35 / 37
34 雅紀と智明
しおりを挟む
三津総合病院へ配達に訪れた智明。
自転車を停め裏口に向かおうとしたところ、正面玄関前で戸惑っている様子の男性に気が付く。
見舞客だろうか、土日は正面口が封鎖されていることを知らないのかもしれない。
「あの、今日、日曜なので正面からは入れないですよ」
智明がその旨を伝えるべく近付くと、その男性は以前病院で見かけた、雅紀と名乗る青年であった。
「あ、そうなの?」
雅紀は智明の言葉を受け、困ったな、と首を擦る。
「土日は裏口から入れますよ。ほら、あそこに見える入り口です。お見舞いですか? えっと、雅紀さん?」
智明は裏口の方向を指差し説明をする。
すると、雅紀は視線を智明に向けたまま、驚愕の表情を浮かべてみせた。
「あ、すみません名前勝手に。この間受付で貴方が病院の人とかと話している場に僕も偶々いて。つい口から出てしまいました」
と、言っても、あまり良い印象ではなかったのだが。
そういった理由で名前を憶えていた節もある。
「今……俺の名前……」
雅紀は固まった表情のまま口を開く。
「あれ? 違いました?」
「違う、そうじゃなくて、雅紀って言ったよな? 俺の名前は樋口雅紀だ。もしかして俺の名前、ちゃんと聞こえているのか?」
雅紀の予想外の反応を受け、やはりおかしな人なのかと、智明は苦手意識を強くする。
「聞こえていますけど……。樋口雅紀さんですよね? それがどうかしましたか」
智明は雅紀に声を掛けたことを、徐々に後悔し始める。
「君にお願いがある! 俺の話を聞いてくれないか!」
智明の懐疑的な目に気付かぬまま、雅紀は智明の肩を両手で掴むと、勢いよく身を乗り出した。
「……はい?」
自転車を停め裏口に向かおうとしたところ、正面玄関前で戸惑っている様子の男性に気が付く。
見舞客だろうか、土日は正面口が封鎖されていることを知らないのかもしれない。
「あの、今日、日曜なので正面からは入れないですよ」
智明がその旨を伝えるべく近付くと、その男性は以前病院で見かけた、雅紀と名乗る青年であった。
「あ、そうなの?」
雅紀は智明の言葉を受け、困ったな、と首を擦る。
「土日は裏口から入れますよ。ほら、あそこに見える入り口です。お見舞いですか? えっと、雅紀さん?」
智明は裏口の方向を指差し説明をする。
すると、雅紀は視線を智明に向けたまま、驚愕の表情を浮かべてみせた。
「あ、すみません名前勝手に。この間受付で貴方が病院の人とかと話している場に僕も偶々いて。つい口から出てしまいました」
と、言っても、あまり良い印象ではなかったのだが。
そういった理由で名前を憶えていた節もある。
「今……俺の名前……」
雅紀は固まった表情のまま口を開く。
「あれ? 違いました?」
「違う、そうじゃなくて、雅紀って言ったよな? 俺の名前は樋口雅紀だ。もしかして俺の名前、ちゃんと聞こえているのか?」
雅紀の予想外の反応を受け、やはりおかしな人なのかと、智明は苦手意識を強くする。
「聞こえていますけど……。樋口雅紀さんですよね? それがどうかしましたか」
智明は雅紀に声を掛けたことを、徐々に後悔し始める。
「君にお願いがある! 俺の話を聞いてくれないか!」
智明の懐疑的な目に気付かぬまま、雅紀は智明の肩を両手で掴むと、勢いよく身を乗り出した。
「……はい?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる