青い月にサヨナラは言わない

Cerezo

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EP2 卵に潜む悪意8 青い月を見上げて

不安な夜に3(事後描写あり)

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「はーっ……はーっ……」
「はふ……らて、あ。気持ちよかった……」

 互いに荒い息をつき、ぐったりと脱力する。汗だくでシャツが身体に張り付いて気持ちが悪い。
 しかし、それでも出すものを出したことでスッキリはしていた。この感覚、いつぶりだろう。思い出せないくらいに昔な気がする。

「……」

 夏輝の掌にべったりとついた互いの精液。正直、俺のものは口に入れたくない。でも夏輝の精液は……。
 不安は今は全く感じないけれど、勿体ない気がして。

「はむ、れろ……」

 多少なり息を整えてから俺はふき取ろうとティッシュに手を伸ばした法とは反対のべったりと精液のついた手に舌を伸ばす。

「あ”っ……!」

 夏輝は雷でも浴びたみたいに目を見開き硬直して動かなくなる。
 そんな夏輝をしり目に俺は一本一本丁寧に付着した精液を舐めとっていく。
 ぴちゃ、ぺちゃ。濡れた音が再び部屋に響く。手だけでなく太ももや腹についた精液も丁寧に。全てなめとった後一息つく。
 すると夏輝は相変わらずゆでだこみたいな顔をして、ぱくぱくと池で餌を強請る鯉みたいに口を開閉していた。なんとも情けないツラだ。
 ……さっきの俺も人の事ぜってえ言えねえけど。それはそれと棚上げしておく。

「ぢゅっ……なんだよ」

 全て綺麗に舐めとってから聞けば、夏輝は伏し目がちにこちらをちらちらと見ながら口を開く。

「その……マズくないの?絶対マズいと思うんだけど」
「お前のはマズくない。俺のは最悪」
 
 率直な感想だ。俺の魂の希薄部分が他人の情報を渇望しているのか、自分自身の精液は正直言って口に入れたくないレベルのものだった。青臭いし。
 本当に不思議なものだ。……遠呂が言うには力を借りるたびに起こると言われていた。対処療法だと。

(夏輝が嫌じゃなきゃ……俺は嫌じゃないし。夏輝だから。別の奴とか絶対無理だけど)

 とにかく顔が熱い。

「窓開けていい?熱い……」
「ん、いいよ」

 部屋は真っ暗で、俺は夏輝の顔を見ることができるが夏輝はいくら目が慣れたとはいえあまり見えないだろう。そのことに少しだけ安堵する。
 窓を開けると爽やかな春風がざあっと入ってきた。
 空にはコンクリートジャングルに瞬く星は鈍く輝く。黄色い月と青い月。俺の故郷、エデン。遠いなあ。
 でも、前よりはずっと見ていて苦しくない。今が割と満たされているからかもしれない。

(……じいちゃん、元気にしてるかな?あいつもちゃんとやってるといいんだけど)

 故郷に想いを馳せる。

「ラテア?」

 狭い部屋だから、すぐ後ろの夏輝から案ずるような声が聞こえた。ハっとして振り返る。

「んむ」

 勢いよく振り返ったからか、すぐ背後に夏輝がいることに気づかなかった。唇に感じるふにっとした柔らかな感触。
 目の前には夏輝の顔しかない。夏輝にキスをされたのだ。
 別になんてことはない、ほんの一瞬触れるだけのキスと言えないようなキスだ。

「あ、ごめん……!つ、つい」

 夏輝自身も意図せずやったのか、あわあわと慌てているようだった。

「お、おう。とりあえず明日もあるし……寝るか。決戦は日曜日なんだ、し……」
「そ、そうだね」

 目を合わせられず、俺たちは互いにちょっとだけズレたところを見ていた。だって、こういう時どうしたらいいかわからない。
 ロセやアレウならわかったのかも、しれないけど。

「なあ」

 夏輝がいそいそとベッドに入ったところで、俺は少し迷ってから声をかけた。

「ん、どうしたの?ラテア」
「一緒に寝ていいか?」

 今日は特にくっついて寝たい気分なのだ。きっと魂が希薄だったことにまだ引きずられているんだろう。そう思っておくことにする。

「いいよ、おいで」

 夏輝は拒むことなく狭いだろうに、端っこによって俺のスペースを開けてくれた。

「ん。ありがと」

 潜り込むと布団の中はまだまだ温かった。俺は夏輝の懐に入り込みそのまま目を閉じる。とくとくとく、と普段よりも早い鼓動の音が鼓膜に響く。
 多分、夏輝だけじゃなくって俺自身も。

(……俺は、夏輝の事が好きなんだろうか)

 狭いがゆえに背後から夏輝がおずおずと俺の前に手を回す。寝床に入り込んでいるのは俺の方だし、嫌ではなかったのでされるがままに抱きしめられる。
 身体を密着させながら、俺は考えていた。けれど、すぐに睡魔が襲ってくる。まあ出すもんだしたし、男なんてそんなもんだ。
 くぁ……と一つ大あくびし、睡魔に身を任せ目を閉じる。
 願わくば、今回も皆死にませんように。
 勅使河原の目的は生物の多様性、進化。そうは言われても下々の者である俺達にはイマイチピンとこない。
 一体何故そんな目的を持つようになったのだろう。
 どんな高尚な目的を持っていようと、他人の命で実験なんてしていいわけもないしあんなテロ行為を起こしていいわけもない。
 俺達が止めに来ることなんて百も承知だろう。奏太やあの黒狐ともまた戦うことになるだろう。
 日曜日は間違いなく死闘になる。

(もっと、強くなりてえな……)

 己の無力さを嘆くことは、もうしたくはなかった。

『大丈夫、わたくしの名前を必要な時に呼んでくださいまし。わたくしの力は貴方の力。それはあなたの魂の資質によるもの。頑張って使いこなしてくださいましね』


 




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