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32. 糾弾と呼び声
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カインside
「特に異常はないね。骨盤の歪みも改正されているし、あの超難産の後遺症みたいなものは無さそう。」
アネモネが耳に当てていた聴診器をそっと外す。検査過程はすべて終了し、体の異常は見つからなかったという。
「でも…」
「うん?」
アンが心配そうな顔をして、診察台に横たわるノアの胸のあたりに手を乗せた。
「体重が減っているの。この減り方は病的なんじゃないかしら?」
「どこまで減ったんだ?三日前に家で測った時には確か、41kgだっはずだが?」
ノアの今の身長は150cm。タダでさえ痩せていて、本人が満腹と感じるまでに食べさせるようにしているというのに、また痩せてしまったというのか?
「35kgしかないぞ。これは過去最低レベルなんじゃないのか?適正体重は48kgだ。それでちゃんとご飯食べてるなら、原因は他にあるとしか考えられない。」
僅かに不眠症を訴えたノアは今、睡眠薬を投与されて眠りについていた。そんなノアの隣に座る姉は片手で小さく手招きした。呼ばれるままに近くに行くと、耳打ちするようにアンが囁いた。
「お前は恋人であるとともにノアの管理人なんだ。ちゃんとこの子を見ているかい?触れているかい?少しやりすぎだと思うくらいにちゃんと触ってあげないと、遠慮と気遣いばかりじゃいくらでも見落とすよ?」
そう言いながら、アンは強引に俺の右手首を掴み、そのまま検査着越しに俺の手をノアのろっ骨になぞらせた。その感触はゾッとするほどに骨が出ていて、不謹慎ながら人体模型の骨格を思わせた。
「…これは見た目じゃわからないんだよ。なぞると骨が浮いてくるんだ。最後にこの子の身体に直接触れたのはいつだい?」
「2、3週間前くらい…かな。」
「じゃあその間、明るいところでちゃんと見てやる機会はあったかい?」
「…いや、なかった」
「…おそらく、ノアに自覚があるかどうかは知らないが…この子には自傷癖があるみたいだ。」
「なんだって?」
自分の耳を疑った。そんな様子、気配さえ感じさせなかったのに、いつの間に自傷に走っていたというのか。
「異端児の傷は、ある一線を越えなければ脅威の回復力をもって完治する。その速さは僅か数時間足らずだよ。でも、その一線をノアは知らないみたいだ。」
アンがノアにかけてあったタオルをそっとめくり、脚を出した。そのまま検査着の裾をまくり上げて、太股あたりまで出したところで右脚を軽く持ち上げた。
白く、細く、幼く頼りない脚。いつも目にしているはずだったのに、その深部、右脚の付け根に近い内腿には、ざっくりと刃物で刺したような跡があった。
「っこれは!?」
「おそらくは鋏だ。他にも治りかけているが消えきってない傷が数箇所ある。…超えてはいけない一線ってのはわかるね?簡単に言えば、骨に到達していない傷しか直せない。この傷はおよそ二日前のもの。まぁどっちにしろ人間の体にしちゃあ治るのは早いよ。でも、この傷は異端児特有の治癒力が作用していない…つまり、骨に届いている傷なんだよ」
「…俺に隠れて、自傷に走っていたというのか…?」
「…リリノアは隠し事が苦手なんだよ?」
「?うん。」
「そんな彼女が、毎日一緒にいるお前に気付かれないように何かことを成すとしたら…?」
まるで子供に言い聞かせるような姉の口調。こいつはいつだってこうやって、俺に考えることを教えた。空っぽだった人形の俺を、ゼンマイをあえて壊して糸さえ切り捨てて、無理に自立させようと俺の脚を抑えたのは、いつだってこの豪快で躊躇いも容赦もないこの女だった。そんな大切な姉が、いつもの如く俺に答えを求めて、もう分かったなとでも言いたげにこちらを見つめている。…分からないはずがないじゃないか、こんなもの。
「俺が、言えなくさせていたのか」
アネモネは何も言わない。微動打にせずに、白衣の中で綺麗に足を組んでいた。堪らなく怖くて、ぎゅと目を閉じて俯く。小さい頃から情けない俺は、何も変われていなかった。リリノアという守るべき存在を持って、守られっぱなしの自分が少しでも変わったと信じていた。…が、決してそうではなかった。いや寧ろ、地下室で陽の光も知らずに買われていた脆弱な存在が、たったの数年そこらで変われるはずがなかった。リリノアの前でどんなに大人ぶっても、そんなものは子供のままごとと変わらない。どんな綺麗事を並べたって、思慮深いノアの耳には戯言としてしか届いていなかったかもしれない。
