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ゆいの日常。
初めて触れた二人。<後編>
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百合菜に唇を奪われてから私の方が、変に意識をしてしまって二週間くらいまともに顔も合わせていない。一体、どんな顔で百合菜に会っていいのかも全然分からないし、なんで百合菜が突然、唇を奪ってきたのかも分からない。でも、もしかしたら百合菜からしたら突然じゃ無かったのかもしれない、だとしたら私は幼馴染としてずっと側にいたのにその気持ちに全く気付いてあげられなかった。こうやって考えが頭の中でグルグル回り続けて、少しずつ自己嫌悪が育っていく気がして世界がどんどん狭くなっていく気がする。もう、自分で自分が分からない。そんな状態で一人、優衣は、放課後の教室で窓の外に広がるオレンジ色に輝く空を眺めていた。教室は少し暖かい空気で満たされた六月の教室。
教室のドアがゆっくりと開く音が教室に響く。優衣は、素早くドアの方に振り返るとそこには、百合菜の姿があった。二人は見つめ合ったまま何も話さずにしばらく時間だけが過ぎていく。教室の窓からドアまでのわずかな距離が心地よくもあり同時に気まずくもある。手を伸ばして届く距離でもなくかといって手を振って挨拶をするほどの距離でもない。それに最近、二人はお互いを意識してしまっているから余計、相手に言葉を掛けずらい状態にある。しかし、その気持ちの中に嫌悪の類の感情は一切ないが、ただ何を話していいのか分からない。それは、相手を尊重しているからこそ生まれる感情なのかもしれない。しかし、時間が過ぎるほどに口は重く固くなっていく。しかし、重い沈黙を破るように百合菜が口を開く。
「優衣、まだ帰って無かったんだね。」
「うん、百合菜は?まだ帰らないの?」二週間ぶりに交わした会話は、ごく自然な間と内容だった。
「うん、実は優衣に話があってさ。」そう言いながら一歩ずつ優衣の方へと近づいてくる百合菜。優衣は、その場を動かずに百合菜が近づいてくるのを見ている。
「私に話って何?」自分の目の前まで来た百合菜に純粋に質問をする。目の前にいる百合菜は、今までに見たことの無い真剣な顔をしている。その表情から伝わってくる緊張感で優衣は、少し背筋を正した。
「この間は、ごめんね、急にあんなことして。」
「うん。」
「あの時、私が言ったこと覚えてる?」
「私の事が好きってこと?」百合菜の質問に答えながら、ロッカーでの出来事を思い返して優衣は、少し俯きながら質問に答えた。自分が意識していた事について改めて聞かれると余計に意識をしてしまいさらに気まずい空気が二人の間に流れる。
「優衣って好きな人とかいるの?」百合菜から優衣に発せられたあまりに唐突な質問に優衣は動揺を隠すことに必死だった。
「百合菜の事は、好きだよ!」
「うん、ありがとう。」優衣の返答に対して優しく微笑みかける百合菜の瞳は、心の奥で何か他にも優衣に対して伝えたいことがあるような瞳をしていた。
「私も、もちろん優衣のことは好きなんだけど、前に言った片想いの相手っていうのは優衣のことじゃないの。」
「えっ?」あまりに意外だった。自分の事が好きだと思っていた幼馴染の本当の気持ちは、自分の完全なる思い違いだった。あの日、唇を奪ったことの真意は一体何なのかという大きな疑問が心の中に生まれた。
「渡邊さんって知ってる?」最近、聞き覚えのある名前だった。数日前の夕立の日に一緒に帰ったクラスメイトだ。密かに憧れていた優衣にとっては、最近の出来事の中でも楽しい思い出の一つだ。
「うん、知ってるよ、同じクラスのいつも読書してる人だよね?」
「そう、いつも静かでクールな人。」
「その、渡邊さんがどうかしたの?」
「私の片想いの相手って渡邊さんなんだ。」いくつか言葉を交わしている間になんとなくそうではないかと感じ取っていた優衣は、その気持ちが百合菜にバレてはいけないような気がした。
