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EP3 復讐の黄金比7 決死隊
砂は砂に
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流石に再度氷の盾を紡ぐには短すぎる間。瑞雪が来るだろう衝撃と激痛に備えようとするが、トツカが瑞雪の首根っこを掴み抱き込み、土の壁を展開。
刹那、凄まじい爆音と爆風に晒される。が、身体が引きちぎれて臓物が飛び出るほどではない。
「朝陽との戦闘経験が生きたな……っ」
「……悪い、助かった」
頭部からだらだらと血を流すトツカ。瑞雪は彼に抱き込まれたおかげで無事だった。
素直に礼を言うと、嬉しそうに一つ頷く。立ち上がり、抱いたまま走り出す。もはや慣れたものだ。
「傷は?」
「浅い、問題ない」
鎧を錬成しながら、トツカが走る。
「お前の魔法と似ている。やはり栗毛のあいつは土魔法で銃を錬成しているのか」
トツカに抱えられている分、魔法の詠唱に集中できる。
……情けない体勢ではあるのだが。
魔法をいくつも紡ぎつつ、トツカの先程の防御魔法を見て確信した瑞雪はそう言葉を口にする。
「おうおう、ご名答だ!まあそりゃわかるよな。創ってるところ見られてなくてもさ」
最早隠す必要もないとばかりに冬真は叫ぶ。そしてこれ見よがしに目の前でコンクリートの壁から銃を生み出して見せる。
「トツカ、土魔法はあんな風に万能なのかっ!?」
「そのようなことはない。構造をしっかりと知らないものは創れない。俺が鎧を創れるのはその成分や構造を俺が熟知しているからだ」
構造と成分を知らなければ創造出来ない。このルールが土魔法使い全てに共通するというのなら、冬真は重火器の成分、構造を熟知しているということになる。
「……日本でよくもそんなもんを」
「そりゃこっちのセリフだぜ?魔法と銃、何が違う?むしろ銃なんかを撃つよりもお前の魔法の方がよっぽど簡単に人をぶっ殺せると思うがなぁ!」
思わず漏らした言葉はどうやら冬真に聞かれていたようだった。
トツカが夜一の襲撃をいなしつつ、ハチの巣にならないようにと走り抜ける。冬真の銃弾は夜一ごと貫いていくが、夜一は予測していたのかそれらすべてを自らの身体を透過させ無傷でやり過ごしていく。
あの二人はコンビを組んで長いのだろう。互いの戦い方を知り尽くしているようだった。なにせバイクにすら一発も入っていないのだ。
「雷、雷、雷ッ……!くそったれめ」
瑞雪は銃弾を全て何とか雷で消し飛ばす。しかし、それ以上の行動に移れない。
一方の冬真は銃を撃ち尽くしては捨て、撃ち尽くしては捨てを繰り返す。捨てた銃はすぐにさらさらと砂へと還る。
「……ここまで手早く錬成を繰り返すって、どんだけだよっ」
「なぁに、百回、二百回、千回、一万回と繰り返せばいやでもできるようになるさ。お前もやってみる?組み立てては解体し、組み立てては解体し、成分を一言一句間違えずに暗記する。もともと魔法を使う機能が備えられている強い種族のエデン人や、才能のある奴は知らんが、泥水啜ってでも生きてるような底辺はやるしかないだろう」
祖父の認めた、あるいは組織の恩恵を受ける羊飼い以外は皆そんなものだ。日本で生きる以上は、少なくとも。
「別の生き方ができりゃそれが一番だが、そうできない……できなくされた奴はこうするしかない。そうだろう?エデン人どころか地球人だろうが動物だろうが何だろうがあいつらは使うんだからさ」
にこりと冬真が嗤う。しかし、その瞳はどろりと濁っていた。
その目は酷く悍ましく、不気味で何も映していないように遠目から見ても感じられた。
御絡流の会がエデン人にとって害があるのは当然のこと、地球人にとって益になっているかと言えばそうではない。
映画や漫画なんかで言えば、組織は間違いなく悪に他ならないだろう。きっと、目の前の男も不利益をーそれも相当なものを被ったのだろう。
その組織に反逆せず飼われている時点で彼らの憎しみをぶつけられる対象であることは必然なのだ。たとえ瑞雪が何を考えていようとも。
「みんな死ねって思うだろ?俺は思うね!」
