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あの日出会った二人。
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雨が降る夜の公園のベンチに一人、俯いていた。その姿は、使いふるされた雑巾のようで目は虚ろ。世の中のすべてに絶望しているように見えた。
「ねぇ、大丈夫?こんな所にいたら風邪引いちゃうよ?」
麻夏は、傘を差し出しながら声をかけてみた。遠くから見たのでは、分からなかったが頬や腕、足に無数の痣があるのが目にはいったのだ。あまりの酷さに一瞬、目を背ける麻夏。公園に雨の音だけが鳴り響く。だらり、と垂れた奈々の手首を掴み腕ごと身体を持ち上げて、自分の方に奈々の腕をかけた。
「ほらっ!肩、貸してあげるから、自分で立って」掴まれた腕が痛むのか、表情が少し歪むものの奈々は、依然として脱け殻のように一切、言葉を口にしない。
雨が少し弱まり始めてきた頃に麻夏は、やっとの思いで奈々を連れて来ることができた。
「とりあえず、シャワー浴びておいでよ!タオルと着替えは、用意しておくからさ!」
麻夏は、中半強制的に奈々のを脱衣所へと押し込み、濡れた服を着替えて髪をタオルで乾かしながらソファに座り、一息ついた。しばらく、ゆっくりしてから麻夏は、台所に立って湯を沸かし始めた。すると、シャワーを浴び終えた奈々が肩にタオルをさげたまま出てきた。
「お、お風呂ありがとう。」
奈々は、か細い声で申し訳なさの中に感謝を込めたように呟いた。暗い場所ではよく分からなかったが奈々は、とても麻夏が想像をしていたよりも遥かに可愛らしい見た目をしていた。こうなるとなぜ、雨が降る夜の公園で一人、ベンチに座っていたことや、身体中の痣の正体が気になる。
「すっきりした?」と麻夏は満面の笑みで奈々に声をかけた。麻夏の問いに対して、こくりと首を縦に小さく振って頷いた。
「ココア入れたから飲もうよ!こっちにおいで?」
麻夏は、ソファの左側をポンポンと二度叩き、奈々を自分の横へと招いた。奈々は、引き寄せられるように麻夏の横に座った。しかし、相当疲れていたのか座ったと同時に麻夏の左肩にもたれ掛かり、遊び疲れた子どものようにすっかり深い眠りについてしまった。その様子を母親のように見守っていた麻夏も眠気に勝つことは出来ずに眠りについた。
次の日の朝、麻夏は部屋に広がる味噌汁の香りで目を覚ました。
「あれ、私いつの間に寝ちゃったんだろう」
まだ、起きたばかりで半分寝ぼけた状態で目を擦りながら、奈々が自分の横にいないことに気が付いて慌てて立ち上がると。
「あっ、起きたんだね。勝手にごめんなさい、気持ち良さそうに寝てたから。」と静かな声で奈々がキッチン越しに麻夏に小さな笑顔を向けた。
「そっか良かった、もしかしたら居なくなってたらどうしようってちょっと心配になったから安心したよ!」
奈々がいることが分かった安心感で全身の力が抜けた麻夏は、ソファに腰を掛けて奈々が楽しそうに朝御飯を作ってくれているのを眺めながら声をかけた。
「私も何か、手伝おうか?」
「ううん、大丈夫!もう、出来上がったよ!」
そうして二人で仲良く朝御飯を食べたあと、麻夏は奈々が家族から長い間、暴力を振るわれてきたことを聞いた。震えながら自分の事を話した奈々の身体を麻夏は、そっと優しく包み込み。
「心配しなくていいよ、これからは私が守ってあげるからね?」と奈々の耳元で優しく囁いた。
それから二人は、写真家である麻夏の取材で日本を初めとし世界中を飛び回った。奈々は、菜夏のアシスタントとして二人は、どこでも一緒に旅を続けた。奈々の身体にあった無数の痣も麻夏の友人である医師の村松の所に通院をしてすっかり良くなった。奈々も麻夏と出会った頃と比べると随分と明るくなり笑顔になる回数も増えてきた。
