34 / 40
33. もう1人の少女
しおりを挟む
リリノアside
その後カインは目を擦ると、何事も無かったかのように立ち上がって、私を抱き上げて先程の中庭に出た。アンさんは温室の中で鋏を持って何やら作業をしていたようだが、私たちの姿を見て、外に出てきた。
「2人とも起きたね。じゃあお昼ご飯にしようか。」
「俺が作るよ」
「いいや、客は大人しくしとけ」
ひらひらと手を振りながら部屋の奥へと消えていくアンさん。その様子はいつもと変わらず、先ほどのカインこそ夢だったのではと思えてならない。
「ノア」
「えっ?」
「よく眠れた?」
「あ…うん」
脈絡のない会話に驚きを隠せずに返事をすると、何事もないと言うように彼は私の頭を撫でた。
「なら良かった。野暮用が入ったのでね、午後にはここを出て本邸に向かうよ?」
「本邸?どうして急に」
「分からないけど、呼び出しだ。まぁ、大方予想はつくけど…行けばはっきりするよ。」
「ふぅん…」
自分の目で確かめろ、と暗示されているのは言われるまでもない。でも、いつもなら私の意見を求めてくる彼が決定事項として伝えてくるということは、全力で警戒するようなことではないのかもしれない。
その後は、他愛ない会話とともに昼食をとり、中庭で少しのティータイムを過ごすこととなった。初めて入った中庭は、よく見ればたくさんの花が咲いていて、見る度に新たな発見があり面白い。真冬だというのに暖かいと思って上を見上げると、そこにはさっきは気づけなかったガラスの天井があった。とても長閑な時間がゆっくりと流れ、微かに不気味だとすら感じる。それはきっと、私がこの暖かな世界に慣れていないからだろう。
「ところで、リリノア。」
アンさんが不意に口を開く。ぼんやりと上を眺めていた首を彼女の方に向けると、少しばかり骨が軋んだ。
「お前さん、自分の子供に会いたいと思うかい?」
三人しかいないというのに、暖かい温室が凍りついたように固まる。今言葉を放てば、張り詰めた糸がぷつりと切れて、空気中に亀裂が入りそうな程に。
「姉さん…」
「カイン、別に今すぐどうこうするわけじゃないから。」
「…わかった」
何か言いたげなカインを冷静に制するアンさん。彼女は真剣な眼差しをこちらに向けて黙っている。
まるで、胃の中をザラりとした何かに重く舐めあげられているような感覚に包まれる。
「…会っても、私には何も、」
「いや、深く考えなくていい。まぁ勿論、お前が母親だってことは告げられないけど、一族の当主として、いずれは顔を合わせる。もし、気持ちの整理がついているなら、そろそろ会っておくのもアリだと思ってね。」
なんてことない、とでも言うように、アンさんは少しだけ仰け反って空を仰いだ。それを眺めている私の目は、まるでガラス玉のように味気ない世界を映し始める。
(ガラスの目…あの預言者はどうなったのかしら。)
関係の無いことを脳裏によぎらせつつ、アンさんの言葉を飲み下す。
「そうだね、逃げきれないのはわかってる。あの子が生まれたのは必然だし、個人としては…母親としてはありがとうって、おめでとうって言ってあげたい。…会ってもいいのかな」
心の奥に潜む罪の意識が、無造作に心臓を引っ掻く。ピリピリと痛みを伴う胸に私はいつの間にか爪を立てていた。
「リリノア、怖いの?」
椅子ごとこちら日かずいてきたカインが、中腰で私の顔を覗き込んだ。前かがみになったせいで、ハラリとひと房髪がかかる。その瞳は、まるで私を心配するように揺れていた。…いや、心配してくれているんだろう。
「怖い。…けど、大丈夫。そうだね、1回会ってみようかな。いつ会える?」
事実、会いたいという願望がなかった訳では無い。ただ、自分から切り出すほどの勇気と原動力が無かったのだ。
いつの間にか強く握りこんでいた手をゆっくりと解放すると、骨が軋んだ。しかし、以前のように爪が肉を裂く様なことはしていなかったようで、ホッと息をつく。
「早ければ今日会えるんじゃないのか?これから行くんだろう」
アンさんは立ち上がり、カラになったマグカップを丁寧に回収した。
「姉さんは行かない?」
「いや、いくよ。まだ2人とも目を離せそうにないからね。保護者としてついて行ってやるよ。」
「えぇ…いらない」
「バッカイン!」
アンさんは、カインを罵りながらも楽しそうに弟の首に腕を回す。それを嫌そうに振り払った彼は、立ち上がって客間に続く扉を目指した。
「じゃあ、出かける用意をしてくるから。もう少しここで待っていてね」