考え始めれば、恐怖の闇は深くなる一方だった。もっと彼女を自由にしてやるべきだったのか、あるいは何にも興味を持たぬように俺が世界を作るべきだったのか…なんて、彼女が望みもしないであろうと分かりきっていることを繰り返し、そしてまた綺麗事の渦に飲まれるのだと絶望した。
「…カイン?」
「!?」
ふわりとした感触に触れた刹那、温かいものに包まれる。耳元で聞こえる鼓動は、俺を何よりも安心させる子守唄で、それは今でも変わらないようだった。
姉が座っている俺の頭を自らの胸にそっと抱いていた。そして、今では俺のより小さくなった、それでも頼もしく優しい手が、後頭部を、髪をそっと撫でている。
「えっ…と、姉さん…?」
「馬鹿だねぇ、お前は。本っ当に馬鹿だ!救いようがないねぇ」
「なっ、」
「分からないことがあるんだろう?」
「えっ?」
「なんでお前には『誰かに聞く』っていう手段が無いんだい?それだけでお前、人生の半分は損してるわ」
「そんなに!?」
「おう」
腕組みをして、どうだと言わんばかりに胸を張り、上から目線で俺を見下ろす姉。その姿は最早、絶対に逆らえない女王様のようで。
「…姉さん」
「うん?」
本当に、俺は馬鹿だ。単純なことだったのに、気づけないなんて。焦っていたのは俺の方だった。いつまでも幼い容姿に呑まれて子供扱いしていたノアの方がよっぽど大人だったと、これまでも何度も思った事実を、改めて本当の意味で実感する。
「…俺は、どうすべきだった?」
そう言うと、待っていましたと言わんばかりにアンがニィっと不敵に笑う。
「これだから、うちの弟はどんなに大きくなっても可愛がりたくなるんだな~。まぁ、言っといてなんだけど、私が正しい答えを出せるとは限らない。だが、1つ助言しておこう。」
ぽんぽんと軽く頭を撫でられる。それはいつもノアに俺がしているのとよく似ていた。
「喧嘩してもいいんだ、言いたいことを言いたい時に、言いたいように言え。単純なことだけど、現代の若者には難しいだろうな。それに、優しいやつほど難易度が高い。お前はその類だよ。これは贔屓目じゃあない。」
「うん…いつも、そうしようって思うんだよ。思うところまでは行くんだけど…俺は、愚かだ。どう使用もなく愚かなんだ。自分の身体が、脳が、いうことを聞かないんだよ…まるで手放し運転の自転車に急カーブを求めているかのような感覚で、限りなく不安になって、気を抜けばバランスを崩し兼ねない気がしてならないんだ…!こんな臆病じゃいけないって分かってるけど、それでも過去の記憶は、トラウマは拭いされない…足枷は思ったよりも重く頑丈で、、、」
言葉がとめどなく溢れ出てくる。自分でも歯止めが聞かないくらいに洪水のように流れ出て、八つ当たりのように目の前で黙って聞いてくれる姉に吐き続ける。言葉とともに涙が零れる。こんな感覚はいつ以来だろうか?たしか、姉さんに拾われて、11歳の春の夜にやっと身も心も解放されて、意味もなく泣き続けた時以来だ。あの時は部屋で大声をあげて赤ん坊のように泣いて、慌てて駆けつけた姉さんに宥められながらその膝で眠ったのだ。それからというもの、不眠症に悩まされがちだった俺は、眠れない夜は必ず姉の布団に潜り込んで眠っていた。
今更なんと言い訳しようと、俺の何よりの心の拠り所はいつだって姉だった。俺は、ノアにとってのそんな存在になりたいと、いつだって願ってきたのだ。しかし、そうはなれていなかった。
「…真似じゃ、ダメだったんだね。」
ゆっくりと立ち上がって、向かいにある二人がけのソファに腰掛ける。赤くなった目元をこすって、そっと閉じた瞼を再び上げると、いつの間に用意したのか、マグカップを二つ持った姉がちょうど隣に腰を下ろしたところだった。
「コーヒー?」
「いや、ココア。それと、少しの睡眠薬。」
何食わぬ顔でそのカップを渡してくる彼女。普通はそんな薬はバレないように盛るものだろうに、当たり前のように進めてくる。
「…寝ろってこと?」
「当たり前だ。普段ポーカーフェイスのお前があんなに感情を吐き出したんだ。そしてここ数日、お前の眠りは浅かっただろう。少し眠るといい。」
