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できない男
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しおりを挟む自分で言うのもなんだけど、ぶっちゃけ俺はめちゃくちゃモテる。
中学生ぐらいまではむしろ全然モテんくて、しかも親が転勤族だったから同じ学校に長く留まるということも無くて、友達もほとんどおらんかったけど。
それが、高校進学を機に一人名古屋から上京してきて、身なりにも気を使うようになった途端、めちゃくちゃ言い寄られるようになった。
俺が進学したのは全寮制の男子校だったから、俺に言い寄ってくるのは男の割合の方が圧倒的に高かった。
たまに他校の女子から声を掛けられたりもしたけど。
元々俺はあまり異性に興味が無い、所謂ゲイってやつだったから、それは俺にとって都合が良かった。
しかもそれまでの人生でモテたことなんて無かったから、天狗になっとったんだと思う。
敢えて特定の相手と付き合うことなく、とりあえず言い寄ってきた相手を取っかえ引っ変えした。
それが風の噂で広まって、一回でいいから抱いて欲しいって言ってくる奴らが増えてきて、まぁ俺にも一応好みのタイプってもんはあるから、そこらへんは多少選ばせてもらったけど、それでもお陰様で相手に困ることは無くて。
そんな生活は、高校を卒業して大学に入学し、大学を卒業して社会人になってからも続いた。
本当に一回だけヤッてそれっきりの奴らもおったし、ズルズルと何回か関係を続けたセフレみたいな奴らもおったけど、相変わらず特定の相手と付き合ったりはせんかった。
そんな俺が初めて、この子とだったら付き合ってみてもええかも……と思える相手と関係を持ったのが、いつだったか……今から半年前ぐらいかな。
その子は、ゲイタウンのバーで知り合った子で、小柄で色白で、太っとる訳じゃないけどなんとなくもちもちしとって、真ん丸な目が印象的な、ユウちゃんに似た感じの子だった。
飾りっけが無いのに何故か目を引く可愛らしさがあって、他の子とは違う素朴な魅力に、俺は惹かれて。
そんな彼とセックスをした時に、俺は彼からこう言われた。
『ケイくんて、めっちゃ経験豊富だってこの辺じゃ有名だったから、なんかもう少し……上手いと思ってたんだけど……なんだろ、相性が悪かったのかなぁ?正直あんま気持ち良くなかったや。ちょっと残念』
と。
俺は、正直そっちのテクニックにも結構自信があった。
それまで何十人も関係を持ってきたのに、『気持ち良くなかった』だなんて一度も言われたことが無かったから。
でも、実際はそうでも無かったっぽい。
今までのも全部勘違いだったんかなって、皆、気持ち良くなっとるフリをしてくれとったんかなって、そう思ったら思い上がっとった自分がめちゃくちゃ恥ずかしくなって、それから、キスやセックスが出来んくなった。
表面上は気持ち良いフリをしてくれとっても、内心「ヘタクソ」と思われとったら……と思うと、誰かを抱くのが怖くてたまらんくなった。
俺のそんな事情なんて誰も知らんし、知られたくもなかったから誰にも言わんかったしで、それからも相手をしてくれと言われることは何度もあったけど、その度に何かと理由をつけて断るようになって。
でも俺はそれまでの数年間、ずっと相手が途切れたことなんて無かったし、誰とも触れ合えん日々が続くうちに段々人肌恋しくなってきて。
しかも、このままだったら俺はこれから先一生キスもセックスも出来ん。
そう思ったら居てもたってもいられんくなって、ゲイが集まるポータルサイト……そこでたまたま見かけたこのスクールのことを思い出し、そこに通えばもしかしたらまた自分に自信がついて、前みたいに出来るようになるかもしれん、そう思って応募した。
そして迎えた、初日。
どんな感じなんだろうな……とドキドキしながらこのスクールにやって来た俺は、目を疑った。
だって、俺とのセックスが気持ち良くない、と言い放ったあの子に雰囲気がそっくりな子が座っとったから。
まぁ、ユウちゃんの方が遥かに可愛いけど。
……でも、ぶっちゃけチャンスだ、そう思った。
そのそっくりさん……ユウちゃんに俺の相手になってもらって、ここで学んだテクでユウちゃんのことを気持ち良くさせることができたら、あの子を気持ち良くさせられた気になって立ち直れるんじゃないか……と。
正直、ボディタッチの相手は誰でも良かった。
あの子の代わりに、キスとセックスでユウちゃんをめちゃくちゃに出来ればそれで良い、そう思っとった。
……結果的に、そのボディタッチですら上手くいかんかった訳だけど。
そしてボディタッチの相手役希望の紙に施設見学で同じグループになったリンちゃんの名前を、キスの相手役の希望の紙にユウちゃんの名前を書いて提出し、希望通りのペアになれた時には内心『よっしゃー!』と思った。
でも……現実はそう甘くなかった。
いざ、ユウちゃんを目の前にして触ったりキスしたりしようとすると、なんとなくあの子に似とるということもあって、あの日のことがフラッシュバックした。
また何か言われるんじゃないかとか、そんなふうに思ったら怖くて。
自信を取り戻すどころか、余計にど壺にハマっていった。
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