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第十一話 ヒロイン視点④
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朝に邸に集まって、すべてが終わったのは夕方だった、疲れすぎて、頭の中空っぽだ。
乗ってきた馬車に再び乗り込み、窓を覗くと玄関前にカルロ様とお姉さまが立っていた。
何を考えているのか、私にはわからない、ただ二人の距離がとても近くて・・・
胸が痛くなった。
馬車の中では誰も話さない、お母さまの泣き声だけが聞こえる。
お父さまは一度こちらをチラリとみたけど、私が目を合わせるとうつむいてしまう。ボンヤリした頭で、二人のこと・・・カルロ様のことばかり思い出しちゃう。
お姉さまの隣できっとカルロ様は笑うんだろう、お姉さまもきっと、あの綺麗な邸で、二人で。
それがとても切ない、私はその場所にいることができない。
到着した場所は小さい教会だった。
この時間はいつも閉まっているのに・・・なんでここに来たの?カルロ様たちへの、懺悔をするのかな?
真正面からではなく裏口から入った。
質素で小さい個室に通され、ここで待つように、とだけ言われた。
馬車と同じように重い空気が私たち三人を包む。私はカルロ様がいるだろう邸の方向をずっと見ていた。
1時間くらい経った。
空が薄暗くなった頃『準備をして、ついてきてください』と誰かが入ってきた。
お父さまがノロノロと顔を上げてついていく。お母さまは今日初めて私の手を取って、お父さまについていく、どこにいくの?
着いた先は聖堂だった、
日中ならきっとステンドグラスが綺麗なんだろうなって思うけど今は影のほうが濃くて怖かった。
奥の方にはエドと、エドのご両親、祭壇で神父さんが私たちを待っている。
なんだろう、なんか、いやだ。いやだって思う。
行きたくないけど、お母さまが手を取って進んでいくから向かうしかなくて。
私たちが到着するとお母さまが手を離して数歩下がった、エドと、真正面に向かいあう。
「神の名のもとに二人の結婚を認めます、サインを」
・・・?
あ、これ、結婚式、なんだ。
え、結婚式ってこんな簡単に終わってしまうの?
エドが黙ってサインをする、あとは私がサインするだけで、それで成立するの?
小さい頃から夢見てたの、森の奥にある小さな、でも素敵な教会、そこで大好きな旦那様と式を挙げるの。真っ白でふわふわなドレス、その時は誰よりも綺麗で幸せなお姫様になれるって。
小さな花が舞う中、家族に祝福される。「幸せになるんだよ」って。
私は嬉しくなって背の高い旦那様を見上げる。
カルロ様が私に微笑んでくれて・・・。
いやだ!いやだ!!
エドの胸を押して、そばにいる大人たちを振り切って!カルロ様のところに行くの!!
・・・そんなこと、当然できない。
足が動かない、そんな度胸、ない。
私はやっぱり、意気地なしで、
震える手でサインをした。
エドはそのままウチの邸にやってきた、
「こんな形だけど、君を愛しているのは本当だよ、だから必ず幸せにするからね」って。
私はボロボロ涙をこぼし、声を上げて泣いてしまった。
結婚後、エドと一緒に寝ることは無かった。
最初はエドも「今は仕方ないよね、待ってるから」と言ってたけどそれどころじゃなくなったらしい、お姉さまへの慰謝料のために、お父さまが持っている所領を渡さないといけないんだけど今のまま渡しちゃダメなんだって、とても大変だって言ってた。
毎日帰ってきては倒れるように眠ってるらしい。
エドから「必要以上の買い物は控えてもらう」と金銭面はすべて管理をされた。
私はそこまでつらくなかったけど、毎月商人を呼び寄せていた両親は文句言ってた、
でも「このままでは邸を売ることになる」というエドの言葉に何も言えなくなっていた。
私は・・・。
私は、少なくなったお小遣いで便箋を買う。
お姉さまに、手紙を送るの。
2年間はタウンハウスに送った、返事は来なかった。
卒業式に入れないか、近くまで行ったけど退学した私は当然入れなかった、カルロ様、来てたのかな・・・。
そのあとはお姉さまが住んでるだろう辺境伯のお城に手紙を送ったけど、返事は来なかった。
さらに1年経ってからは、
お城以外にも領にある病院、教会、修道院、様々なところに送るようになった。もしかしたらお姉さまに届けてくれる人がいるかもしれない。
手紙の内容は、見てくれているかわからないからいつも代わり映えなくって、
お姉さまへの謝罪と、後悔と、やっぱり仲直りがしたくて、いつか絶対会いに行きたいって・・・。
そうじゃないとカルロ様に会えないでしょう?