「でも…」
「寝ろ。」
「…はい。」
相変わらず抗う術など無いのだと悟る。諦めて渡されたココアを一気に飲み干し、カラになったマグカップを姉さんに渡した。すると、即効性の薬は相変わらず数分で効き始める。アンは二つのコップをティーテーブルに置くと、代わりにブランケットを広げて俺に被せた。鼻の上まで被せられて、眠気を煽られる。気がつくと、あの頃と変わらずに姉の膝に眠っていた。
「…おぼえ…て、たん…だ…」
「忘れるわけないでしょうに。」
片手で俺の肩を抑えながら、彼女は器用にも空いた片手で本を読み始める。
「おやすみ。何も心配いらないよ。」
ありがとう、と伝える前に、俺は夢の中へと引きずり込まれていった。
●●●
リリノアside
耳鳴りが少しと、眩しさが少し。夢だとわかっているせいか、体が少しフワフワとしている。
(あぁ、どうして忘れていたんだろう。ここに来るといつも思い出すのに。ここに呼ばれるのはいつぶりかな?今回も歓迎されてるとは思えないけど。)
「本当に、察しのいいことで。リリノア?」
懐かしい声に振り向くと、そこには穏やかな昼下がりのテラスがあった。いつの間にか、白の世界から放り出されていたようだ。
白を貴重としたテラスに、白の丸テーブルと同じデザインの椅子が2脚。その久しぶりに見る女性は、相変わらず優雅に髪を揺らしながら、片方の椅子に腰掛けてティータイムを楽しんでいるようだった。
「ルリア…」
「久しぶりね、ノア。まぁこっちに来て座りなさいな。ここに呼ぶのは初めてね?気に入ってもらえるかしら」
手招きされるままにテラスに踏み込むと、その向こうの景色は蒼く美しい湖だった。テラスの柱には葡萄の蔦が絡み、ところどころが垂れ下がってお洒落なカーテンのようになっている。
「素敵なところですね、穏やかで…」
退屈そうなところですね、と。思わず口走りそうになった言葉を飲み込む。私の言葉は、きっといかなるときも彼女を不愉快にさせてしまう。核心をついたことを口からこぼすのは、あまりいい癖では無い。しかし、ルリアはどこまで見越しているのか、ゆるりと笑って先を促した。
「あなたの言うとおりだわ。ここはとても退屈なの。鳥のさえずりは美しいけれど、あの子達は私のためには歌ってくれないわ。退屈は嫌い?」
「私、何も言ってない…」
「言わなくてもわかるわよ、そのくらい。それで、質問の答えは?」
「…嫌いじゃないよ。でも、」
私の言葉を聞いているのかいないのか、ルリアは再びティーカップを傾けた。そして、空になったカップをソーサーに戻し、優雅に湖の方を眺める。
「退屈は、時に人を狂わせるわ。」
自分に囁くように口にすると、ルリアは向こうを向いたままでクスクスと笑う。
そうしてひとしきり方を震わせたあと、思い出したようにこちらに向き直った。
「そうね、本当に。あなたは面白い子ね。流石…ふふっ」
何かを言いかけて誤魔化すように笑いを漏らす彼女。私にはさっぱり理解できないが、彼女の様子は見ていて飽きない。上品で、優雅で、まるで流れる小川の水面を無意識に眺めているようだった。
「ふぅ、そうそう。貴女に伝言を頼みたかったの。カインに伝えて欲しいの。」
「カインに?」
「そうよ。こう伝えてちょうだい、『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ蛇を解き放て』ってね。」
「えっ…え?」
「暗号にするしかないのよ。でも、こう言えばあの子には伝わるはずよ。お願いね?」
「ダイアナは身近に存在…逸らした蛇の目が…あれ?」
「『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ蛇を解き放て』よ。お願いね。」
「…わかった、多分覚えられた。」
口の中で言葉を転がし、咀嚼するように確かめる。一言一句間違えずに覚えていられるだろうかと不安を覚えるも、そもそもいつもは夢の記憶をもって現実には帰れないところを彼女が言うのなら大丈夫そうだと安心する。
「ルリア、ひとつ聞いてもいい?」
「ごめんね、また今度でもいい?そろそろ目を覚まさないと、あの子達が心配するわよ?」
まるで何時間も話していたかのようにルリアが時の流れを告げる。しかし、太陽は寸分たりとも動いていない。それに、ここに来てまだ数分とたっていないような気がするし…少しだけなら大丈夫だろうか?