パタン、と軽く扉の向こうに消えていったカイン。少しの間を置いて、穏やかな春風のようにこちらに歩み寄ったアンさんに方を抱き寄せられる。
「ノアちゃん。心配なのも、不安なのも理解できる。でも、そんなに力まなくていいんだよ。酷なことを言うけれど、良くも悪くも母親としてではなく、一族の当主として会いに行くんだから。」
「分かってる。…ありがとう、アンさん。着くまでには整理しとくから、大丈夫」
そう言うと、アンさんは満面の笑みを浮かべて私の頭をクシャッと撫でた。
風のない中庭で、静かな時間を過ごしていると、何かを思い出しそうになる。喉元まででかかって、しかしそれは霧のように散ってしまう。それを知ってか知らずか、彼女は無遠慮に頭を撫で続けた。
「さて!じゃあ行くか。」
●●●
カインside
本邸に到着すると、いつも通りの無愛想なスーツの女が声をかけてきた。彼女の名前こそ知らないが、あまり一族の血を濃く継いでいるようには見えない。眉一つ動かさずにノアが座っている助手席の扉を開ける。しかし、ノアは完全に眠りに落ちていて、どうして良いものかと迷っているようだった。
「その子には触ってはいけないよ。」
静かにそう声をかけると、女は一歩下がった。
「彼女は俺が連れていくから、車を頼む。キーは後で俺の部屋に届けてくれ。それから、後ろの車はアネモネだ。俺の車の近くに案内してやってほしい。」
「かしこまりました。お部屋の準備は出来ております、どうぞお戻りください。」
軽く頭を下げて、運転席の方に回り込む彼女。俺は先に降りて、扉を開けたまま助手席の方へと移動した。よほど深く眠っているのか、ノアに目覚める様子はなおも無い。起こす必要もないか、と思い直して、被っていたブランケットごと抱えあげる。
「それじゃあ、頼んだよ。」
そう言い残して、助手席の扉を閉めた。
相変わらず物の少ない質素な部屋に入ると、デスクの上に数通の手紙がパラッと置いてあった。とりあえずノアをソファーに寝かせて、それらの手紙を手に取ると、全部で6通の手紙のうち4通が国際メールであることが分かった。
「どこの国だろう…フランス、イタリア…ギリシャか?これ。あとは…うん?」
宛名で使われている単語から大体の国を予測していくが、最後の1通はどうしても解読できない。
線がくねくねと大きさも太さも不均一に綴られていて、もはやどこまでが一文字なのかもよく分からない。
「ってか、これってどこかの言語なのか?少なくとも俺は見たことないぞ…」
デスクの下から椅子を引っ張り出してゆっくりと座る。デスクライトを付けて、一番上の引き出しの中からペーパーナイフを取り出し、中の便箋を切らないように丁寧に開封する。独り言をぶつぶつと呟きながら2枚の白い便箋を取り出すと、驚いたことに中身も宛名と同じような状態だった。
「だめだ、今すぐには解読できそうにもない…せめて差出人さえ分かれば問いただせるだろうが…」
諦めて手紙をパサリとデスクに落とす。背もたれに思いきり寄りかかると、しばらく使ってなかったせいか、盛大に軋みを上げた。
「ふぅ、待たせたな?カイン。ここの駐車場は遠いんだよな。なんでデパートでもないのに地下駐車場があるんだよこの家は~」
大きなキャリーケースを引きずりながらお疲れの様子のアンが部屋に入ってくる。
「別に待ってないし…というか、姉さんの部屋は隣りだろう?荷物くらい置いてくればいいのに」
「この中にはリリノアのためのモンも入ってんだよ。いいじゃないか、少しくらい。流石に夜は自室に帰るよ。…とは言っても、家具やインテリアはお前と同じでこの家からの支給物のみだから、あんま変わんないけどな~ここと。」
はぁーっと息を吐きながら、ノアが眠るソファーに浅く腰掛けるアン。眠る少女を優しく見つめると、優雅にその頭を撫で始めた。
「ノアちゃんちょっと寝すぎよ~。そろそろ起きなさ~い。」
起こす気があるのがないのか分からないような小声でアンは囁くと、人差し指でノアの頬をプニプニと押した。その間もノアは変わらず眠り続けていて、こちらに帰ってくる様子は無い。
と、そのとき、遠慮がちに部屋の扉が二回ノックされた。
「車のキーか?入れ。」
「失礼します。」
静かに扉を開けて入室してきたのは、見たことのない若い男性だった。彼もまたスーツを着ているが、どこか着られてる感があり、若さを際立たせる。
「カイン様、車のキーをお持ちしました。」
「あぁ、ありがとう。君は新入りかい?」
「えぇ、二週間ほど前に本邸に参りました。」
「なるほど…苦労をかけるね。」
「いえ、とんでもない。」
