黒髪が王族の証という異世界に転移しました、自重は致しません。

クレハ

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三章

セドの心(セドside)

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セドside


その日はなんてこと無い一日だった

ギルドで依頼を受けて森にイサギさんとレオンと一緒にグランドホーンを討伐するだけだった。

なのに今俺達は襲撃されて俺は毒矢をくらってイサギさんやレオンの足を引っ張っている。

この装備を貫通したということは呪いの武器

だからイサギさんは解毒薬を使わずにレオンの光魔法を頼ったんだ。

「グズッ、ヒック、セド...っ、だ、だいじょぶ...っ?」

「ああ、っ、ありがとうな、レオン。レオンのおかげで良くなったよ」

それにいつまでもこんな所で寝てられない

イサギさんが敵の気を引いているうちに少しでも動けるようにならないと!

そうしている内にレオンの治療が終わった

うん、大丈夫、レオンを守れる程度には回復した

「レオン!治療は終わったか!?」

とイサギさんの声が聞こえてきた

「ん!」

とレオンが返事をする

「セド!すまない、動けるならレオンと一緒に戦ってくれ!」

「っ!うん!本調子ではないけどレオンを守る位は役に立つよ!」

俺はイサギさんに心配かけないように返事をする

そうして一人だけイサギさんの方へ、残りの奴等は俺とレオンの方にと別れ戦闘が始まった






ガキンッ!

「フッ!セイッ!」

「星ぼしに願い奉る、我求めるは流星、貫け!」

レオンが得意とする広範囲天体魔法だ

空から星の光が降り注ぎ、敵の三分の一をやっと戦闘不能にできたが、本来ならこの魔法は確実に敵を仕留められる威力のある魔法のはず...

と言うことは敵は今のレオン以上に手練れだと言うことだ。

決定打にかける

俺も剣で相手をいなすのが精一杯だ

クレバー団長程強くはないが、相手は相当場数を踏んでいる、言わば対人戦においてのプロ

どうしたらっ

そう考えながら相手の剣をいなしているとレオンの防御をかいかぐりレオンが斬られそうになっていた

「レオン!」

ギイィィイインッ!

「はぁっ、はぁっ、大丈夫かレオン!?」

レオンは地面に尻餅をつき、肩で息をしていた

「...ん。」

こっちも限界だな...

そう思いながらレオンを守る為にレオンには支援魔法を頼み、俺が攻撃する為一歩前にでた時




「やめろーーーっ!!!!!セド!レオン!」

イサギさんの叫び声に俺とレオンは咄嗟にイサギさんの方を向くとイサギさんが相手をしていた奴が此方に向かって来ているのがスローモーションに見えた。

ザンッ!!!

ブシューーーッ!!!

今俺の目の前にある背中は誰の背中?

頬にかかった生暖かい液体は?

膝から崩れ落ちるこの人は誰?

俺の腕の中にいるこの人はどうして口からゴポリと血を吐き出しながらピクリとも動かない?

右肩から左横腹にかけて大きくて深い傷から流れ落ちる血は誰の血?

レオンは泣き叫びながら誰の名前を呼んでいるの?

走馬灯のようにイサギさんの顔や笑い声、共に過ごした日々がぶわりとよみがえる

「あ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」

その時俺の中に眠っていた“何か”か決壊した。

自ずと使い方はわかっていた

俺は眼の前にいるすべての“敵”を目視し

「潰れろ」

そう言うとその場の重力がずんっと重くのしかかり、敵は皆地面にめり込んだ

そしてその場は血の匂いでむせ返る

この光景を無感情に、そして虚ろに見渡していたら

俺の腕の中にいるイサギさんにレオンが必死に光魔法で治療を施していた

「グスッ、おに...ちゃ!ヤダ!しなな...で!」

死ぬ?イサギさんが...?

嘘だろ?この人が死ぬのか...?

いつだって明るくて

いつだって頼りになって

いつだって励ましてくれて

いつだって強い

この人、死ぬの?

「嫌だよ、イサギさん、死ぬの?俺とレオンを置いて逝っちゃうの?」

「おにいちゃ...!ヤダ!死ぬの、やっ!治す、なお...すから!っ、がんばっ...て!」

チャリっと耳に揺れるダイヤモンドのピアス

イサギさんがくれた宝物

俺は無意識にそのピアスをそっと撫でる

イサギさん、イサギさん、イサギさん...

「ゴボッ、ゲホッ、レ...オ、セドっ...」

その声にハッとして俺とレオンはイサギさんの方を見る

「イサギさんっ!」

「お兄ちゃん!」

「二人とも、...けが...な...い?」

俺とレオは必死に首を縦に振る

「暫く...ねむ...る。しん...ぱ、しな...で」

そう言うとイサギさんはそっと目を閉じ、眠りについた

先程の戦闘もあり、レオンは魔力切れでイサギさんの怪我は完璧に治せてはいない

とにかくここを離れたい

そして早く治療しなくては!

そう思って抱きかかえようとしたときだった

「え?」

イサギさんの体が透けて...

「イサギさん!?」

「お兄ちゃん!」

もしかしてイサギさん、元の世界に...?

「嫌だ!イサギさん!置いて行かないで!」

「お兄ちゃん!ヤダ!いかなっ...グズッ!」

「イサギさん!」

「お兄ちゃん!」

どんなに俺とレオンが泣き叫ぼうとイサギさんの体は無情にもどんどん透けていき、触れなくなっていく

やめてくれ!

俺達のイサギさんを連れて行かないでくれ!

お願いだから!

俺の何を差し出してもいい

だからお願いします

どうかイサギさんを連れて行かないで!










その日、この世界からイサギさんが消えた。








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