「へぇ、そうなんだ。」
「優衣って渡邊さんと仲良いの?」
「えっ?私?」
「何日か前の夕立の日に駅前で相合傘してるの見ちゃったんだよね。」その言葉と同時に百合菜の表情が恐ろしく冷静になった。今までに見たことの無いその表情に何故か恐ろしさを感じて背筋が凍りついた。額からは、冷や汗が垂れてくるのも感じた。
「いや、あれはたまたま、渡邊さんの好意で、、。」
「渡邊さん、すごく楽しそうに笑ってた、あんな笑顔見たことない。」
「ごめん、百合菜が渡邊さんの事が好きなんて知らなかったから。」
「私が、告白した時に別に好きな人がいるからって言ってたけど、優衣は、渡邊さんと付き合ってるわけじゃないんだよね?」両目を見開いて優衣の両肩を掴みながら低い声で問いかけてきた百合菜からは、禍々しい何かを感じた優衣は、手を振りほどいて後ろに少し距離をとった。
「どうしたの?百合菜、なんか変だよ?いつもの百合菜じゃないみたい!」優衣のその言葉は、一切届いていない様子だった。
「優衣のことはずっと親友だと思ってたのに、私の渡邊さんを勝手にとるなんて!!いくら優衣でも、許せないっ!」百合菜は、完全に冷静さを失い常軌を逸していた。目の前にいるのが自分の知っている幼馴染だと、信じることが出来ない程にまさに豹変していた。しかし、今ここで背を向けて逃げることにも危険を感じて微動だに出来ない。
「あれ?優衣じゃん!まだ、帰って無かったのか!」教室に何か用があったのか綾香が教室に入ってきた。百合菜と優衣の間に流れる微妙な空気と優衣の不安に怯えている表情と態度を素早く感じ取った綾香。
「あれ?二人、お取込み中だった?」笑顔で二人をからかう様に綾香は言った。その言葉によって百合菜と優衣との間に少しだけ隙が出来た。綾香が作り出したその、一瞬の隙を優衣は、見逃さなかった。
「佐々木さん、助けてっ!」咄嗟に出た一言だった。そこからの綾香の行動はとても素早かった。瞬時に優衣に近づき手を引いてすぐに教室を飛び出して走り出した。優衣は、綾香に引かれるままに走った。今は、何も考えることが出来ない。
教室に一人取り残された、百合菜の頬には涙が一筋。自分の大切な幼馴染を傷つけてしまった事と、優衣が自分に恐れを感じていたことを考えるとなぜだか涙が垂れてきた。
「自分の事を大切に思っている人に対して恐怖を感じさせたらダメだよ。」廊下で一連の流れを見ていたのか、里佐が一言、百合菜に言葉を投げる。その言葉に、百合菜は膝から崩れ落ちた。
教室のドアがゆっくりと開く音が教室に響く。優衣は、素早くドアの方に振り返るとそこには、百合菜の姿があった。二人は見つめ合ったまま何も話さずにしばらく時間だけが過ぎていく。教室の窓からドアまでのわずかな距離が心地よくもあり同時に気まずくもある。手を伸ばして届く距離でもなくかといって手を振って挨拶をするほどの距離でもない。それに最近、二人はお互いを意識してしまっているから余計、相手に言葉を掛けずらい状態にある。しかし、その気持ちの中に嫌悪の類の感情は一切ないが、ただ何を話していいのか分からない。それは、相手を尊重しているからこそ生まれる感情なのかもしれない。しかし、時間が過ぎるほどに口は重く固くなっていく。しかし、重い沈黙を破るように百合菜が口を開く。
「優衣、まだ帰って無かったんだね。」
「うん、百合菜は?まだ帰らないの?」二週間ぶりに交わした会話は、ごく自然な間と内容だった。
「うん、実は優衣に話があってさ。」そう言いながら一歩ずつ優衣の方へと近づいてくる百合菜。優衣は、その場を動かずに百合菜が近づいてくるのを見ている。
「私に話って何?」自分の目の前まで来た百合菜に純粋に質問をする。目の前にいる百合菜は、今までに見たことの無い真剣な顔をしている。その表情から伝わってくる緊張感で優衣は、少し背筋を正した。
「この間は、ごめんね、急にあんなことして。」
「うん。」
「あの時、私が言ったこと覚えてる?」