ケタケタと笑うそのさまは狂気的とすら思えた。
「金の為だけど、ついでにお前らに嫌がらせが出来るなら上等な仕事じゃないか。いや、やっぱ嘘。糞だな。まあなんにせよ、死にたくても生きるしかないんだから、それならいっそ腹いせに大暴れ出来る仕事の方が楽しいじゃあないか」
「なんっつう最低な理由だよ……!」
「始めたのはそっちだろ?いや、正しくはお前らン所のボスだが」
新たに創り出したミニガンを重そうに構える冬真。創れる武器のレパートリーはどれだけあるのだろう。
銃の乱射。トツカが走りながら土壁を創りマシンガンの熱い抱擁を全て受け止める。
壁と流れ弾を食らった道路が哀れなほどに穴あきになる。アニメに出てくるネズミの好むチーズみたいだった。
「まあ~。冬真はいつもそうだから。俺の事も忘れないでよね~」
一つを防げば次の手がやってくる。瑞雪とトツカよりもはるかに手馴れている連携。
気づけばバイクが上から落ちてきて、二人を押しつぶそうとしている始末だ。
瑞雪が氷の盾を即座に上空に展開。
しかし、強度が足りずパリンと一瞬で砕けてしまう。
「攻撃魔法の圧に比べて随分とそっちはお粗末だな?」
「お前こそ、重力魔法の方は全然使ってこないじゃねえかよ」
破片が皮膚に突き刺さる。しかし、一瞬稼いだ間でトツカは強化された脚力をもってバイクの落下範囲から離脱。
かろうじてその巨大な質量に押しつぶされずに済む。
「むぅ……瑞雪、首無し騎士の方に俺の刀を叩きこんでもかわされる。あの魔法は面倒だ」
「あいつらどっちもクッソ面倒だよ……!」
トツカのボヤきに瑞雪はため息をつく。
トツカは真正面からの戦いを好んでいるのだろうが、そんな馬鹿正直に勝負に付き合ってくれるものなどそう多くはないだろう。
不意に、思いついたようにトツカは口を開く。
「瑞雪、俺が全て攻撃を防ぐ。お前は攻撃することに集中してくれ」
「可能か?」
「お前が信じてくれれば。付喪神とはそういうものだ。その間にお前が焼き尽くしてくれ」
自信満々に言い切ることはいい事だ。こういう時は特に。
少なくともネガティブであるよりかはいくらか気が楽だし、結局やらないことには活路は開けない。
「……わかった」
トツカの申し出に瑞雪は頷く。早く片付けなければ先に進めないのだから。
刹那、凄まじい爆音と爆風に晒される。が、身体が引きちぎれて臓物が飛び出るほどではない。
「朝陽との戦闘経験が生きたな……っ」
「……悪い、助かった」
頭部からだらだらと血を流すトツカ。瑞雪は彼に抱き込まれたおかげで無事だった。
素直に礼を言うと、嬉しそうに一つ頷く。立ち上がり、抱いたまま走り出す。もはや慣れたものだ。
「傷は?」
「浅い、問題ない」
鎧を錬成しながら、トツカが走る。
「お前の魔法と似ている。やはり栗毛のあいつは土魔法で銃を錬成しているのか」
トツカに抱えられている分、魔法の詠唱に集中できる。
……情けない体勢ではあるのだが。
魔法をいくつも紡ぎつつ、トツカの先程の防御魔法を見て確信した瑞雪はそう言葉を口にする。
「おうおう、ご名答だ!まあそりゃわかるよな。創ってるところ見られてなくてもさ」
最早隠す必要もないとばかりに冬真は叫ぶ。そしてこれ見よがしに目の前でコンクリートの壁から銃を生み出して見せる。
「トツカ、土魔法はあんな風に万能なのかっ!?」
「そのようなことはない。構造をしっかりと知らないものは創れない。俺が鎧を創れるのはその成分や構造を俺が熟知しているからだ」
構造と成分を知らなければ創造出来ない。このルールが土魔法使い全てに共通するというのなら、冬真は重火器の成分、構造を熟知しているということになる。
「……日本でよくもそんなもんを」
「そりゃこっちのセリフだぜ?魔法と銃、何が違う?むしろ銃なんかを撃つよりもお前の魔法の方がよっぽど簡単に人をぶっ殺せると思うがなぁ!」
思わず漏らした言葉はどうやら冬真に聞かれていたようだった。
トツカが夜一の襲撃をいなしつつ、ハチの巣にならないようにと走り抜ける。冬真の銃弾は夜一ごと貫いていくが、夜一は予測していたのかそれらすべてを自らの身体を透過させ無傷でやり過ごしていく。
