15 / 68
特別編 出逢い【後編】
しおりを挟む
―数日後―
店特別編 出逢い【後編】主が店の奥へ向かって、
『お~い、少したまと散歩に出かけるから店番頼むよ』
奥さんが奥から、
『は~い!今行く!!』
とバタバタ出てくる。
店主はたまを抱いて、
『じゃあ行ってくるね』
ガラガラガラっ!!出かけていった。
『行ってらっしゃい~!?』
追いかける、奥さんの声。
店を出て少し歩いた所で、一人の女性がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
こちらに気付いた女性が、頬をうっすらと染め…にこにこ笑った。
『あ、先日はどうもありがとうございました!!(やっと見つけた…)』
やや顔がひきつる店主。
『おや、あんたはこの前の…で、もういいのかい?』
女性はそう問われ、
『はい…お陰様ですっかりよくなりました!!この辺りにお住まいなんですか?』
店主に逆に問いかけた。
店主は来た方向に指を差し、
『はい、少し向こうの所で…狭いですが店を開いてます』
店を開いている事を明かした。
女性は少し驚き、
『お店をされてるのですね?また改めて、お店の方へお伺いしますね』
店への来訪を約束する。
店主は笑顔を必死で作り、
『ぜひいらしてください、ではこの辺で…』
会釈をして女性と別れ…歩き出す店主。そしてたまに話しかける。
『さて、どこへ行くかな?たまはどこへ行きたい?』
たまがトコトコ歩き出したから、後をついて行く。
………結局周囲を一周しただけだった。
ガラガラガラっ!!
奥さんが意外という顔をする。
『おや、今日はずいぶん早かったね?』
店主は言う。
『行き先をたまに任せたら近所を一周しただだったよ』
奥さんは腹を揺すって笑う。
『あははは!!そりゃあそうさ、そのルートはたまのお決まりコースだからね?』
店主は滝のような汗を掻きながら、
「そ、そうか…普段店番ばかりだから全然知らなかったよ」
そう呟いた。
奥さんは可笑しそうに笑い終えた後、
『それじゃあ店番交代してね?』
と鼻唄を歌いながら奥へ引っ込んだ。
ふーふふふーん、ふーふ・ふん~、ふーふふふーふーん、ふーふふふんふーふ~ふ~ん~、ふーふふん~
ー翌日ー
相変わらず暇そうに椅子に腰を掛ける店主。
ガラガラガラっ!ややいつもより静かに引き戸が開いた。そこに現われたのは、先日の女性。
『こんにちは~♪』
店主はショーケース越しに、
『やあ、来てくれたんだ?』
女性に声をかけた。
女性は何かしら持参してくれたようだ。
『これ…先日助けて頂いた御礼です。お口に合うか分かりませんが…』
と、地元で有名な、某店の…とある山の名前の菓子折りを差し出した。
店主は困惑し、
『御礼をされるほどの事はしてないんだけどな…』
奥から出てきた奥さんが…店主に用があったのか、
『あんた…、おやお客さんかい?じゃあまた後で…』
来客に気付き、奥に引っ込もうとする。慌ててそれを引き留めて、
『この人が先日の人だよ、わざわざ菓子折まで持ってきてくれたよ?』
と困り顔。
奥さんが女性を一目見て、
『おや、この人かい?可愛い子だねぇ?』
とにやりと笑う。
奥さんを見て…やや顔を曇らせた女性は、
『先日助けていただき、とても助かりました。あ、あの~奥様でしょうか?』
つい聞いてしまう。
『様』を付けられて気分が良くなったのか、
『奥様って言うほど大したもんじゃないんだけどね、まあそんなところかな?