困ったように、はにかむ彼は頭に片手を当てて軽く会釈する。…まだ【こちら】には呑まれていないようで、どこか新鮮で心地が良い。
「…っと、引き止めて悪かったね。下がっていいよ」
軽く微笑んで小さく手を振ると、彼は一瞬驚いたような目をして、しかし我に返ったように会釈すると、少しばかり足早に扉に向かっていった。
「し、失礼しましたっ」
そう言いながらこちらに向き直り、深くお辞儀した青年。顔を上げると一瞬の間も置かずに部屋から出て行った。
「…俺、なんか変なことしたか?姉さ…ん…?」
デスクの引き出しからメガネを取り出しながら横目に姉に問うと、その顔はさっきの若者の様に唖然としていた。それどころか、僅かに頬が桜色に色づいているようにさえ見える。
「…へ?」
「…お前さ、それ無意識とか罪だよ?」
「はぁ!?何がだよ!!」
ギシッとソファーを軋ませながらゆっくりと立ち上がるアン。そしてゆるりと俺の前で立ち止まり、両手で俺の顔を包むと容赦なくムギュっと力を込めた。
「さっきの笑顔は何だよ!?お前はただの天使か!!同性のアイツですら落ちかけてたじゃないかっ、アハハハッ!!!」
俺の頬を軽く摘んだり寄せたりしながらアンは豪快に声を上げて笑っていた。まったく状況を飲み込めていない俺の脳は真っ白を通り越して、危険を訴える黄色に染まっていた。
「んあぁっもう離せよ!ンなこと知るか!」
「ふぅーっ、笑った笑った。」
「ったく、勝手にしろよ」
笑い転げているアンを払って、デスクに向き直る。そして、残りの手紙をペーパーナイフで開封しようとした時だった。
コンコンコン…
再び、扉を叩く音が響いた。次から次へと、忙しい連中である。俺が呪われた子の片割れであることは、まだ一族には知られていないはずだ。ならば、俺が此処で重宝されているのは『汚れ仕事』を買ったお人好しだからなのだ。
「ハァ…入れ。」
「失礼致します」
入ってきたのは中年の女性だった。少しばかりふくよかな体つきで、そこらの井戸端会議で噂話に花を咲かせていそうな人である。
「リリノア様のお召換えを、とのことで遣わされた給仕のデメーテルです。」
洗濯籠を脇に抱え直すと、彼女は優雅にお辞儀した。そして、ゆっくりとノアに歩み寄ると少し屈んで寝顔をのぞきこんだ。
「まぁ、大きくなったことで。」
どこか懐かしそうに、彼女は小さく呟いた。その姿はまるで異端児を蔑む様子を見せず、単なる給仕婦とは思えない。
もしかしたら、一族の血縁の中でもノアに近しいのかもしれない、と思い立って尋ねようと口を開きかけると、それを遮るようにアンが彼女に駆け寄った。
「あぁなんと、お久しぶりですね叔母様!」
(叔母様!?)
両手を広げてデメーテルに抱擁するアン。訳もわからずにポカンとそれを見つめている俺は、姉を見つめて説明を求めた。
「あ、そっか。アンタは初めてよね」
「アネモネ様、お久しぶりです。お元気そうで何より。そうね、カイン様にお目にかかるのは十数年そこらだもの、覚えているはずが無いわよ」
彼女は屈強な腕でアンを一度抱きしめると、手を離してもう1度俺に向き直った。
「私は、リリノア様の叔母に当たるものです。つまり、当主妻のレアの姉です。」
「あぁ、そういうことでしたか!」
そういえば、レア様には姉が1人いると聞いたことがあった。やせ細って物静かなレア様とは真逆なので、全くの予想外である。
「えっと、着替えでしたね。ノア、寝てるんですけど起こして大丈夫です。」
そろそろ起こしておかないと、また夜眠れずに徘徊されてはこちらが困ってしまう。
「あ、いいえ、大丈夫ですよ。眠っているなら私が着替えさせてしまいますから。暫く本邸を離れてベビーシッターをしていましたの。眠る子供には慣れていますわ」
「そうですか。」
「では、少しリリノア様をお連れしますね」
「お願いします」
デメーテルは空っぽの籠を床に置き、そこにリリノアを座らせるようにしてから籠ごと抱き上げた。
「十五分程度で終わります。では、失礼致します」
事務的にそう言うと、彼女は部屋を出ていった。
「叔母…か。」
小さく呟く。しかし、やっと仕事にかかれると思い直し、何度目かわからないが再びデスクに向き直った。
他国語は、主要な国はある程度理解できる。しかし、手紙ともなると筆跡によっては読み取れない部分もあった。自宅から持ち出したパソコンの電源を入れ、キーを叩く音だけが静かな部屋に響き渡る環境に集中し、身を沈める。
やっとの事で、ギリシャ以外の3通の手紙を読み終えた時だった。ずっと大人しかったために存在を忘れていたアンが、唐突に口を開いた。