「残念だけど、ここは日が落ちないの。現実ではもう2晩と半日がたっているのよ。大丈夫、また会えるわ」
「えっ、そんなに!?」
半年も眠り続けた前科がある私は、あまり長く眠る訳にはいかない。また、アンさんやカインの寿命を縮めてしまう。
「分かったわ、ではまた。どうやれば帰れるの?」
「私が送るわ、安心なさい」
そう言うと、ルリアは胸元から小さな角笛を取り出した。白く陽光を受けて光るそれを遠慮がちに鳴らすと、全ての景色が泡となって溶けてゆく。最後に、ルリアの姿だけがぼんやりと残り、小さく手を振っていた。
『しっかりね、ノア。』
次の瞬間、私の視界は急速に暗転した。
目を覚ますと、遮光カーテンに陽の光を遮られた薄暗い部屋の中にいた。ゆっくりと体を起こすと、掛けられていたシーツがハラリと落ちる。どういうわけか下着姿で見張りもなく部屋に一人でいたようだ。ここがどこかもいまいち分からないが、きっとアンさんの家の1室だろう。隣の椅子に、ガウンが畳んでおいてあったので、とりあえずそれを身につけて部屋を出た。扉を開けると、階段が降りていた。掃除の行き届いた小綺麗な廊下と階段を真っ直ぐに進むと、その先は真っ直ぐ玄関に繋がっていた。
(誰もいないの?そもそもここはどこなのかしら?)
玄関を開けると、中庭のような所に出た。外はよく晴れていて、温室のようなガラスの建物の中は様々な花が咲き乱れている。
「きれい…」
「あ、リリノアちゃん、起きたの?」
声をかけられてそちらを見ると、白衣に軍手と日除けの帽子といったよくわからない格好をしたアンさんに出くわした。
「おはようございます。あの…カインは」
「あぁ、あいつなら診察室のソファーで寝てるよ。そろそろ起こさなきゃな…起こしてきてくれるか?そのドア入ってすぐだから」
軍手を外しながらアンさんが一つの扉を指さす。私が出てきたのと対称に位置する木製のお洒落な扉。それは、いつも診察室の中から見ているものと同じデザインで、ここにつながっていたのかと納得する。
部屋に入ると、カインがソファの上で丸くなって寝息を立てていた。ゆさゆさと揺すると、細く目が開いて私を見据える。
「ノア、目が覚めたんだね。具合はどう?」
「大丈夫よ。ありがとう。それと…貴方に伝言を預かっているの。」
わたしの言葉に、怪訝そうな顔をするカイン。それもそのはず、夢の中から伝言なんて正気の沙汰ではない。それなのに、カインは先を促して大真面目に聞いてくれる。
「誰から?」
「分からないの。どうしても思い出せなくて…でも、内容は覚えてるの。」
「なんて言われたの?」
「えっと、たしか…」
私は気持ち悪いくらいに脳裏にはっきりと浮かび上がる文字列に目を通し、読み上げる。
『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ、蛇を解き放て』
「だったはず。」
閉じかけていた目を再び開いて彼を見ると、驚いたのは私の方だった。
カインの顔は、先程までの微睡みを消し去り、血の気が引いて青くなっていたのだ。
「カイン、大丈夫なの!?」
質問に答える様子のない彼の顔を覗き込むように近づくと、彼は獲物を捉えるカメレオンのように私を捕まえて抱き寄せた。
「…カイン?」
「…ごめん、ノア。ごめんな。俺が何とかするから、許してくれ」
そこまで言うと私を抱きしめる腕の力を緩めた。そしてゆるりと解放されて、改めて下院の目を見つめる。
その瞳には涙が溢れ、頬は紅く上気して、今にも声を上げて泣き出しそうだった。
「特に異常はないね。骨盤の歪みも改正されているし、あの超難産の後遺症みたいなものは無さそう。」
アネモネが耳に当てていた聴診器をそっと外す。検査過程はすべて終了し、体の異常は見つからなかったという。
「でも…」
「うん?」
アンが心配そうな顔をして、診察台に横たわるノアの胸のあたりに手を乗せた。
「体重が減っているの。この減り方は病的なんじゃないかしら?」
「どこまで減ったんだ?三日前に家で測った時には確か、41kgだっはずだが?」
ノアの今の身長は150cm。タダでさえ痩せていて、本人が満腹と感じるまでに食べさせるようにしているというのに、また痩せてしまったというのか?
