的存在でなければならない私が…
「トラウマ、ですか?」
「あぁいえ、何でもないのよ。そう、気にしなくていいわ」
思わず口走ってしまった。別にアルロに知られてまずいことではないが、今は過去の思い出話に浸っている場合ではない。
「出来れば気絶しているリリノアに入り込んで落ち着かせたいけど、疲れさせるワケにはいかないわね。アルロ、貴女はラミアを探して目を外してらっしゃい。多少の足止めにはなるわ。あの蛇女のことだから、危機的状況で踏みとどまっているリリノアに、トドメを指しに来るはずだもの。そうさせないために、私の代わりに行ってちょうだい。」
「えっ、はい…でも、」
「いいから行きなさい!私の従者でしょ!?行けばわかるわよ!!」
無理やり、彼女の背中を押し出す。
私達がいるのは、リリノアたちとは少しずれた次元の世界。そっくりだけど、少し違うパラレルの世界だ。天気は憎たらしいくらいに穏やかに晴れて、白を基調としたガーデンテラスを暖かい日差しが包み込み、美しい彫刻をされた白石の柱に絡み付いた薔薇の蔦を照らしていた。
私がテラスからアルロを押し出すと、彼女の体は光に包まれた。周りは鏡のような水面の湖。日の光を反射した光が、粒となって従者の体を包んで…
「お願いね、アルロ」
「かしこまりました、ルリア様。」
手のかかる主人だ、とでも言いたげな苦笑いを残して、風に乗って姿を消した。
●●●
カインside
俺はリリノアとともに空港に来ていた。夜からの便しか出ないためか、客は片手で数えられる程度しかいない。待合室の椅子にノアを寝かせて、俺は国際電話を使って姉さんに電話をかけていた。
「だから、もう少しで帰国できることになった。あと15分以内には出発出来ると思う。」
『分かった、できる限りの準備をして、こっちの空港で待ってるわね。』
「うぅっ…」
「ノア?」
後ろで、小さなうめき声が漏れた。見ると、ノアが顔を少し紅潮させて、涙目になりながら空を見つめていた。
『カイン、どうしたの?』
「ノアが目を覚ましたみたいだ。」
俺は受話器を耳に当てたまま、線を伸ばせるだけ伸ばしてノアの隣に立った。
「目が覚めたんだね。少し頬が赤いけど、熱でもあるかい?」
俺が彼女の額に手を伸ばすと、その手が触れる前に、ノアはゆっくりと首を振った。
「違うの…ただ、痛い」
「…痛い?」
『痛い?』
「うん、お腹が、裂けそうだよ…」
そこまで言うと、ノアは苦痛に耐えるようにぎゅっと目を閉じた。
「姉さん、まずい」
『どうした、痛いって…』
息とともに、抑えきれないように声を漏らすノア。少しずつ息が荒くなって、まるで高熱にうなされる子供のようだ。しかし、彼女をそうさせているのは熱ではなく腹部の痛み。
「…間違いないよ、」
「おまたせ、カイン。これで全部かしら?…えっ」
戻ってきたエキドナが、荷物を確認するように促してくるが、彼女もリリノアの様子に気づいたらしい。
「カイン、まさか…」
「あぁ、予定よりも1週間早いけど…」
俺は受話器を握り直し、電話の向こうの姉さんにも聞こえるように言った。
「陣痛が、始まっちゃったよ…」
一同が息を呑む。
そう、最悪の事態を誰もが想像した。難産が予想される上に、早産まで重なる恐れを。
ラミアはリビアの女王であった。その美しさは誰もが認めるものであり、それが幸か不幸かゼウスの目に止まった。彼女はゼウスとの間に子供を設けた。しかし、その結果としてゼウスの妻ヘラの怒りを買い、子供を全て殺され、自身も異形の姿へと変えられてしまった。
しかし、ヘラの怒りはそれでも収まらず、子供を失った哀しみから逃れることの出来ないように、眠れない呪いまでかけられた。それを哀れに思ったゼウスは、眠れない代わりに目を取り外せるようにしてやったそうだ。
だから彼女は、目が付いているときだけこうどうする。だが、子供を失った悲しみはいつまでも癒えることがない。次第にその心は邪な色をはらみ、ラミアは子供のいる母親を羨ましがり、他人の子供を食らうようになってしまったそうだ…。
いつもご愛読頂き、誠にありがとうございます。実は、前回の投稿が少し誤作動を起こしてしまい、投稿したのですがかなり前になってしまいました。今回の話を読んでいて、「なんかつながらないなぁ」と思った皆様は、一話前に戻ってみてください。お手数おかけしますが、よろしくお願いします。
ーーーーふぃらむじか
カインside
後ろに並んでいる客などには気づかれていないようだ。大事になる前に、どこかに移動させるべきだろうか?