「リリノアが、遅いんじゃないか。」
時計を見れば、早くも2時間が経過していた。集中のあまり、時間の感覚が消え失せていたようだ。
悪寒が背筋を走り抜け、衝動的に俺は立ち上がった。勢いを付けすぎたためか、デスク用のチェアーが大きな音を立てて倒れる。
「…姉さん、どうしてもっと早く言わなかった。」
「どうしてって、私はたった今この部屋に戻ってきたんじゃないか。」
なるほど、大人しかったのではなく本当に存在を消していたのか。
「今日の集会の参加者で、1人ここに向かう途中に車が壊れた人がいてね、迎えに行っていたんだよ。」
「…ごめん、ご苦労さま」
「いや、いい。だがリリノアはまだ戻ってないようだな?」
「あぁ。少し様子を見に…ッ!?」
立ち尽くした状態から一歩を踏み出そうとすると、まるで地面が平ではなくなったかのように視界が歪んだ。
「おい、どうしたよカイン!?」
尻もちをつく形で床に座り込んだ俺の元にアンが走り寄った。そして、その腕力はどこから湧いてくるのか俺を抱え上げて、ノアが眠っていたソファーに座らせてくれた。
「立ちくらみか?貧血か?」
「いや、少し目が回った感じで…目を閉じていれば何も変わらないんだが…」
「…これは、いよいよまずい事になっているかもしれん」
「どういうこと?」
「ノアの身に何かあったのかもしれない。それは外傷的な意味ではなく、ノア自身の能力に関して、だ。」
「能力…」
「今日の集会の目的は、ノアのこの先の扱いについてを話し合うことだったな?」
「あぁ。」
「前に話したとは思うが、それは私が本邸に提出した報告書のせいだ。」
「そうだったな。」
「あの報告書のどの部分に目をつけたか、今日知らされる予定の私たちにはまだわからない。」
「うん…」
「だが恐らく、私の予想が正しければ」
「…」
「ノアが、まだ聖獣の方の力を一度も表していないことだと思うんだ。」
「!?」
「お前がオルトロスの力を操り始めたのは14歳の時だったな。普通は、歴代の当主たちを辿ると12から15の間に絶対に現れているんだよ。だが、もうすぐ17になろうとしているノアは、その兆しを欠片も見せていない。しかし、聖獣をもう一つの確立された生き物だと見るなら、現れようと現れまいと、見えないところで向こうも一緒に成長しているんだ。つまり、成獣のノアはもう大人になっている。力もほぼ完全に育ちきっている。それなのに、操り方も分からなかったら…その状態で、発作的に突然出現したらどうなると思う!?」
「…子供のうちに姿を表せれば、暴走してもその力はたかが知れてる。けど、力だけが大人で思考が子供で暴れるとなると、もう誰の手にも負えないのか…!?」
「そういうことだ。まして、遅すぎた出現には獣に自我はないだろうな。…死人が出るぞ」
焦りばかりが心を支配していく中、俺はまるで全力疾走し続けているかのように体力を吸い取られているような感覚に包まれていた。
「アン、俺の体力がどんどん削られていくんだが…これは?」
「お前とノアは文字通りの一心同体なんだよ。お互いに外傷は共有しないが、能力は共有するんだ。つまり、お前の奪われている体力は、おそらくノアが今消費している体力に等しい。だが、理不尽なことに上限が等しくないんだ。先に体力がなくなるのはノアの方だ。…大変だ、私はノアを探しに行く!」
「なら、俺も…」
「バカ!今の話を聞いていなかったのか!?ノアが消耗した体力をお前が無くすように、お前が消費した体力はノアに影響するんだ。だから、お前はそこで大人しく体力消費ゼロを目指してろ!」
「分かった…」
「じゃあ、行ってくるよ。」
近くにあった小さな手提げバッグを手に取るアン。焦りを隠せない足取りでドアノブに手をかけた。…と、そのときだった。
ほんの刹那、一秒にも満たない時間差で一歩早く扉が開かれた。
「あぁ、失礼。アネモネ様ですね。」
扉とアンの影になって見えないが、野太い男の声だった。
「はい、…っあぁ!!!」
返事と重ねて甲高い声を上げる姉。
「そんな…嘘…何があったの!!!」
明らかに慌てふためいているアン。その声はとても震えていて、何事かと思ったが、ゆっくりと開かれた扉から現れた彼らを見て、全てを察した。
「お2人がご無事でよかった…」
やって来たのは、黒いスーツを着た三人の男性。全員見たことのある人達だ。しかし、そのうちの一人が抱えているモノを見て、俺の脳は…全てが凍りついた。
彼らが抱え込んだのは、全身を血に沈めた後のような惨状のリリノアだった。
