二人の時間。

坂伊京助。

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二人姉妹の部屋。

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 額に冷却シートを貼り自分のベッドの上で横になっている私、全身は熱く布団の中はまるでサウナのようだ。呼吸をする度に喉の奥の方でヒューヒューと音をたてる。頭痛も酷く煉瓦の様なもので頭を殴られているように痛い目を開けているだけでもしんどい状態の私は、ゆっくりと目を閉じて眠ることにした。
 ドン、ドンッ!
部屋のドアを叩く音で目を覚ました。
「私だけど?入るよ?」
扉の向こう側で聞き覚えのある隣の家に住んでいる年上の幼馴染みである若月由美の優しい声が聞こえる。私の返答を待たずして部屋のドアが開いた。
「大丈夫?体育の授業中に倒れたって聞いたから急いで来たんだけど、熱はどうなの?体は平気?」
 不安で一杯の表情で部屋に入ってきた由美姉は、我が子の身に何かあった時のような母親のように私の枕元に駆け寄って来て座った。
 今日、私は6限目の体育の時間にここ数日の不摂生で体調を崩していたけど無理をし過ぎて倒れてしまった。保健室に運ばれた後に、仕事を少し抜けて駆け付けてくれたお父さんの車に乗って家で一人寝ていた所に由美姉が来てくれた。
「少し寝たら楽になってきたので大丈夫です。」
 多少、軽くなってきた体の奥から絞り出すように小さく掠れた声で答えた。
「そっか、それなら良かった。」
「心配かけてすみません。」
 由美姉と私は、同じ高校の一年と三年で部活も同じ文学部に入っていて由美姉は部長もしている。昔は敬語なんて使ってなかったけどいつからか、二人きりの時も敬語を使うようになっていた。
「ねぇ、さっきから敬語でしか話さないけど二人きりなんだから敬語なんて使わないでよ!」
 頬をぷくっと膨らませながら元気の無い私を元気付けようと少しおどけて見せた。
「分かったよ、由美姉心配して来てくれてありがとう」
 そんな、私の言葉に分かりやすく表情が明るくなる由美姉は、両手を腰に当てて胸を張り口を少し尖らせて斜め上を向きながら自信ありげに言った。
「そうだよ!私たちは姉妹みたいなもんなんだから、もっとお姉ちゃんを頼りなさい!」
 熱の私を元気付けるためにいつものように明るく振る舞う由美姉を見て私は少し元気が出てきた、でもそれと同時に胸の間の奥の辺りがキュッと締め付けられるような感覚も押し寄せた。
 だって今日は、由美姉が高校に入学をした時からずっと片想いをしていた男子に告白をすると言っていた当日だから。それなのに由美姉は、不摂生が原因で倒れた私なんかのために学校が終わってすぐに私の所に来てくれた。
 私だっていつまでも子どもじゃない。由美姉の力になりたい。辛いことがあるなら正直に言ってほしい。頑張って元気付けてくれている由美姉を目の前にして私は、そんなことを考えた。
「ねぇ、由美姉今日ってさ確か、、。」
 勇気を出して口を開いた私の言葉は由美姉に遮られた。
「あっ、そういえば林檎持ってきたんだよ!可愛くウサギの形にしてあげるからね!」
 表情も声色もいつも通りの由美姉のようでそうでない。私の前ではいつも元気なお姉ちゃんでいなけらばという気持ちに押し潰されてとびきりの笑顔に明るい声なのに心の奥の方に無理矢理仕舞い込んである悲しくて辛い気持ちをどことなく感じてしまう。
 でも、この気持ちどうしたらいいのか分からない。でも無理に明るさを演じている由美姉は、見たくない私は上半身をベッドから起こして由美姉に言った。
「由美姉、ぎゅーってして。」
 この言葉に少し驚いている由美姉の体を自分の体に抱き寄せた。最初はただ抱きつかれていた由美姉も両手を私の背中の後ろにまわした。
「今日、告白するって言ってたけど私なんかの所に来てよかったの?ずっと好きだった人なんでしょ?」
 そっと耳元で優しく質問した。
「いいんだよ、それに私なんかなんて言わないでよ、あなたは私の自慢の可愛い妹なんだから、それに告白はまた今度再挑戦するから心配いらないよ。」
 私の質問に優しく柔らかく答えてくれた。
「でも、私だっていつまでも子どもじゃないんだからたまには、頼ってよね?」
「ありがとう、本当に私の自慢の妹だよ、だけど今は早く熱下げていつも通りの元気なあなたに戻ってね」

 一晩寝てからすっかり体調もよくなった私は今日も元気に由美姉と一緒の学校に通学する。これから先、由美姉に彼氏が出来ていつか私にも大事な人が出来たとしてもあの日、由美姉が私のことを自慢の妹と言ってくれたように私にとっても由美姉は自慢のお姉ちゃんで血の繋がりは全く無くて昔から家が隣なだけだけど私たち姉妹の絆はこれからもずっと固いままでいると思う。
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