あの二人はコンビを組んで長いのだろう。互いの戦い方を知り尽くしているようだった。なにせバイクにすら一発も入っていないのだ。
「雷、雷、雷ッ……!くそったれめ」
瑞雪は銃弾を全て何とか雷で消し飛ばす。しかし、それ以上の行動に移れない。
一方の冬真は銃を撃ち尽くしては捨て、撃ち尽くしては捨てを繰り返す。捨てた銃はすぐにさらさらと砂へと還る。
「……ここまで手早く錬成を繰り返すって、どんだけだよっ」
「なぁに、百回、二百回、千回、一万回と繰り返せばいやでもできるようになるさ。お前もやってみる?組み立てては解体し、組み立てては解体し、成分を一言一句間違えずに暗記する。もともと魔法を使う機能が備えられている強い種族のエデン人や、才能のある奴は知らんが、泥水啜ってでも生きてるような底辺はやるしかないだろう」
祖父の認めた、あるいは組織の恩恵を受ける羊飼い以外は皆そんなものだ。日本で生きる以上は、少なくとも。
「別の生き方ができりゃそれが一番だが、そうできない……できなくされた奴はこうするしかない。そうだろう?エデン人どころか地球人だろうが動物だろうが何だろうがあいつらは使うんだからさ」
にこりと冬真が嗤う。しかし、その瞳はどろりと濁っていた。
その目は酷く悍ましく、不気味で何も映していないように遠目から見ても感じられた。
御絡流の会がエデン人にとって害があるのは当然のこと、地球人にとって益になっているかと言えばそうではない。
映画や漫画なんかで言えば、組織は間違いなく悪に他ならないだろう。きっと、目の前の男も不利益をーそれも相当なものを被ったのだろう。
その組織に反逆せず飼われている時点で彼らの憎しみをぶつけられる対象であることは必然なのだ。たとえ瑞雪が何を考えていようとも。
「みんな死ねって思うだろ?俺は思うね!」
ケタケタと笑うそのさまは狂気的とすら思えた。
「金の為だけど、ついでにお前らに嫌がらせが出来るなら上等な仕事じゃないか。いや、やっぱ嘘。糞だな。まあなんにせよ、死にたくても生きるしかないんだから、それならいっそ腹いせに大暴れ出来る仕事の方が楽しいじゃあないか」
「なんっつう最低な理由だよ……!」
「始めたのはそっちだろ?いや、正しくはお前らン所のボスだが」
新たに創り出したミニガンを重そうに構える冬真。創れる武器のレパートリーはどれだけあるのだろう。
銃の乱射。トツカが走りながら土壁を創りマシンガンの熱い抱擁を全て受け止める。
壁と流れ弾を食らった道路が哀れなほどに穴あきになる。アニメに出てくるネズミの好むチーズみたいだった。
「まあ~。冬真はいつもそうだから。俺の事も忘れないでよね~」
一つを防げば次の手がやってくる。瑞雪とトツカよりもはるかに手馴れている連携。
気づけばバイクが上から落ちてきて、二人を押しつぶそうとしている始末だ。
瑞雪が氷の盾を即座に上空に展開。
しかし、強度が足りずパリンと一瞬で砕けてしまう。
「攻撃魔法の圧に比べて随分とそっちはお粗末だな?」
「お前こそ、重力魔法の方は全然使ってこないじゃねえかよ」
破片が皮膚に突き刺さる。しかし、一瞬稼いだ間でトツカは強化された脚力をもってバイクの落下範囲から離脱。
かろうじてその巨大な質量に押しつぶされずに済む。
「むぅ……瑞雪、首無し騎士の方に俺の刀を叩きこんでもかわされる。あの魔法は面倒だ」
「あいつらどっちもクッソ面倒だよ……!」
トツカのボヤきに瑞雪はため息をつく。
トツカは真正面からの戦いを好んでいるのだろうが、そんな馬鹿正直に勝負に付き合ってくれるものなどそう多くはないだろう。
不意に、思いついたようにトツカは口を開く。
「瑞雪、俺が全て攻撃を防ぐ。お前は攻撃することに集中してくれ」
「可能か?」
「お前が信じてくれれば。付喪神とはそういうものだ。その間にお前が焼き尽くしてくれ」
自信満々に言い切ることはいい事だ。こういう時は特に。
少なくともネガティブであるよりかはいくらか気が楽だし、結局やらないことには活路は開けない。
「……わかった」
トツカの申し出に瑞雪は頷く。早く片付けなければ先に進めないのだから。
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