その後カインは目を擦ると、何事も無かったかのように立ち上がって、私を抱き上げて先程の中庭に出た。アンさんは温室の中で鋏を持って何やら作業をしていたようだが、私たちの姿を見て、外に出てきた。
「2人とも起きたね。じゃあお昼ご飯にしようか。」
「俺が作るよ」
「いいや、客は大人しくしとけ」
ひらひらと手を振りながら部屋の奥へと消えていくアンさん。その様子はいつもと変わらず、先ほどのカインこそ夢だったのではと思えてならない。
「ノア」
「えっ?」
「よく眠れた?」
「あ…うん」
脈絡のない会話に驚きを隠せずに返事をすると、何事もないと言うように彼は私の頭を撫でた。
「なら良かった。野暮用が入ったのでね、午後にはここを出て本邸に向かうよ?」
「本邸?どうして急に」
「分からないけど、呼び出しだ。まぁ、大方予想はつくけど…行けばはっきりするよ。」
「ふぅん…」
自分の目で確かめろ、と暗示されているのは言われるまでもない。でも、いつもなら私の意見を求めてくる彼が決定事項として伝えてくるということは、全力で警戒するようなことではないのかもしれない。
その後は、他愛ない会話とともに昼食をとり、中庭で少しのティータイムを過ごすこととなった。初めて入った中庭は、よく見ればたくさんの花が咲いていて、見る度に新たな発見があり面白い。真冬だというのに暖かいと思って上を見上げると、そこにはさっきは気づけなかったガラスの天井があった。とても長閑な時間がゆっくりと流れ、微かに不気味だとすら感じる。それはきっと、私がこの暖かな世界に慣れていないからだろう。
「ところで、リリノア。」
アンさんが不意に口を開く。ぼんやりと上を眺めていた首を彼女の方に向けると、少しばかり骨が軋んだ。
「お前さん、自分の子供に会いたいと思うかい?」
三人しかいないというのに、暖かい温室が凍りついたように固まる。今言葉を放てば、張り詰めた糸がぷつりと切れて、空気中に亀裂が入りそうな程に。
「姉さん…」
「カイン、別に今すぐどうこうするわけじゃないから。」
「…わかった」
何か言いたげなカインを冷静に制するアンさん。彼女は真剣な眼差しをこちらに向けて黙っている。
まるで、胃の中をザラりとした何かに重く舐めあげられているような感覚に包まれる。
「…会っても、私には何も、」
「いや、深く考えなくていい。まぁ勿論、お前が母親だってことは告げられないけど、一族の当主として、いずれは顔を合わせる。もし、気持ちの整理がついているなら、そろそろ会っておくのもアリだと思ってね。」
なんてことない、とでも言うように、アンさんは少しだけ仰け反って空を仰いだ。それを眺めている私の目は、まるでガラス玉のように味気ない世界を映し始める。
(ガラスの目…あの預言者はどうなったのかしら。)
関係の無いことを脳裏によぎらせつつ、アンさんの言葉を飲み下す。
「そうだね、逃げきれないのはわかってる。あの子が生まれたのは必然だし、個人としては…母親としてはありがとうって、おめでとうって言ってあげたい。…会ってもいいのかな」
心の奥に潜む罪の意識が、無造作に心臓を引っ掻く。ピリピリと痛みを伴う胸に私はいつの間にか爪を立てていた。
「リリノア、怖いの?」
椅子ごとこちら日かずいてきたカインが、中腰で私の顔を覗き込んだ。前かがみになったせいで、ハラリとひと房髪がかかる。その瞳は、まるで私を心配するように揺れていた。…いや、心配してくれているんだろう。
「怖い。…けど、大丈夫。そうだね、1回会ってみようかな。いつ会える?」
事実、会いたいという願望がなかった訳では無い。ただ、自分から切り出すほどの勇気と原動力が無かったのだ。
いつの間にか強く握りこんでいた手をゆっくりと解放すると、骨が軋んだ。しかし、以前のように爪が肉を裂く様なことはしていなかったようで、ホッと息をつく。
「早ければ今日会えるんじゃないのか?これから行くんだろう」
アンさんは立ち上がり、カラになったマグカップを丁寧に回収した。
「姉さんは行かない?」
「いや、いくよ。まだ2人とも目を離せそうにないからね。保護者としてついて行ってやるよ。」
「えぇ…いらない」
「バッカイン!」
アンさんは、カインを罵りながらも楽しそうに弟の首に腕を回す。それを嫌そうに振り払った彼は、立ち上がって客間に続く扉を目指した。
「じゃあ、出かける用意をしてくるから。もう少しここで待っていてね」
パタン、と軽く扉の向こうに消えていったカイン。少しの間を置いて、穏やかな春風のようにこちらに歩み寄ったアンさんに方を抱き寄せられる。
