何でも屋さん

みのる

文字の大きさ
4 / 68

第2話 シャープペンとイチゴ

しおりを挟む
とある秋の夕暮れ、店主がたまの喉を撫でると…たまは嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らした。とそこに…ガラガラガラッ‼店の引き戸が開いて、客の入店。

『…いらっしゃい。おや?君は…』

店主が呟き、にこやかに笑顔を浮かべた。
そこには…あの日来店した、青年の姿があった。青年は、無愛想に吐き捨てるように言った。

『…シャープペン…ありませんか…?』

店主はまたあの、嫌な笑いを浮かべ、青年に返した。

『あるよ?』

と、店主は1つのシャープペンを出して来た。

店主の商品説明が始まる。

『これは、芯が無くならないシャープペンだ。いつまで使っても、芯の補充の必要が無い。便利だろう?』

その店主の説明に、へ~と少し感心しながらも…ある『矛盾点』に気付いた。

『でも店主…。此処に”芯が1本だけ入って、幾ら使っても無くならないシャー芯“ってのがあるけど…コレって必要無いのでは?』


そこで店主がまた嫌な笑いを浮かべた。

『普通のシャープペンを使ってる奴は、まだ必要だろう?だからだよ?』

ふぅん…?と青年は何となく納得した。

青年がシャープペンの代金を支払おうと店主に金額を確認。すると店主はまた、あの嫌な笑いで…

『1万円だ』

1万円!?異常に高い買い物だな?…青年は渋々と、代金を支払った。

シャープペンを購入し、青年が少し店内を物色していると…ガラガラガラッ!来店を意図する引き戸の音。大学生位の青年が、息を切らせて入店してきた。呼吸を整えながら、学生はどうにかこうにか声を発した。

『…すみません…っ!“このお店で揃わない物はない”と言う噂を聞いてやって来たのですが…?』

入店してきた学生が辺りを見回す。
店主が学生に答えた。

『あぁ、何でも揃うよ。何が必要なんだい?』

学生は少し赤みがかった、乱れた髪を整えながら…求めて止まない物を言葉にした。

『…この時期には何処行っても売ってなかったり…異様に高かったり…とても俺には買えません。…此処に…“イチゴ”…置いてませんか…?』

店内を物色していた先程の青年、さり気なくに話に耳を傾けていてボソリ一言。

「この時期にイチゴ⁉…あってもバカ高いか…するんじゃないのか?」

すると店主はあっさりと一言。

『あるよ?』

途端にイチゴを求めていた学生の目が輝きだした。

『本当ですか⁉…でも…うんと高かったりするのでしょう?』

学生の目がまた、曇りはじめる。

すると店主はにこやかに答えた。

『安心しろ。うちの商品は、特別価格だ!…500円でどうだい?』

『ありがとうございます‼…本当にありがとうございます。…これで彼女も喜んでくれるハズ!』

学生は満面の笑顔で大事そうにイチゴを下げて、帰って行った。

青年は腑に落ちず。”ちょっと待て!今時手に入りにくいイチゴがあの値段で、何故たかがシャープペンが1万円なんだ!?“青年は店主に食ってかかった。
すると何食わぬ顔して店主は言う。

『芯の要らない世にも珍しいシャープペンだからね。…値段が気に食わないのなら、少し安いシャープペンの芯だけ買うかい?』


青年は何も返せなくなり、

『…このシャープペンをいただいて帰ります…』

そう言いつつも内心では、“バカ高い買い物をした。これなら普通のシャーペンをそこらで買ったんでも同じだったんじゃないのか!?ぼったくりやがって…”そう思いながら店を後にした。

この時青年は気づかなかった。
そのシャープペンを売れば、自分の支払った金額よりも数百倍にもなるということに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...