「35kgしかないぞ。これは過去最低レベルなんじゃないのか?適正体重は48kgだ。それでちゃんとご飯食べてるなら、原因は他にあるとしか考えられない。」
僅かに不眠症を訴えたノアは今、睡眠薬を投与されて眠りについていた。そんなノアの隣に座る姉は片手で小さく手招きした。呼ばれるままに近くに行くと、耳打ちするようにアンが囁いた。
「お前は恋人であるとともにノアの管理人なんだ。ちゃんとこの子を見ているかい?触れているかい?少しやりすぎだと思うくらいにちゃんと触ってあげないと、遠慮と気遣いばかりじゃいくらでも見落とすよ?」
そう言いながら、アンは強引に俺の右手首を掴み、そのまま検査着越しに俺の手をノアのろっ骨になぞらせた。その感触はゾッとするほどに骨が出ていて、不謹慎ながら人体模型の骨格を思わせた。
「…これは見た目じゃわからないんだよ。なぞると骨が浮いてくるんだ。最後にこの子の身体に直接触れたのはいつだい?」
「2、3週間前くらい…かな。」
「じゃあその間、明るいところでちゃんと見てやる機会はあったかい?」
「…いや、なかった」
「…おそらく、ノアに自覚があるかどうかは知らないが…この子には自傷癖があるみたいだ。」
「なんだって?」
自分の耳を疑った。そんな様子、気配さえ感じさせなかったのに、いつの間に自傷に走っていたというのか。
「異端児の傷は、ある一線を越えなければ脅威の回復力をもって完治する。その速さは僅か数時間足らずだよ。でも、その一線をノアは知らないみたいだ。」
アンがノアにかけてあったタオルをそっとめくり、脚を出した。そのまま検査着の裾をまくり上げて、太股あたりまで出したところで右脚を軽く持ち上げた。
白く、細く、幼く頼りない脚。いつも目にしているはずだったのに、その深部、右脚の付け根に近い内腿には、ざっくりと刃物で刺したような跡があった。
「っこれは!?」
「おそらくは鋏だ。他にも治りかけているが消えきってない傷が数箇所ある。…超えてはいけない一線ってのはわかるね?簡単に言えば、骨に到達していない傷しか直せない。この傷はおよそ二日前のもの。まぁどっちにしろ人間の体にしちゃあ治るのは早いよ。でも、この傷は異端児特有の治癒力が作用していない…つまり、骨に届いている傷なんだよ」
「…俺に隠れて、自傷に走っていたというのか…?」
「…リリノアは隠し事が苦手なんだよ?」
「?うん。」
「そんな彼女が、毎日一緒にいるお前に気付かれないように何かことを成すとしたら…?」
まるで子供に言い聞かせるような姉の口調。こいつはいつだってこうやって、俺に考えることを教えた。空っぽだった人形の俺を、ゼンマイをあえて壊して糸さえ切り捨てて、無理に自立させようと俺の脚を抑えたのは、いつだってこの豪快で躊躇いも容赦もないこの女だった。そんな大切な姉が、いつもの如く俺に答えを求めて、もう分かったなとでも言いたげにこちらを見つめている。…分からないはずがないじゃないか、こんなもの。
「俺が、言えなくさせていたのか」
アネモネは何も言わない。微動打にせずに、白衣の中で綺麗に足を組んでいた。堪らなく怖くて、ぎゅと目を閉じて俯く。小さい頃から情けない俺は、何も変われていなかった。リリノアという守るべき存在を持って、守られっぱなしの自分が少しでも変わったと信じていた。…が、決してそうではなかった。いや寧ろ、地下室で陽の光も知らずに買われていた脆弱な存在が、たったの数年そこらで変われるはずがなかった。リリノアの前でどんなに大人ぶっても、そんなものは子供のままごとと変わらない。どんな綺麗事を並べたって、思慮深いノアの耳には戯言としてしか届いていなかったかもしれない。
考え始めれば、恐怖の闇は深くなる一方だった。もっと彼女を自由にしてやるべきだったのか、あるいは何にも興味を持たぬように俺が世界を作るべきだったのか…なんて、彼女が望みもしないであろうと分かりきっていることを繰り返し、そしてまた綺麗事の渦に飲まれるのだと絶望した。
「…カイン?」
「!?」