「ノアちゃん。心配なのも、不安なのも理解できる。でも、そんなに力まなくていいんだよ。酷なことを言うけれど、良くも悪くも母親としてではなく、一族の当主として会いに行くんだから。」
「分かってる。…ありがとう、アンさん。着くまでには整理しとくから、大丈夫」
そう言うと、アンさんは満面の笑みを浮かべて私の頭をクシャッと撫でた。
風のない中庭で、静かな時間を過ごしていると、何かを思い出しそうになる。喉元まででかかって、しかしそれは霧のように散ってしまう。それを知ってか知らずか、彼女は無遠慮に頭を撫で続けた。
「さて!じゃあ行くか。」
●●●
カインside
本邸に到着すると、いつも通りの無愛想なスーツの女が声をかけてきた。彼女の名前こそ知らないが、あまり一族の血を濃く継いでいるようには見えない。眉一つ動かさずにノアが座っている助手席の扉を開ける。しかし、ノアは完全に眠りに落ちていて、どうして良いものかと迷っているようだった。
「その子には触ってはいけないよ。」
静かにそう声をかけると、女は一歩下がった。
「彼女は俺が連れていくから、車を頼む。キーは後で俺の部屋に届けてくれ。それから、後ろの車はアネモネだ。俺の車の近くに案内してやってほしい。」
「かしこまりました。お部屋の準備は出来ております、どうぞお戻りください。」
軽く頭を下げて、運転席の方に回り込む彼女。俺は先に降りて、扉を開けたまま助手席の方へと移動した。よほど深く眠っているのか、ノアに目覚める様子はなおも無い。起こす必要もないか、と思い直して、被っていたブランケットごと抱えあげる。
「それじゃあ、頼んだよ。」
そう言い残して、助手席の扉を閉めた。
相変わらず物の少ない質素な部屋に入ると、デスクの上に数通の手紙がパラッと置いてあった。とりあえずノアをソファーに寝かせて、それらの手紙を手に取ると、全部で6通の手紙のうち4通が国際メールであることが分かった。
「どこの国だろう…フランス、イタリア…ギリシャか?これ。あとは…うん?」
宛名で使われている単語から大体の国を予測していくが、最後の1通はどうしても解読できない。
線がくねくねと大きさも太さも不均一に綴られていて、もはやどこまでが一文字なのかもよく分からない。
「ってか、これってどこかの言語なのか?少なくとも俺は見たことないぞ…」
デスクの下から椅子を引っ張り出してゆっくりと座る。デスクライトを付けて、一番上の引き出しの中からペーパーナイフを取り出し、中の便箋を切らないように丁寧に開封する。独り言をぶつぶつと呟きながら2枚の白い便箋を取り出すと、驚いたことに中身も宛名と同じような状態だった。
「だめだ、今すぐには解読できそうにもない…せめて差出人さえ分かれば問いただせるだろうが…」
諦めて手紙をパサリとデスクに落とす。背もたれに思いきり寄りかかると、しばらく使ってなかったせいか、盛大に軋みを上げた。
「ふぅ、待たせたな?カイン。ここの駐車場は遠いんだよな。なんでデパートでもないのに地下駐車場があるんだよこの家は~」
大きなキャリーケースを引きずりながらお疲れの様子のアンが部屋に入ってくる。
「別に待ってないし…というか、姉さんの部屋は隣りだろう?荷物くらい置いてくればいいのに」
「この中にはリリノアのためのモンも入ってんだよ。いいじゃないか、少しくらい。流石に夜は自室に帰るよ。…とは言っても、家具やインテリアはお前と同じでこの家からの支給物のみだから、あんま変わんないけどな~ここと。」
はぁーっと息を吐きながら、ノアが眠るソファーに浅く腰掛けるアン。眠る少女を優しく見つめると、優雅にその頭を撫で始めた。
「ノアちゃんちょっと寝すぎよ~。そろそろ起きなさ~い。」
起こす気があるのがないのか分からないような小声でアンは囁くと、人差し指でノアの頬をプニプニと押した。その間もノアは変わらず眠り続けていて、こちらに帰ってくる様子は無い。
と、そのとき、遠慮がちに部屋の扉が二回ノックされた。
「車のキーか?入れ。」
「失礼します。」
静かに扉を開けて入室してきたのは、見たことのない若い男性だった。彼もまたスーツを着ているが、どこか着られてる感があり、若さを際立たせる。
「カイン様、車のキーをお持ちしました。」
「あぁ、ありがとう。君は新入りかい?」
「えぇ、二週間ほど前に本邸に参りました。」
「なるほど…苦労をかけるね。」
「いえ、とんでもない。」
困ったように、はにかむ彼は頭に片手を当てて軽く会釈する。…まだ【こちら】には呑まれていないようで、どこか新鮮で心地が良い。