今度こそ間違えない、
大丈夫、エドが「ようやく領地収益が安定する目処が立ったよ」って言ってたの。
エドの見た目はここ数年でかなり変わった。
コケた頬と少しパサついた髪、目の下はクマがずっとあって怖いんだけどお仕事しているのはエドだけだからそんな酷いこと言えない。
それが終わったらきっとカルロ様とお姉さまに会えるよね?エドと一緒に領地にいこう!
きっと「よく頑張ったわね」ってお姉さまは抱きしめてくれる。
そして、そしてカルロ様は「会いたかった、ティティ」って頭を撫でてくれてもしかしたら手に、頬に、口づけしてくれるかもしれない、家族ならそれくらいするもんね?
お姉さまは≪まだ≫エドが好きだよね?
そんな簡単に好きって気持ちは消えないよね?
二人は再会して、忘れていた恋心を思い出すの、
そしたら、そしたらカルロ様が悲しむけど、一人になんてしないわ。
大丈夫、私は【白い結婚】だもの、
お姉さまはエドと、私はカルロ様と幸せになれる。
ああ早く、早く会いたいなあ。
私は鼻歌歌いながらエドが「二人に会いに行こう!」って言うのを待ってるの。
今日は違った、明日こそ言ってくれるかな?いくらだって待てるわ。
この瞬間だって、私は幸せなんだから。
乗ってきた馬車に再び乗り込み、窓を覗くと玄関前にカルロ様とお姉さまが立っていた。
何を考えているのか、私にはわからない、ただ二人の距離がとても近くて・・・
胸が痛くなった。
馬車の中では誰も話さない、お母さまの泣き声だけが聞こえる。
お父さまは一度こちらをチラリとみたけど、私が目を合わせるとうつむいてしまう。ボンヤリした頭で、二人のこと・・・カルロ様のことばかり思い出しちゃう。
お姉さまの隣できっとカルロ様は笑うんだろう、お姉さまもきっと、あの綺麗な邸で、二人で。
それがとても切ない、私はその場所にいることができない。
到着した場所は小さい教会だった。
この時間はいつも閉まっているのに・・・なんでここに来たの?カルロ様たちへの、懺悔をするのかな?
真正面からではなく裏口から入った。
質素で小さい個室に通され、ここで待つように、とだけ言われた。
馬車と同じように重い空気が私たち三人を包む。私はカルロ様がいるだろう邸の方向をずっと見ていた。
1時間くらい経った。
空が薄暗くなった頃『準備をして、ついてきてください』と誰かが入ってきた。
お父さまがノロノロと顔を上げてついていく。お母さまは今日初めて私の手を取って、お父さまについていく、どこにいくの?
着いた先は聖堂だった、
日中ならきっとステンドグラスが綺麗なんだろうなって思うけど今は影のほうが濃くて怖かった。
奥の方にはエドと、エドのご両親、祭壇で神父さんが私たちを待っている。
なんだろう、なんか、いやだ。いやだって思う。
行きたくないけど、お母さまが手を取って進んでいくから向かうしかなくて。
私たちが到着するとお母さまが手を離して数歩下がった、エドと、真正面に向かいあう。
「神の名のもとに二人の結婚を認めます、サインを」
・・・?
