16 / 25
ー案件その拾参ー本当の気持ち
しおりを挟む
送別会の日の金曜日、何時もの飲み会会場よりも少しだけ落ち着いた雰囲気な料亭で行われた。
何時ものように支店長からの挨拶。それから松木さんと岡田に、別れの言葉を貰った。
まずは松木さんからの言葉。
『……大変長い間、こちらの支店でお世話になりました。この度これまで慣れ住み続けたこの地を離れる事になりましたが…あちらでも、こちらで身に付けた事を生かして、更に頑張り続けたいと思います。お世話になりました!』
松木さんの言葉を…ただ呆然と聞き流す事しか出来なかった。
それから…岡田がその場に立ち上がった。
『僕は、新入行員時代から一年と三ヶ月…ずっとこの支店に”銀行員“として、育てられて来ました。とても素晴らしい人達と知り合えて…本当に良かったです。次の支店でも、皆さんや出会ったお客様の事はけして忘れません!短い間でしたが…ありがとうございました』
2人が挨拶を終え、深々と礼をした。支店のみんなからの沸き起こる拍手。
私はふいに目頭が熱くなり…慌ててトイレに駆け込んだ。個室に飛び込み…ハンカチを取り出し、声を出さぬように噛みしめて後から後から止まらない涙を流した。
……どうにかこうにか涙を止めて、トイレを出ると…そこに立っていたのは岡田だった。
『加地くん、最後にタップリ飲ませてやろうと思ったのに…逃げたのか?それとも、大好きな松木さんが転勤だから…寂しくて泣いてたのか?』
最後まで冗談をかます岡田。内心慌てながら…敢えて何事も無かったかのように振る舞う。
『…普通にトイレに行ってただけです!これから戻りますから』
岡田は…わざわざ私を迎えに来ただけだったのだろうか?妙に違和感を感じながら、元いた席に戻った。
今日は、身体がもつだけ岡田に付き合ってやろう。…今日が、どう足掻いても最後なのだから…
私は豪華な料理もそっちのけで、岡田に付き合い麦酒を煽りまくった。そうして小一時間後、飲み過ぎで見事‼リバースの嵐に襲われる、超間抜けな私がいた。
それからの私はもう、ぐてんぐてんでぐったりと伏せったままで死んだように動かず…見かねた渉外課長が、1つ年上の先輩女子行員と共に私を家まで送り届けてくれた。
『課長さん、どうも娘がとんだ失態を…』
慌てて玄関に出てきた、ステテコ姿の父親が渉外課長に頭を下げ続ける。パジャマ姿の母親が私を先輩から渡し受けて介抱する。
渉外課長は営業スマイルを浮かべてうちの両親に言う。
『いえいえ、こちらこそ我々がついていながら…娘さんの暴飲を阻止出来なくて申し訳ございませんでした』
両親と渉外課長の話は続く。
私は母親の介抱を受けながら、何時の間にか眠っていた。
そして、引き継ぎを無事終えたふたりは…それぞれの異動先に旅立った。
…気づいてしまった本当の気持ちを…今更本人に、伝える事も出来ずに…
何時ものように支店長からの挨拶。それから松木さんと岡田に、別れの言葉を貰った。
まずは松木さんからの言葉。
『……大変長い間、こちらの支店でお世話になりました。この度これまで慣れ住み続けたこの地を離れる事になりましたが…あちらでも、こちらで身に付けた事を生かして、更に頑張り続けたいと思います。お世話になりました!』
松木さんの言葉を…ただ呆然と聞き流す事しか出来なかった。
それから…岡田がその場に立ち上がった。
『僕は、新入行員時代から一年と三ヶ月…ずっとこの支店に”銀行員“として、育てられて来ました。とても素晴らしい人達と知り合えて…本当に良かったです。次の支店でも、皆さんや出会ったお客様の事はけして忘れません!短い間でしたが…ありがとうございました』
2人が挨拶を終え、深々と礼をした。支店のみんなからの沸き起こる拍手。
私はふいに目頭が熱くなり…慌ててトイレに駆け込んだ。個室に飛び込み…ハンカチを取り出し、声を出さぬように噛みしめて後から後から止まらない涙を流した。
……どうにかこうにか涙を止めて、トイレを出ると…そこに立っていたのは岡田だった。
『加地くん、最後にタップリ飲ませてやろうと思ったのに…逃げたのか?それとも、大好きな松木さんが転勤だから…寂しくて泣いてたのか?』
最後まで冗談をかます岡田。内心慌てながら…敢えて何事も無かったかのように振る舞う。
『…普通にトイレに行ってただけです!これから戻りますから』
岡田は…わざわざ私を迎えに来ただけだったのだろうか?妙に違和感を感じながら、元いた席に戻った。
今日は、身体がもつだけ岡田に付き合ってやろう。…今日が、どう足掻いても最後なのだから…
私は豪華な料理もそっちのけで、岡田に付き合い麦酒を煽りまくった。そうして小一時間後、飲み過ぎで見事‼リバースの嵐に襲われる、超間抜けな私がいた。
それからの私はもう、ぐてんぐてんでぐったりと伏せったままで死んだように動かず…見かねた渉外課長が、1つ年上の先輩女子行員と共に私を家まで送り届けてくれた。
『課長さん、どうも娘がとんだ失態を…』
慌てて玄関に出てきた、ステテコ姿の父親が渉外課長に頭を下げ続ける。パジャマ姿の母親が私を先輩から渡し受けて介抱する。
渉外課長は営業スマイルを浮かべてうちの両親に言う。
『いえいえ、こちらこそ我々がついていながら…娘さんの暴飲を阻止出来なくて申し訳ございませんでした』
両親と渉外課長の話は続く。
私は母親の介抱を受けながら、何時の間にか眠っていた。
そして、引き継ぎを無事終えたふたりは…それぞれの異動先に旅立った。
…気づいてしまった本当の気持ちを…今更本人に、伝える事も出来ずに…
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる