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騙された男
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しおりを挟む「皆がエロいエロい言うからここは期待に応えて激しくいくべき?」
「えっ?!いい、いい!普通でいい!ていうか普通がいい!」
「そう?残念。じゃあこっちおいで」
さっきの仕返しなのかなんなのか。
真剣な顔で腕組みをし、首を傾げながら訊ねるルイに、真っ赤な顔をして必死で普通にしてくれと訴えるヒナの気持ちを汲んだのかそうではないのかは分からないけど、ルイはヒナの手を引いてベッドまでエスコートすると、ベッドの端に並んで腰かけお互いの額同士をピッタリと寄せて、毛穴一つ見えないなめらかなほっぺたを両手で包み込み、スリスリと撫でた。
もっといきなりベッドに押し倒して激しく舌を絡めるとか、そういうのを予想していただけに意外と普通に始まったもんだから、俺達は勿論のこと、ヒナも拍子抜けしたのかキョトンとした顔をしている。
「はぁーまじでもっちもち。癒される」
「……おれってそんな太ってる?」
「いや?全然。そういうことじゃなくて、肌質的な話。あー、口に入れてもぐもぐしたい」
「……ねぇケイくん。ルイくんってさ、ああいう発言が変態くさいんだってこと分かってるのかな?」
「……いやー、コタ、あれは意外と天然説あんな」
「……ちょっと君達、聞こえてるよ?」
ヒソヒソと話していたケイとコタがルイに睨まれているが、狙っているのか天然かはさておき、俺も今の発言はどうかと思う。
そんなことを考えている間にヒナのすべすべしたほっぺたの感触をたっぷりと堪能したルイは、耳を擽り、フワフワの後頭部を撫で、「キスしていい?」ときっちりお伺いを立てて、真っ赤な顔をしたヒナが控えめにコクリと頷くのを見届けてから、顔を傾けてそのまま深く唇を塞ぐ……のかと思いきや、ヒナのぽってりとした柔らかそうな唇にふんわりと触れるだけのキスを落とすと、すぐに離れてしまった。
「……え?」
「ん?」
「あ、いや、あの…………」
ほんの一瞬の出来事に、ヒナは困惑している様子だ。
「どうかした?」
「あ……え、と……もっと、激しいのされるかなって、思ってたから……」
「なに?物足りなかった?」
「ち、ちがくて……!」
まるでもっと激しいキスをして欲しいとねだっているようにも聞こえる台詞を自ら口走ってしまったことに気付いたヒナが、目を白黒させながらわたわたしているのを見て、ルイは目を細めた。
それからひとしきりヒナの混乱っぷりを楽しんだところでその身体を強く抱き寄せ、今度は少し長めに唇を触れ合わせた。
「ん……ッ」
「……俺、好物は一口で放り込まないで、ゆっくり時間をかけて味わいたい派なんだよね」
ルイのその発言は、『好きな子にはいきなりがっつかないで少しずつ自分のものにしていきたい』俺にはそう言っているように聞こえたが、ヒナにはなんのことだかさっぱり分からなかったようで、首を傾げている。
そんなヒナを見て愛しそうに微笑んだルイが、「可愛いなぁ」と言ってもう一度ヒナの唇を啄むのと、十五分経過を知らせるアラームが鳴ったのはほぼ同時だった。
「ヒナくんがキス初体験だから優しくしてあげてたの、すごく紳士的で良かったよー」
そうレイさんに声を掛けられ、爽やかな笑顔でお礼を言うルイの横で、ヒナはぽーっとした顔をしている。
そんなヒナに、リュウさんがファーストキスの感想を訊ねると、
「……キス、って、こんな気持ちいいんですね……もっとしてたかったぁ……」
と、心ここに在らずな感じのヒナの口から思いもよらなかった台詞が飛び出してきて、ルイを含めその場に居た全員が、バッと音がしそうな勢いでヒナの方を見た。
十人分の視線を一気に集め、ヒナはそこでようやく我に返ったようだ。
今の発言は完全に無意識だったらしく、キスをする前やしている時よりも更に顔を真っ赤に染めて、両手で口を覆ったが時既に遅し。
腹を空かせた獣のように瞳をギラつかせたルイが、
「……リュウさんレイさん、このままこの子食べちゃっても良いですか?良いですよね?」
と講師の二人に訊ねる始末だ。
「気持ちは分かるけど、許可できないかな」
苦笑いしたリュウさんにポンポンと肩を叩かれてようやく元いた場所に戻り始めた二人だったが、
「……あの、ルイくん……今度は、もっと、……して、ね?」
……ヒナ……コイツは、分かって言っているのかそうではないのか。
いや、十中八九分かってないだろうとは思うけど。
少しずつ正気を取り戻し始めていたルイに、当事者であるヒナが放った強力な一言がクリーンヒットし、憐れルイはクッションの海へと沈んでいった。
──ルイよ……今のは同情するぜ……。
流石にちょっとルイが気の毒になって、肩をポンポン、と叩き慰めているうちにリンとマサのターンが始まった。
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