ふわりとした感触に触れた刹那、温かいものに包まれる。耳元で聞こえる鼓動は、俺を何よりも安心させる子守唄で、それは今でも変わらないようだった。
姉が座っている俺の頭を自らの胸にそっと抱いていた。そして、今では俺のより小さくなった、それでも頼もしく優しい手が、後頭部を、髪をそっと撫でている。
「えっ…と、姉さん…?」
「馬鹿だねぇ、お前は。本っ当に馬鹿だ!救いようがないねぇ」
「なっ、」
「分からないことがあるんだろう?」
「えっ?」
「なんでお前には『誰かに聞く』っていう手段が無いんだい?それだけでお前、人生の半分は損してるわ」
「そんなに!?」
「おう」
腕組みをして、どうだと言わんばかりに胸を張り、上から目線で俺を見下ろす姉。その姿は最早、絶対に逆らえない女王様のようで。
「…姉さん」
「うん?」
本当に、俺は馬鹿だ。単純なことだったのに、気づけないなんて。焦っていたのは俺の方だった。いつまでも幼い容姿に呑まれて子供扱いしていたノアの方がよっぽど大人だったと、これまでも何度も思った事実を、改めて本当の意味で実感する。
「…俺は、どうすべきだった?」
そう言うと、待っていましたと言わんばかりにアンがニィっと不敵に笑う。
「これだから、うちの弟はどんなに大きくなっても可愛がりたくなるんだな~。まぁ、言っといてなんだけど、私が正しい答えを出せるとは限らない。だが、1つ助言しておこう。」
ぽんぽんと軽く頭を撫でられる。それはいつもノアに俺がしているのとよく似ていた。
「喧嘩してもいいんだ、言いたいことを言いたい時に、言いたいように言え。単純なことだけど、現代の若者には難しいだろうな。それに、優しいやつほど難易度が高い。お前はその類だよ。これは贔屓目じゃあない。」
「うん…いつも、そうしようって思うんだよ。思うところまでは行くんだけど…俺は、愚かだ。どう使用もなく愚かなんだ。自分の身体が、脳が、いうことを聞かないんだよ…まるで手放し運転の自転車に急カーブを求めているかのような感覚で、限りなく不安になって、気を抜けばバランスを崩し兼ねない気がしてならないんだ…!こんな臆病じゃいけないって分かってるけど、それでも過去の記憶は、トラウマは拭いされない…足枷は思ったよりも重く頑丈で、、、」
言葉がとめどなく溢れ出てくる。自分でも歯止めが聞かないくらいに洪水のように流れ出て、八つ当たりのように目の前で黙って聞いてくれる姉に吐き続ける。言葉とともに涙が零れる。こんな感覚はいつ以来だろうか?たしか、姉さんに拾われて、11歳の春の夜にやっと身も心も解放されて、意味もなく泣き続けた時以来だ。あの時は部屋で大声をあげて赤ん坊のように泣いて、慌てて駆けつけた姉さんに宥められながらその膝で眠ったのだ。それからというもの、不眠症に悩まされがちだった俺は、眠れない夜は必ず姉の布団に潜り込んで眠っていた。
今更なんと言い訳しようと、俺の何よりの心の拠り所はいつだって姉だった。俺は、ノアにとってのそんな存在になりたいと、いつだって願ってきたのだ。しかし、そうはなれていなかった。
「…真似じゃ、ダメだったんだね。」
ゆっくりと立ち上がって、向かいにある二人がけのソファに腰掛ける。赤くなった目元をこすって、そっと閉じた瞼を再び上げると、いつの間に用意したのか、マグカップを二つ持った姉がちょうど隣に腰を下ろしたところだった。
「コーヒー?」
「いや、ココア。それと、少しの睡眠薬。」
何食わぬ顔でそのカップを渡してくる彼女。普通はそんな薬はバレないように盛るものだろうに、当たり前のように進めてくる。
「…寝ろってこと?」
「当たり前だ。普段ポーカーフェイスのお前があんなに感情を吐き出したんだ。そしてここ数日、お前の眠りは浅かっただろう。少し眠るといい。」
「でも…」
「寝ろ。」
「…はい。」
相変わらず抗う術など無いのだと悟る。諦めて渡されたココアを一気に飲み干し、カラになったマグカップを姉さんに渡した。すると、即効性の薬は相変わらず数分で効き始める。アンは二つのコップをティーテーブルに置くと、代わりにブランケットを広げて俺に被せた。鼻の上まで被せられて、眠気を煽られる。気がつくと、あの頃と変わらずに姉の膝に眠っていた。