死産だけは免れなければ、と頭をフルで回転させる。
「私、何が、」
「喋らないで。ゆっくりと呼吸して。できる?」
手を離せば崩れてしまいそうなリリノアを、揺すらないように片腕に寄せる。空いた手でポケットからハンカチを取り出して、ワンピースの裾から手を突っ込んで彼女の内股を撫でる。拭き取ったハンカチを見ると、白の布は透明の液体で濡れていた。しかし、乾いたところから黄色くなっていき、分からない程度ではあるが微かに生臭さがある。
「…破水だ」
これはまずい事態だ。
「は、すい…?」
ノアが浮ついた声で訪ねてくる。しかし、俺の勘違いかもしれない。この場に医者はいないし、目で見て確認したわけでもない。早とちりや思い違いの可能性もある。
「大丈夫、心配しなくていいよ。」
そんな訳もないのだが、取り敢えずそういうしかない。周りを見渡すと、レジ打ちをしていたウェイターがこちらの様子に気づいてくれたらしく、お盆を持ったままこちらにやってきた。
「お客様、どうかなさいましたか?」
「えぇ、彼女が妊娠しているのですが、破水した可能性がありまして」
「なっ…!急いで事務室にいらしてください、すぐに救急車をッ!」
「いや、救急車は結構です。でも、休める場所を頂けないでしょうか?少し体質が特殊なもので、かかりつけの医師でないと手がつけられないものです。寝かせてやれる場所はあるでしょうか」
「分かりました。取り敢えずこちらへ」
声をかけようと腕の中のリリノアを見ると、既に眠ったように意識がなかった。あまりお腹を屈めさせないように慎重にノアを持ち上げる。赤子が入っているというのに軽いものだ。
そのままウェイターの案内に従って、店の事務室に足を踏み入る。中には店長らしき年配の女性が書類仕事をしていた様だが、俺達が入ってくるとすぐに手を止めた。
「ライナ店長、急病人です。少し休ませて欲しいとのことでお連れしました。」
「まぁまぁ、どうなさいましたの?」
ライナと呼ばれたその女性がこちらにやって来て、入口隣にあったソファーの荷物をどかしてくれた。
「お若い妊婦さんですね、大丈夫なのですか?」
そう声をかけながら、寝かせたリリノアに毛布をかけてくれる。
「えぇ、僅かではあるのですが、破水のような症状が見られたものですから。意識がないのは、不安から気絶してしまっただけなのでご安心ください。お手数おかけして申し訳ありません。」
休ませてくれるだけでいい、と伝えると、心配そうな表情のままライナはデスクに戻った。
俺はそれを横目に見つつ、ノアの脚をソファに上げて立てる。鞄からタオルハンカチを取り出して、彼女の尻の辺りの下に広げる。それから、救急セットのポーチを取り出して、薄いゴム手袋を両手に着けてもう1度ノアの内股の辺りをガーゼで探った。
(確か姉さんは、出血があるかどうかをまず確認しろと言った…それから、匂い。今回の場合は出血はないし、生臭さもそれ程ではない。すぐに気が付いたし、あまり動かしていないから、この調子なら…)
「カイン!リリノアちゃんは!?」
エキドナが薄らと汗さえ浮かべて飛び込んできた。案内してきたのであろう、さっきのウェイターも心配そうに見ている。
「気絶しているけど呼吸は安定してるし、出てる液体も羊水だけで血はでていないよ。つかぬ事を聞くけれど、エキドナ。破水の経験は?」
「無いわね。」
エキドナは俺の隣へ来てリリノアをのぞき込むように屈んだ。
「でも確かに、状態は悪くなさそうね。カイン、聞いて。」
彼女は俺の両肩に手を置いて、自分の方を向くよう促す。まるで息子に語りかける母親のような面持ちをしていた。慣れない感覚に、俺は動揺を隠しきれずに息を呑んだ。
「ラミアは逃がしてしまったけれど、警察には連絡したわ。それから、緊急で飛行機を出してもらうことにしたの。私の兄のツテで通せたわ。だから、今すぐ空港に行くわ。私が家に戻って荷物をとってくるから、その間にリリノアを飛行機に乗せるの。もう準備しているはずだから。まず、清潔なガーゼで産道を塞ぎなさい。羊水が出てしまった今、どんな菌からも胎児を守れずに、感染症にかかる恐れがあるの。それと、暖かくしてあげて。いい?」
「…はい」
いつもの穏やかな彼女とは打って変わって、真剣そのもののエキドナに、俺は呆気にとられるばかりだった。
話は聞いていた。俺がこんなことを思っている間にも、エキドナはライナに頭を下げて部屋を出ていった。俺は言われた通りに行動するだけだった。
●●●
××××side
「アルロ!ちょっとどうなっているのよ!何でラミアなんか野放しにしてるの!?」
八つ当たりのように、従者アルロの頬を叩く。彼女は赤い頬を抑えながらフラフラと立ち上がった。