あ、これ、結婚式、なんだ。
え、結婚式ってこんな簡単に終わってしまうの?
エドが黙ってサインをする、あとは私がサインするだけで、それで成立するの?
小さい頃から夢見てたの、森の奥にある小さな、でも素敵な教会、そこで大好きな旦那様と式を挙げるの。真っ白でふわふわなドレス、その時は誰よりも綺麗で幸せなお姫様になれるって。
小さな花が舞う中、家族に祝福される。「幸せになるんだよ」って。
私は嬉しくなって背の高い旦那様を見上げる。
カルロ様が私に微笑んでくれて・・・。
いやだ!いやだ!!
エドの胸を押して、そばにいる大人たちを振り切って!カルロ様のところに行くの!!
・・・そんなこと、当然できない。
足が動かない、そんな度胸、ない。
私はやっぱり、意気地なしで、
震える手でサインをした。
エドはそのままウチの邸にやってきた、
「こんな形だけど、君を愛しているのは本当だよ、だから必ず幸せにするからね」って。
私はボロボロ涙をこぼし、声を上げて泣いてしまった。
結婚後、エドと一緒に寝ることは無かった。
最初はエドも「今は仕方ないよね、待ってるから」と言ってたけどそれどころじゃなくなったらしい、お姉さまへの慰謝料のために、お父さまが持っている所領を渡さないといけないんだけど今のまま渡しちゃダメなんだって、とても大変だって言ってた。
毎日帰ってきては倒れるように眠ってるらしい。
エドから「必要以上の買い物は控えてもらう」と金銭面はすべて管理をされた。
私はそこまでつらくなかったけど、毎月商人を呼び寄せていた両親は文句言ってた、
でも「このままでは邸を売ることになる」というエドの言葉に何も言えなくなっていた。
私は・・・。
私は、少なくなったお小遣いで便箋を買う。
お姉さまに、手紙を送るの。
2年間はタウンハウスに送った、返事は来なかった。
卒業式に入れないか、近くまで行ったけど退学した私は当然入れなかった、カルロ様、来てたのかな・・・。
そのあとはお姉さまが住んでるだろう辺境伯のお城に手紙を送ったけど、返事は来なかった。
さらに1年経ってからは、
お城以外にも領にある病院、教会、修道院、様々なところに送るようになった。もしかしたらお姉さまに届けてくれる人がいるかもしれない。
手紙の内容は、見てくれているかわからないからいつも代わり映えなくって、
お姉さまへの謝罪と、後悔と、やっぱり仲直りがしたくて、いつか絶対会いに行きたいって・・・。
そうじゃないとカルロ様に会えないでしょう?
今度こそ間違えない、
大丈夫、エドが「ようやく領地収益が安定する目処が立ったよ」って言ってたの。
エドの見た目はここ数年でかなり変わった。
コケた頬と少しパサついた髪、目の下はクマがずっとあって怖いんだけどお仕事しているのはエドだけだからそんな酷いこと言えない。
それが終わったらきっとカルロ様とお姉さまに会えるよね?エドと一緒に領地にいこう!
きっと「よく頑張ったわね」ってお姉さまは抱きしめてくれる。
そして、そしてカルロ様は「会いたかった、ティティ」って頭を撫でてくれてもしかしたら手に、頬に、口づけしてくれるかもしれない、家族ならそれくらいするもんね?
お姉さまは≪まだ≫エドが好きだよね?
そんな簡単に好きって気持ちは消えないよね?
二人は再会して、忘れていた恋心を思い出すの、
そしたら、そしたらカルロ様が悲しむけど、一人になんてしないわ。
大丈夫、私は【白い結婚】だもの、
お姉さまはエドと、私はカルロ様と幸せになれる。
ああ早く、早く会いたいなあ。
私は鼻歌歌いながらエドが「二人に会いに行こう!」って言うのを待ってるの。
今日は違った、明日こそ言ってくれるかな?いくらだって待てるわ。
この瞬間だって、私は幸せなんだから。
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