「…おぼえ…て、たん…だ…」
「忘れるわけないでしょうに。」
片手で俺の肩を抑えながら、彼女は器用にも空いた片手で本を読み始める。
「おやすみ。何も心配いらないよ。」
ありがとう、と伝える前に、俺は夢の中へと引きずり込まれていった。
●●●
リリノアside
耳鳴りが少しと、眩しさが少し。夢だとわかっているせいか、体が少しフワフワとしている。
(あぁ、どうして忘れていたんだろう。ここに来るといつも思い出すのに。ここに呼ばれるのはいつぶりかな?今回も歓迎されてるとは思えないけど。)
「本当に、察しのいいことで。リリノア?」
懐かしい声に振り向くと、そこには穏やかな昼下がりのテラスがあった。いつの間にか、白の世界から放り出されていたようだ。
白を貴重としたテラスに、白の丸テーブルと同じデザインの椅子が2脚。その久しぶりに見る女性は、相変わらず優雅に髪を揺らしながら、片方の椅子に腰掛けてティータイムを楽しんでいるようだった。
「ルリア…」
「久しぶりね、ノア。まぁこっちに来て座りなさいな。ここに呼ぶのは初めてね?気に入ってもらえるかしら」
手招きされるままにテラスに踏み込むと、その向こうの景色は蒼く美しい湖だった。テラスの柱には葡萄の蔦が絡み、ところどころが垂れ下がってお洒落なカーテンのようになっている。
「素敵なところですね、穏やかで…」
退屈そうなところですね、と。思わず口走りそうになった言葉を飲み込む。私の言葉は、きっといかなるときも彼女を不愉快にさせてしまう。核心をついたことを口からこぼすのは、あまりいい癖では無い。しかし、ルリアはどこまで見越しているのか、ゆるりと笑って先を促した。
「あなたの言うとおりだわ。ここはとても退屈なの。鳥のさえずりは美しいけれど、あの子達は私のためには歌ってくれないわ。退屈は嫌い?」
「私、何も言ってない…」
「言わなくてもわかるわよ、そのくらい。それで、質問の答えは?」
「…嫌いじゃないよ。でも、」
私の言葉を聞いているのかいないのか、ルリアは再びティーカップを傾けた。そして、空になったカップをソーサーに戻し、優雅に湖の方を眺める。
「退屈は、時に人を狂わせるわ。」
自分に囁くように口にすると、ルリアは向こうを向いたままでクスクスと笑う。
そうしてひとしきり方を震わせたあと、思い出したようにこちらに向き直った。
「そうね、本当に。あなたは面白い子ね。流石…ふふっ」
何かを言いかけて誤魔化すように笑いを漏らす彼女。私にはさっぱり理解できないが、彼女の様子は見ていて飽きない。上品で、優雅で、まるで流れる小川の水面を無意識に眺めているようだった。
「ふぅ、そうそう。貴女に伝言を頼みたかったの。カインに伝えて欲しいの。」
「カインに?」
「そうよ。こう伝えてちょうだい、『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ蛇を解き放て』ってね。」
「えっ…え?」
「暗号にするしかないのよ。でも、こう言えばあの子には伝わるはずよ。お願いね?」
「ダイアナは身近に存在…逸らした蛇の目が…あれ?」
「『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ蛇を解き放て』よ。お願いね。」
「…わかった、多分覚えられた。」
口の中で言葉を転がし、咀嚼するように確かめる。一言一句間違えずに覚えていられるだろうかと不安を覚えるも、そもそもいつもは夢の記憶をもって現実には帰れないところを彼女が言うのなら大丈夫そうだと安心する。
「ルリア、ひとつ聞いてもいい?」
「ごめんね、また今度でもいい?そろそろ目を覚まさないと、あの子達が心配するわよ?」
まるで何時間も話していたかのようにルリアが時の流れを告げる。しかし、太陽は寸分たりとも動いていない。それに、ここに来てまだ数分とたっていないような気がするし…少しだけなら大丈夫だろうか?