これからも、仲良く世界中を旅して回るのだろう。
「ねぇ、大丈夫?こんな所にいたら風邪引いちゃうよ?」
麻夏は、傘を差し出しながら声をかけてみた。遠くから見たのでは、分からなかったが頬や腕、足に無数の痣があるのが目にはいったのだ。あまりの酷さに一瞬、目を背ける麻夏。公園に雨の音だけが鳴り響く。だらり、と垂れた奈々の手首を掴み腕ごと身体を持ち上げて、自分の方に奈々の腕をかけた。
「ほらっ!肩、貸してあげるから、自分で立って」掴まれた腕が痛むのか、表情が少し歪むものの奈々は、依然として脱け殻のように一切、言葉を口にしない。
雨が少し弱まり始めてきた頃に麻夏は、やっとの思いで奈々を連れて来ることができた。
「とりあえず、シャワー浴びておいでよ!タオルと着替えは、用意しておくからさ!」
麻夏は、中半強制的に奈々のを脱衣所へと押し込み、濡れた服を着替えて髪をタオルで乾かしながらソファに座り、一息ついた。しばらく、ゆっくりしてから麻夏は、台所に立って湯を沸かし始めた。すると、シャワーを浴び終えた奈々が肩にタオルをさげたまま出てきた。
「お、お風呂ありがとう。」
奈々は、か細い声で申し訳なさの中に感謝を込めたように呟いた。暗い場所ではよく分からなかったが奈々は、とても麻夏が想像をしていたよりも遥かに可愛らしい見た目をしていた。こうなるとなぜ、雨が降る夜の公園で一人、ベンチに座っていたことや、身体中の痣の正体が気になる。
「すっきりした?」と麻夏は満面の笑みで奈々に声をかけた。麻夏の問いに対して、こくりと首を縦に小さく振って頷いた。
「ココア入れたから飲もうよ!こっちにおいで?」
麻夏は、ソファの左側をポンポンと二度叩き、奈々を自分の横へと招いた。奈々は、引き寄せられるように麻夏の横に座った。しかし、相当疲れていたのか座ったと同時に麻夏の左肩にもたれ掛かり、遊び疲れた子どものようにすっかり深い眠りについてしまった。その様子を母親のように見守っていた麻夏も眠気に勝つことは出来ずに眠りについた。
次の日の朝、麻夏は部屋に広がる味噌汁の香りで目を覚ました。
「あれ、私いつの間に寝ちゃったんだろう」
まだ、起きたばかりで半分寝ぼけた状態で目を擦りながら、奈々が自分の横にいないことに気が付いて慌てて立ち上がると。
「あっ、起きたんだね。勝手にごめんなさい、気持ち良さそうに寝てたから。」と静かな声で奈々がキッチン越しに麻夏に小さな笑顔を向けた。
「そっか良かった、もしかしたら居なくなってたらどうしようってちょっと心配になったから安心したよ!」
奈々がいることが分かった安心感で全身の力が抜けた麻夏は、ソファに腰を掛けて奈々が楽しそうに朝御飯を作ってくれているのを眺めながら声をかけた。
「私も何か、手伝おうか?」
「ううん、大丈夫!もう、出来上がったよ!」
そうして二人で仲良く朝御飯を食べたあと、麻夏は奈々が家族から長い間、暴力を振るわれてきたことを聞いた。震えながら自分の事を話した奈々の身体を麻夏は、そっと優しく包み込み。
「心配しなくていいよ、これからは私が守ってあげるからね?」と奈々の耳元で優しく囁いた。
それから二人は、写真家である麻夏の取材で日本を初めとし世界中を飛び回った。奈々は、菜夏のアシスタントとして二人は、どこでも一緒に旅を続けた。奈々の身体にあった無数の痣も麻夏の友人である医師の村松の所に通院をしてすっかり良くなった。奈々も麻夏と出会った頃と比べると随分と明るくなり笑顔になる回数も増えてきた。
これからも、仲良く世界中を旅して回るのだろう。
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