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騙された男
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しおりを挟むヒナとルイと同じようにベッドの端に並んで座った二人。
だけどどちらからもキスを仕掛けようとはせず、空気も少し堅いように感じる。
そのなんとも言えない空気を壊すように、最初に口を開いたのは意外にもリンの方だった。
「…………なんもしないの?」
マサも、まさかスクール内で殆ど他の生徒と喋ることの無いリンの方から話し掛けてくるだなんて思っていなかったようで、驚いた表情を見せた。
「……リンくん、俺に触んなって感じのオーラ出してるから。触っていいの?」
どうやら、何も行動を起こさなかったのはマサなりの気遣いだったようだ。
確かにリンはいつも近寄り難いオーラが出ている。
だけど俺からしたら、俺に触るななどというふうに思っているようには見えなかったし、むしろ本当は構って欲しいんじゃないかとさえ思っていた。
「……俺に触んなと思ってたらこんなとこ来ない」
「……確かに」
的を射たリンの返しに、それはそうかと大きく頷いたマサは、割れ物に触れるかのようにそっとリンのほっぺたに触れ、するりと一撫でした。
「……じゃあ、キスしていい?」
「…………好きにすれば」
「ありがとう」
マサの問い掛けに無愛想に返事をしたリンだったが、その耳は薄ら赤く染まっている。
マサもそのことに気付いたようで、リンが触れて欲しくないと思っているのではなくただ恥ずかしがっているだけなのだと分かると、やや強ばっていた身体から余計な力を抜いて、リンの腰を抱き寄せ、反対の手をほっぺたに添えて自分の方を向かせた。
「………………」
「……あの……リンくん?」
「……なに?」
「そんなに見つめられるとやりづらい……」
「……へっ?あ、ご、ごめん」
凛とした、意志の強そうな大きな瞳で射抜くように自分を見つめてくるリンに、マサがたじたじになりながら声を掛ける。
リンは自分がマサの顔を凝視していたことに気付いていなかったようで、マサに指摘されてようやくそのことに気付き、慌てて瞼を下ろした。
リンの大きな瞳が伏せられた瞼で隠れたことを確認すると、マサはゆっくりと顔を傾け、リンの薄い唇に一度だけ、軽く触れるようなキスを落とした。
それから少し顔を離してリンの顔を見つめ、嫌がっていないと分かると今度はチュッ、チュッと音を立ててリンの唇を何度も啄み始めた。
一方リンはと言えば、自分から積極的にキスをし返すことは無いものの、気持ち良さそうに目を閉じてマサからのキスを受け入れている。
「……舌、出して」
何度も何度も唇を啄むだけの可愛らしいキスを繰り返し、もしかしてマサのターンはこの幼い感じのキスだけで終わるのか?と思い始めたところで、マサは有無を言わさぬ声色でリンに舌を出すよう命じ、おずおずと差し出された真っ赤な舌に自らの舌を絡ませ、吸い上げた。
そうしながらも、右手はリンの身体を服の上からまさぐっていて、その手つきがまたなんともいやらしい。
「…………っ」
「はぁ……リンくんの口ん中あま……」
声こそ出さないものの、ぴちゃぴちゃと響き渡る唾液が絡む音と、眉間に皺を寄せて必死で舌を絡めるリンの赤くなった顔、マサの腕を掴んで時折ピクリと跳ね上がる小柄な身体は、俺達の興奮を煽るには十分で。
リンとマサの持ち時間が終了する頃には、俺含む何人かがすっかり臨戦態勢になっていた。
「……このまま続きしてぇ……」
「次俺の番っすけど」
「分かってるってコタ……最初の時間が無駄だった……」
盛り上がってきたところで中断しなくてはならないというのは、最初触れるのを躊躇っていた数分すら惜しく思えるほど辛いようだ。
マサは、緩く首を擡げ始めた股間を庇うように前屈み気味で力無く立ち上がった。
また別のところでは、
「リンくん、可愛い……」
と、ユウが熱の篭った声で呟いていた。
すると同じネコからそんなふうに言われて照れ臭かったのか、リンはまた元の無愛想キャラに戻り、
「俺なんか可愛げの欠片も無いから」
そうぼそっと呟くと、そそくさと元いた場所へ戻って行った。
その顔は何故か少し、悲しそうに見えた。
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