「残念だけど、ここは日が落ちないの。現実ではもう2晩と半日がたっているのよ。大丈夫、また会えるわ」
「えっ、そんなに!?」
半年も眠り続けた前科がある私は、あまり長く眠る訳にはいかない。また、アンさんやカインの寿命を縮めてしまう。
「分かったわ、ではまた。どうやれば帰れるの?」
「私が送るわ、安心なさい」
そう言うと、ルリアは胸元から小さな角笛を取り出した。白く陽光を受けて光るそれを遠慮がちに鳴らすと、全ての景色が泡となって溶けてゆく。最後に、ルリアの姿だけがぼんやりと残り、小さく手を振っていた。
『しっかりね、ノア。』
次の瞬間、私の視界は急速に暗転した。
目を覚ますと、遮光カーテンに陽の光を遮られた薄暗い部屋の中にいた。ゆっくりと体を起こすと、掛けられていたシーツがハラリと落ちる。どういうわけか下着姿で見張りもなく部屋に一人でいたようだ。ここがどこかもいまいち分からないが、きっとアンさんの家の1室だろう。隣の椅子に、ガウンが畳んでおいてあったので、とりあえずそれを身につけて部屋を出た。扉を開けると、階段が降りていた。掃除の行き届いた小綺麗な廊下と階段を真っ直ぐに進むと、その先は真っ直ぐ玄関に繋がっていた。
(誰もいないの?そもそもここはどこなのかしら?)
玄関を開けると、中庭のような所に出た。外はよく晴れていて、温室のようなガラスの建物の中は様々な花が咲き乱れている。
「きれい…」
「あ、リリノアちゃん、起きたの?」
声をかけられてそちらを見ると、白衣に軍手と日除けの帽子といったよくわからない格好をしたアンさんに出くわした。
「おはようございます。あの…カインは」
「あぁ、あいつなら診察室のソファーで寝てるよ。そろそろ起こさなきゃな…起こしてきてくれるか?そのドア入ってすぐだから」
軍手を外しながらアンさんが一つの扉を指さす。私が出てきたのと対称に位置する木製のお洒落な扉。それは、いつも診察室の中から見ているものと同じデザインで、ここにつながっていたのかと納得する。
部屋に入ると、カインがソファの上で丸くなって寝息を立てていた。ゆさゆさと揺すると、細く目が開いて私を見据える。
「ノア、目が覚めたんだね。具合はどう?」
「大丈夫よ。ありがとう。それと…貴方に伝言を預かっているの。」
わたしの言葉に、怪訝そうな顔をするカイン。それもそのはず、夢の中から伝言なんて正気の沙汰ではない。それなのに、カインは先を促して大真面目に聞いてくれる。
「誰から?」
「分からないの。どうしても思い出せなくて…でも、内容は覚えてるの。」
「なんて言われたの?」
「えっと、たしか…」
私は気持ち悪いくらいに脳裏にはっきりと浮かび上がる文字列に目を通し、読み上げる。
『ダイアナは身近に存在する、逸らした目を抉られたくなければ、蛇を解き放て』
「だったはず。」
閉じかけていた目を再び開いて彼を見ると、驚いたのは私の方だった。
カインの顔は、先程までの微睡みを消し去り、血の気が引いて青くなっていたのだ。
「カイン、大丈夫なの!?」
質問に答える様子のない彼の顔を覗き込むように近づくと、彼は獲物を捉えるカメレオンのように私を捕まえて抱き寄せた。
「…カイン?」
「…ごめん、ノア。ごめんな。俺が何とかするから、許してくれ」
そこまで言うと私を抱きしめる腕の力を緩めた。そしてゆるりと解放されて、改めて下院の目を見つめる。
その瞳には涙が溢れ、頬は紅く上気して、今にも声を上げて泣き出しそうだった。
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