「…っと、引き止めて悪かったね。下がっていいよ」
軽く微笑んで小さく手を振ると、彼は一瞬驚いたような目をして、しかし我に返ったように会釈すると、少しばかり足早に扉に向かっていった。
「し、失礼しましたっ」
そう言いながらこちらに向き直り、深くお辞儀した青年。顔を上げると一瞬の間も置かずに部屋から出て行った。
「…俺、なんか変なことしたか?姉さ…ん…?」
デスクの引き出しからメガネを取り出しながら横目に姉に問うと、その顔はさっきの若者の様に唖然としていた。それどころか、僅かに頬が桜色に色づいているようにさえ見える。
「…へ?」
「…お前さ、それ無意識とか罪だよ?」
「はぁ!?何がだよ!!」
ギシッとソファーを軋ませながらゆっくりと立ち上がるアン。そしてゆるりと俺の前で立ち止まり、両手で俺の顔を包むと容赦なくムギュっと力を込めた。
「さっきの笑顔は何だよ!?お前はただの天使か!!同性のアイツですら落ちかけてたじゃないかっ、アハハハッ!!!」
俺の頬を軽く摘んだり寄せたりしながらアンは豪快に声を上げて笑っていた。まったく状況を飲み込めていない俺の脳は真っ白を通り越して、危険を訴える黄色に染まっていた。
「んあぁっもう離せよ!ンなこと知るか!」
「ふぅーっ、笑った笑った。」
「ったく、勝手にしろよ」
笑い転げているアンを払って、デスクに向き直る。そして、残りの手紙をペーパーナイフで開封しようとした時だった。
コンコンコン…
再び、扉を叩く音が響いた。次から次へと、忙しい連中である。俺が呪われた子の片割れであることは、まだ一族には知られていないはずだ。ならば、俺が此処で重宝されているのは『汚れ仕事』を買ったお人好しだからなのだ。
「ハァ…入れ。」
「失礼致します」
入ってきたのは中年の女性だった。少しばかりふくよかな体つきで、そこらの井戸端会議で噂話に花を咲かせていそうな人である。
「リリノア様のお召換えを、とのことで遣わされた給仕のデメーテルです。」
洗濯籠を脇に抱え直すと、彼女は優雅にお辞儀した。そして、ゆっくりとノアに歩み寄ると少し屈んで寝顔をのぞきこんだ。
「まぁ、大きくなったことで。」
どこか懐かしそうに、彼女は小さく呟いた。その姿はまるで異端児を蔑む様子を見せず、単なる給仕婦とは思えない。
もしかしたら、一族の血縁の中でもノアに近しいのかもしれない、と思い立って尋ねようと口を開きかけると、それを遮るようにアンが彼女に駆け寄った。
「あぁなんと、お久しぶりですね叔母様!」
(叔母様!?)
両手を広げてデメーテルに抱擁するアン。訳もわからずにポカンとそれを見つめている俺は、姉を見つめて説明を求めた。
「あ、そっか。アンタは初めてよね」
「アネモネ様、お久しぶりです。お元気そうで何より。そうね、カイン様にお目にかかるのは十数年そこらだもの、覚えているはずが無いわよ」
彼女は屈強な腕でアンを一度抱きしめると、手を離してもう1度俺に向き直った。
「私は、リリノア様の叔母に当たるものです。つまり、当主妻のレアの姉です。」
「あぁ、そういうことでしたか!」
そういえば、レア様には姉が1人いると聞いたことがあった。やせ細って物静かなレア様とは真逆なので、全くの予想外である。
「えっと、着替えでしたね。ノア、寝てるんですけど起こして大丈夫です。」
そろそろ起こしておかないと、また夜眠れずに徘徊されてはこちらが困ってしまう。
「あ、いいえ、大丈夫ですよ。眠っているなら私が着替えさせてしまいますから。暫く本邸を離れてベビーシッターをしていましたの。眠る子供には慣れていますわ」
「そうですか。」
「では、少しリリノア様をお連れしますね」
「お願いします」
デメーテルは空っぽの籠を床に置き、そこにリリノアを座らせるようにしてから籠ごと抱き上げた。
「十五分程度で終わります。では、失礼致します」
事務的にそう言うと、彼女は部屋を出ていった。
「叔母…か。」
小さく呟く。しかし、やっと仕事にかかれると思い直し、何度目かわからないが再びデスクに向き直った。
他国語は、主要な国はある程度理解できる。しかし、手紙ともなると筆跡によっては読み取れない部分もあった。自宅から持ち出したパソコンの電源を入れ、キーを叩く音だけが静かな部屋に響き渡る環境に集中し、身を沈める。
やっとの事で、ギリシャ以外の3通の手紙を読み終えた時だった。ずっと大人しかったために存在を忘れていたアンが、唐突に口を開いた。
「リリノアが、遅いんじゃないか。」
