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STS第八期開講
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しおりを挟む「しつれいしまぁす……」
小さな声で言いながら雛汰がドアを開けると、縦方向に三席ずつ、横方向に三席ずつ、計九席用意された椅子にはもう既に五人以上の生徒達が座っていて、彼らの視線を一身に浴びた雛汰は、思わず一歩後ずさってしまった。
──か、帰りたい……。
雛汰は心の底からそう思った。
だけど彼は、ここで逃げ帰る訳には行かなかった。
もう受講料だって前払いできっちり支払ってしまったし、それに。
──約束、したんだもん。頑張らなきゃ。
雛汰は自分にそう言い聞かせると、突き刺さる視線の合間を縫って進み、空いていた席に座った。
──なんかもうすでにつかれた……。
まだ何も始まっていないというのに、雛汰はこの椅子に座るまでの流れだけでものすごい疲労感に襲われていた。
こんなんで本当に大丈夫なのかな、この先一体どうなってしまうんだろう、そんなことを考えている間にも、一つ、また一つと席が埋まっていき、いつの間にか時計の針は十八時半を指していた。
九席全てが埋まったものの、流石に全員緊張しているのか、部屋の中は耳鳴りがするほどしんと静まり返っている。
そこへ、二人の男性が連れ立って入ってきた。
一人は、身長百九十センチ以上はありそうな長身の、ガタイのいい青年。
もう一人は、切れ長の目がクールな印象を与える華奢な青年だ。
九人分、十八の目が向けられる中、先に口を開いたのは華奢な青年のほうだった。
「皆さん初めまして。この度は、当スクールにご入校頂きありがとうございます。僕は、当スクールで講師を務めさせていただいてます、レイといいます。僕自身ネコなんで、主にネコ側の皆さんに教えることが多いかと思いますが、分からないことがあればなんでも聞いてくださいね。よろしくお願いします」
レイ、と名乗った青年がそう言ってニッコリ微笑むのを見て、雛汰は微かに頬が熱くなるのを感じた。
──うわぁ……すっごい色気……。これ、タチの人あてられちゃうんじゃないのかな……。
そんな雛汰の考えは正しかったようで、雛汰がちらりと周りに目をやると、何人かの生徒が熱に浮かされたようにぽーっとした表情をしている。
無理もないよね……と雛汰が心の中で頷いていると、今度はガタイのいい青年が口を開いた。
「はじめまして。同じく講師のリュウっていいます。タチです。みんな緊張してると思うけど、これからこのメンバーで文字通り裸の付き合いになるわけだし、あんまりかたくならずにリラックスしてね。硬くするのはアソコだけでいいからね」
リュウ、と名乗った青年は白い歯を輝かせ、夏の青空が似合いそうな爽やかな笑顔を浮かべていきなりウィットに富んだジョークをとばしてきた。
「……ちょっとリュウ、いきなりとばしすぎ」
隣に立つレイに呆れたように注意されても、え?そう?なんてニコニコと笑っているリュウは、もしかしたらジョークのつもりで言ったのではなくいたって真面目だったのかもしれない。
そんな二人のやり取りを見て、一応笑っておくべきなのか、真面目に聞いておくべきなのか……と反応に困る生徒達に、
「この人こういう人だから、慣れてね」
とだけ言うと、レイはすぐに切り替えて今度はスクールの紹介を始めた。
紹介と言っても、講習の回数や流れだとか、修了時発表なるものがありそれに合格すると修了証が貰え、その修了証があるとAV男優として働く時にオファーが来やすくなったりギャラが多く貰えたり、ウリセン(ゲイ向け風俗店)で働く時にバック率がアップするなど、ほとんどがサイトの募集要項に掲載されていた内容と同じものだった。
ただこのスクールは、AV業界最大手のメーカーが運営していてこの建物自体がそのメーカーの本社であるとか、別の曜日には男女の性行為の講習や女性同士の性行為の講習が行われているということはサイトには載っていない情報だったので、それであのお金が掛かってそうな建物の外観なのかぁ……と雛汰は納得した。
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