「いいえ、ルリア様…っ、ラミアなんて存在を、私は聞かされておりません…、何かあったのですか?」
「何かじゃないわ!リリノアの…現当主の胎児が流産しかかっているの…ラミアは子取りよ。全く…せっかくあの頑固なカインがトラウマ押しのけて作ってくれた子なのに…!」
思わず下唇を噛み締める。こんな荒れている姿、リリノアにはとてもじゃないけど見せられないわね。あくまで、穏やかな母親的存在でなければならない私が…
「トラウマ、ですか?」
「あぁいえ、何でもないのよ。そう、気にしなくていいわ」
思わず口走ってしまった。別にアルロに知られてまずいことではないが、今は過去の思い出話に浸っている場合ではない。
「出来れば気絶しているリリノアに入り込んで落ち着かせたいけど、疲れさせるワケにはいかないわね。アルロ、貴女はラミアを探して目を外してらっしゃい。多少の足止めにはなるわ。あの蛇女のことだから、危機的状況で踏みとどまっているリリノアに、トドメを指しに来るはずだもの。そうさせないために、私の代わりに行ってちょうだい。」
「えっ、はい…でも、」
「いいから行きなさい!私の従者でしょ!?行けばわかるわよ!!」
無理やり、彼女の背中を押し出す。
私達がいるのは、リリノアたちとは少しずれた次元の世界。そっくりだけど、少し違うパラレルの世界だ。天気は憎たらしいくらいに穏やかに晴れて、白を基調としたガーデンテラスを暖かい日差しが包み込み、美しい彫刻をされた白石の柱に絡み付いた薔薇の蔦を照らしていた。
私がテラスからアルロを押し出すと、彼女の体は光に包まれた。周りは鏡のような水面の湖。日の光を反射した光が、粒となって従者の体を包んで…
「お願いね、アルロ」
「かしこまりました、ルリア様。」
手のかかる主人だ、とでも言いたげな苦笑いを残して、風に乗って姿を消した。
●●●
カインside
俺はリリノアとともに空港に来ていた。夜からの便しか出ないためか、客は片手で数えられる程度しかいない。待合室の椅子にノアを寝かせて、俺は国際電話を使って姉さんに電話をかけていた。
「だから、もう少しで帰国できることになった。あと15分以内には出発出来ると思う。」
『分かった、できる限りの準備をして、こっちの空港で待ってるわね。』
「うぅっ…」
「ノア?」
後ろで、小さなうめき声が漏れた。見ると、ノアが顔を少し紅潮させて、涙目になりながら空を見つめていた。
『カイン、どうしたの?』
「ノアが目を覚ましたみたいだ。」
俺は受話器を耳に当てたまま、線を伸ばせるだけ伸ばしてノアの隣に立った。
「目が覚めたんだね。少し頬が赤いけど、熱でもあるかい?」
俺が彼女の額に手を伸ばすと、その手が触れる前に、ノアはゆっくりと首を振った。
「違うの…ただ、痛い」
「…痛い?」
『痛い?』
「うん、お腹が、裂けそうだよ…」
そこまで言うと、ノアは苦痛に耐えるようにぎゅっと目を閉じた。
「姉さん、まずい」
『どうした、痛いって…』
息とともに、抑えきれないように声を漏らすノア。少しずつ息が荒くなって、まるで高熱にうなされる子供のようだ。しかし、彼女をそうさせているのは熱ではなく腹部の痛み。
「…間違いないよ、」
「おまたせ、カイン。これで全部かしら?…えっ」
戻ってきたエキドナが、荷物を確認するように促してくるが、彼女もリリノアの様子に気づいたらしい。
「カイン、まさか…」
「あぁ、予定よりも1週間早いけど…」
俺は受話器を握り直し、電話の向こうの姉さんにも聞こえるように言った。
「陣痛が、始まっちゃったよ…」
一同が息を呑む。
そう、最悪の事態を誰もが想像した。難産が予想される上に、早産まで重なる恐れを。
ラミアはリビアの女王であった。その美しさは誰もが認めるものであり、それが幸か不幸かゼウスの目に止まった。彼女はゼウスとの間に子供を設けた。しかし、その結果としてゼウスの妻ヘラの怒りを買い、子供を全て殺され、自身も異形の姿へと変えられてしまった。
しかし、ヘラの怒りはそれでも収まらず、子供を失った哀しみから逃れることの出来ないように、眠れない呪いまでかけられた。それを哀れに思ったゼウスは、眠れない代わりに目を取り外せるようにしてやったそうだ。
だから彼女は、目が付いているときだけこうどうする。だが、子供を失った悲しみはいつまでも癒えることがない。次第にその心は邪な色をはらみ、ラミアは子供のいる母親を羨ましがり、他人の子供を食らうようになってしまったそうだ…。
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