時計を見れば、早くも2時間が経過していた。集中のあまり、時間の感覚が消え失せていたようだ。
悪寒が背筋を走り抜け、衝動的に俺は立ち上がった。勢いを付けすぎたためか、デスク用のチェアーが大きな音を立てて倒れる。
「…姉さん、どうしてもっと早く言わなかった。」
「どうしてって、私はたった今この部屋に戻ってきたんじゃないか。」
なるほど、大人しかったのではなく本当に存在を消していたのか。
「今日の集会の参加者で、1人ここに向かう途中に車が壊れた人がいてね、迎えに行っていたんだよ。」
「…ごめん、ご苦労さま」
「いや、いい。だがリリノアはまだ戻ってないようだな?」
「あぁ。少し様子を見に…ッ!?」
立ち尽くした状態から一歩を踏み出そうとすると、まるで地面が平ではなくなったかのように視界が歪んだ。
「おい、どうしたよカイン!?」
尻もちをつく形で床に座り込んだ俺の元にアンが走り寄った。そして、その腕力はどこから湧いてくるのか俺を抱え上げて、ノアが眠っていたソファーに座らせてくれた。
「立ちくらみか?貧血か?」
「いや、少し目が回った感じで…目を閉じていれば何も変わらないんだが…」
「…これは、いよいよまずい事になっているかもしれん」
「どういうこと?」
「ノアの身に何かあったのかもしれない。それは外傷的な意味ではなく、ノア自身の能力に関して、だ。」
「能力…」
「今日の集会の目的は、ノアのこの先の扱いについてを話し合うことだったな?」
「あぁ。」
「前に話したとは思うが、それは私が本邸に提出した報告書のせいだ。」
「そうだったな。」
「あの報告書のどの部分に目をつけたか、今日知らされる予定の私たちにはまだわからない。」
「うん…」
「だが恐らく、私の予想が正しければ」
「…」
「ノアが、まだ聖獣の方の力を一度も表していないことだと思うんだ。」
「!?」
「お前がオルトロスの力を操り始めたのは14歳の時だったな。普通は、歴代の当主たちを辿ると12から15の間に絶対に現れているんだよ。だが、もうすぐ17になろうとしているノアは、その兆しを欠片も見せていない。しかし、聖獣をもう一つの確立された生き物だと見るなら、現れようと現れまいと、見えないところで向こうも一緒に成長しているんだ。つまり、成獣のノアはもう大人になっている。力もほぼ完全に育ちきっている。それなのに、操り方も分からなかったら…その状態で、発作的に突然出現したらどうなると思う!?」
「…子供のうちに姿を表せれば、暴走してもその力はたかが知れてる。けど、力だけが大人で思考が子供で暴れるとなると、もう誰の手にも負えないのか…!?」
「そういうことだ。まして、遅すぎた出現には獣に自我はないだろうな。…死人が出るぞ」
焦りばかりが心を支配していく中、俺はまるで全力疾走し続けているかのように体力を吸い取られているような感覚に包まれていた。
「アン、俺の体力がどんどん削られていくんだが…これは?」
「お前とノアは文字通りの一心同体なんだよ。お互いに外傷は共有しないが、能力は共有するんだ。つまり、お前の奪われている体力は、おそらくノアが今消費している体力に等しい。だが、理不尽なことに上限が等しくないんだ。先に体力がなくなるのはノアの方だ。…大変だ、私はノアを探しに行く!」
「なら、俺も…」
「バカ!今の話を聞いていなかったのか!?ノアが消耗した体力をお前が無くすように、お前が消費した体力はノアに影響するんだ。だから、お前はそこで大人しく体力消費ゼロを目指してろ!」
「分かった…」
「じゃあ、行ってくるよ。」
近くにあった小さな手提げバッグを手に取るアン。焦りを隠せない足取りでドアノブに手をかけた。…と、そのときだった。
ほんの刹那、一秒にも満たない時間差で一歩早く扉が開かれた。
「あぁ、失礼。アネモネ様ですね。」
扉とアンの影になって見えないが、野太い男の声だった。
「はい、…っあぁ!!!」
返事と重ねて甲高い声を上げる姉。
「そんな…嘘…何があったの!!!」
明らかに慌てふためいているアン。その声はとても震えていて、何事かと思ったが、ゆっくりと開かれた扉から現れた彼らを見て、全てを察した。
「お2人がご無事でよかった…」
やって来たのは、黒いスーツを着た三人の男性。全員見たことのある人達だ。しかし、そのうちの一人が抱えているモノを見て、俺の脳は…全てが凍りついた。
彼らが抱え込んだのは、全身を血に沈めた後のような惨状のリリノアだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる