何でも屋さん

みのる

文字の大きさ
13 / 68

第7話 奥さんの大サービス

しおりを挟む
ショーケースの上で寝そべり…何時ものようにたまは、店主の不在にも拘らずにショーケースをその体温で温め続ける。

そこに毎度のように、青年の来店。”おや?店主が居ない?“その違和感に首をかしげつつ、居眠りを続けるたまの隣に設置されている“呼び鈴”を押す。

『はいはぁい♪』

奥から代わりに出てきたのは、店主の奥さんである『タラコ唇さん』。相変わらず、その一際目立つ大きな唇が神々しい(?)

やって来た青年を見て、奥さんはにた~っと笑い(怯!)恒例の挨拶。

『おや、青年!今日も来てくれたのね?いらっしゃい♪』

何時見ても慣れないその、奥さんのタラコ唇具合に恐怖しながら引きつった笑みを浮かべて、まず気になる事を聞いた。

『こ、こんにちは…(ニ、ニコッ)と、ところで店主の姿が珍しくも見当たりませんが?』

青年の問いに奥さんは、あぁ!!と思い出したかのようにポンっと手を打って答えた。

『今日はウチの人“全国何でも屋会合”に出かけてるの。だから今日は私が店番と言う訳』
怪し気な会合に疑問を抱きつつも、

『なるほど!ところで…』

と青年は用件を切り出した。

『此の前、こちらで…芯の無くならないシャープペンを購入したのですが。普通のより長持ちする消しゴムとか…こちらで扱っていましたっけ?』

すると奥さんは、何でも無いことのように返答した。

『それなら幾ら使っても無くならない消しゴム…置いてるよ?』

奥さんは、またあの独特な笑いを浮かべた。

※本人は朗らかに微笑んでいるつもりなのです。

青年はその言葉に少し安心した…が、気になるのはそのお値段。シャープペンの時はエライ目に遭ったからな…?多分破格の値段をボッタクられるのだろうなぁ…と思いつつも、

『因みに…お値段はお幾らですか?まだ買うとは決めてませんが』

勇気を出して聞いてみた。

奥さんは、またにた~っと眼鏡を光らせながら笑い、答えた。

『消しゴムは…そうだねぇ、あなたはほぼ毎日来てくれる常連さんだからウチの人には内緒で特別価格だよ?』

そう言って、店のショーケースを漁りだした。

そうして出してくれた、幾ら使っても無くならない消しゴム。これがその消しゴムなのか?青年はまじまじと見つめていた。

『そうだねぇ……。本当はシャープペンと同じ値段なんだけど、8000円にしとくよ♪』

8000円!??消しゴムが…やはり…!そんな金額!?青年は、また渋々と財布に手を伸ばしていた。

『ありがとうございましたぁ~!!』

にたにたぁっと笑う奥さんを尻目に、青年は店を後にした。


『あなた、今日は消しゴムが1つ売れたよ?』

会合が終わり、店に戻ってきた店主にそう、奥さんは伝える。

『ほぉ?無くならない消しゴムがかね?』

レジの中身を勘定しながら店主は不思議がる。

『売れたのは消しゴムだけかね?何故か金額が合わないのだがなんでだろうな?』

奥さんは言い逃れをする事が出来ずに、ただただにた~っと笑うしか出来なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...