「私の事が好きってこと?」百合菜の質問に答えながら、ロッカーでの出来事を思い返して優衣は、少し俯きながら質問に答えた。自分が意識していた事について改めて聞かれると余計に意識をしてしまいさらに気まずい空気が二人の間に流れる。
「優衣って好きな人とかいるの?」百合菜から優衣に発せられたあまりに唐突な質問に優衣は動揺を隠すことに必死だった。
「百合菜の事は、好きだよ!」
「うん、ありがとう。」優衣の返答に対して優しく微笑みかける百合菜の瞳は、心の奥で何か他にも優衣に対して伝えたいことがあるような瞳をしていた。
「私も、もちろん優衣のことは好きなんだけど、前に言った片想いの相手っていうのは優衣のことじゃないの。」
「えっ?」あまりに意外だった。自分の事が好きだと思っていた幼馴染の本当の気持ちは、自分の完全なる思い違いだった。あの日、唇を奪ったことの真意は一体何なのかという大きな疑問が心の中に生まれた。
「渡邊さんって知ってる?」最近、聞き覚えのある名前だった。数日前の夕立の日に一緒に帰ったクラスメイトだ。密かに憧れていた優衣にとっては、最近の出来事の中でも楽しい思い出の一つだ。
「うん、知ってるよ、同じクラスのいつも読書してる人だよね?」
「そう、いつも静かでクールな人。」
「その、渡邊さんがどうかしたの?」
「私の片想いの相手って渡邊さんなんだ。」いくつか言葉を交わしている間になんとなくそうではないかと感じ取っていた優衣は、その気持ちが百合菜にバレてはいけないような気がした。
「へぇ、そうなんだ。」
「優衣って渡邊さんと仲良いの?」
「えっ?私?」
「何日か前の夕立の日に駅前で相合傘してるの見ちゃったんだよね。」その言葉と同時に百合菜の表情が恐ろしく冷静になった。今までに見たことの無いその表情に何故か恐ろしさを感じて背筋が凍りついた。額からは、冷や汗が垂れてくるのも感じた。
「いや、あれはたまたま、渡邊さんの好意で、、。」
「渡邊さん、すごく楽しそうに笑ってた、あんな笑顔見たことない。」
「ごめん、百合菜が渡邊さんの事が好きなんて知らなかったから。」
「私が、告白した時に別に好きな人がいるからって言ってたけど、優衣は、渡邊さんと付き合ってるわけじゃないんだよね?」両目を見開いて優衣の両肩を掴みながら低い声で問いかけてきた百合菜からは、禍々しい何かを感じた優衣は、手を振りほどいて後ろに少し距離をとった。
「どうしたの?百合菜、なんか変だよ?いつもの百合菜じゃないみたい!」優衣のその言葉は、一切届いていない様子だった。
「優衣のことはずっと親友だと思ってたのに、私の渡邊さんを勝手にとるなんて!!いくら優衣でも、許せないっ!」百合菜は、完全に冷静さを失い常軌を逸していた。目の前にいるのが自分の知っている幼馴染だと、信じることが出来ない程にまさに豹変していた。しかし、今ここで背を向けて逃げることにも危険を感じて微動だに出来ない。
「あれ?優衣じゃん!まだ、帰って無かったのか!」教室に何か用があったのか綾香が教室に入ってきた。百合菜と優衣の間に流れる微妙な空気と優衣の不安に怯えている表情と態度を素早く感じ取った綾香。
「あれ?二人、お取込み中だった?」笑顔で二人をからかう様に綾香は言った。その言葉によって百合菜と優衣との間に少しだけ隙が出来た。綾香が作り出したその、一瞬の隙を優衣は、見逃さなかった。
「佐々木さん、助けてっ!」咄嗟に出た一言だった。そこからの綾香の行動はとても素早かった。瞬時に優衣に近づき手を引いてすぐに教室を飛び出して走り出した。優衣は、綾香に引かれるままに走った。今は、何も考えることが出来ない。
教室に一人取り残された、百合菜の頬には涙が一筋。自分の大切な幼馴染を傷つけてしまった事と、優衣が自分に恐れを感じていたことを考えるとなぜだか涙が垂れてきた。
「自分の事を大切に思っている人に対して恐怖を感じさせたらダメだよ。」廊下で一連の流れを見ていたのか、里佐が一言、百合菜に言葉を投げる。その言葉に、百合菜は膝から崩れ落ちた。
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