(さっきの旦那を見てたときのこの子の顔と、私の事を見たときのこの子の顔……間違いないだろうね。何重のフィルターをかけて旦那の事を見てるのかねぇ、まあ私も人の事は言えないけどね)』
やや得意気に返答した。
『じゃあまた後で良いから手伝ってよ?』
と店主に言い残し、奥へ引っ込んだ。
無言になり思い詰めた様な顔をする女性。
(あの人のどこが良いのかしら?私の方が可愛いはずなのに…、私にはあまり笑ってはくれないのに奥さんには嬉しそうに笑いかけている、何がいけないのかしら?あのタラコ唇が良いのかしら?きっとそうだ!あのタラコ唇が好きなんだ、じゃあ私がタラコ唇になれば…)
店主は急に無言になった女性を気にして、声をかける。
『あ、あの~、どうしました?』
超!困り顔で聞く。
女性は思い切って口を開いた。
『…あの~、ここなんでも屋さんですよね?“タラコ唇”って販売してますか?』
店主は戸惑いながら答える。
『た、タラコ唇ですか?有りますけど…』
迷いなく女性は店主に注文する。
『じゃあそれください!』
店主は、
『は、はい、どうぞ…』
タラコ唇を女性に手渡した。
タラコ唇を購入して、そそくさと店を出る女性。
笑顔の可愛い女性は壮大な勘違いをし、店主に好かれたいが為に…「タラコ唇として生きることを決めた」瞬間であった。
店特別編 出逢い【後編】主が店の奥へ向かって、
『お~い、少したまと散歩に出かけるから店番頼むよ』
奥さんが奥から、
『は~い!今行く!!』
とバタバタ出てくる。
店主はたまを抱いて、
『じゃあ行ってくるね』
ガラガラガラっ!!出かけていった。
『行ってらっしゃい~!?』
追いかける、奥さんの声。
店を出て少し歩いた所で、一人の女性がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
こちらに気付いた女性が、頬をうっすらと染め…にこにこ笑った。
『あ、先日はどうもありがとうございました!!(やっと見つけた…)』
やや顔がひきつる店主。
『おや、あんたはこの前の…で、もういいのかい?』
女性はそう問われ、
『はい…お陰様ですっかりよくなりました!!この辺りにお住まいなんですか?』
店主に逆に問いかけた。
店主は来た方向に指を差し、
『はい、少し向こうの所で…狭いですが店を開いてます』
店を開いている事を明かした。
女性は少し驚き、
『お店をされてるのですね?また改めて、お店の方へお伺いしますね』
店への来訪を約束する。
店主は笑顔を必死で作り、
『ぜひいらしてください、ではこの辺で…』
会釈をして女性と別れ…歩き出す店主。そしてたまに話しかける。
『さて、どこへ行くかな?たまはどこへ行きたい?』
たまがトコトコ歩き出したから、後をついて行く。
………結局周囲を一周しただけだった。
ガラガラガラっ!!
奥さんが意外という顔をする。
『おや、今日はずいぶん早かったね?』
店主は言う。
『行き先をたまに任せたら近所を一周しただだったよ』
奥さんは腹を揺すって笑う。
『あははは!!そりゃあそうさ、そのルートはたまのお決まりコースだからね?』
店主は滝のような汗を掻きながら、
「そ、そうか…普段店番ばかりだから全然知らなかったよ」
そう呟いた。
奥さんは可笑しそうに笑い終えた後、
『それじゃあ店番交代してね?』
と鼻唄を歌いながら奥へ引っ込んだ。
ふーふふふーん、ふーふ・ふん~、ふーふふふーふーん、ふーふふふんふーふ~ふ~ん~、ふーふふん~
ー翌日ー
相変わらず暇そうに椅子に腰を掛ける店主。
ガラガラガラっ!ややいつもより静かに引き戸が開いた。そこに現われたのは、先日の女性。
『こんにちは~♪』
店主はショーケース越しに、
『やあ、来てくれたんだ?』
女性に声をかけた。
女性は何かしら持参してくれたようだ。
『これ…先日助けて頂いた御礼です。お口に合うか分かりませんが…』
と、地元で有名な、某店の…とある山の名前の菓子折りを差し出した。
店主は困惑し、
『御礼をされるほどの事はしてないんだけどな…』
奥から出てきた奥さんが…店主に用があったのか、
『あんた…、おやお客さんかい?じゃあまた後で…』
来客に気付き、奥に引っ込もうとする。慌ててそれを引き留めて、
『この人が先日の人だよ、わざわざ菓子折まで持ってきてくれたよ?』
と困り顔。
奥さんが女性を一目見て、
『おや、この人かい?可愛い子だねぇ?』
とにやりと笑う。
奥さんを見て…やや顔を曇らせた女性は、
『先日助けていただき、とても助かりました。あ、あの~奥様でしょうか?』
つい聞いてしまう。
『様』を付けられて気分が良くなったのか、
『奥様って言うほど大したもんじゃないんだけどね、まあそんなところかな?
(さっきの旦那を見てたときのこの子の顔と、私の事を見たときのこの子の顔……間違いないだろうね。何重のフィルターをかけて旦那の事を見てるのかねぇ、まあ私も人の事は言えないけどね)』
やや得意気に返答した。
『じゃあまた後で良いから手伝ってよ?』
と店主に言い残し、奥へ引っ込んだ。
無言になり思い詰めた様な顔をする女性。
(あの人のどこが良いのかしら?私の方が可愛いはずなのに…、私にはあまり笑ってはくれないのに奥さんには嬉しそうに笑いかけている、何がいけないのかしら?あのタラコ唇が良いのかしら?きっとそうだ!あのタラコ唇が好きなんだ、じゃあ私がタラコ唇になれば…)
店主は急に無言になった女性を気にして、声をかける。
『あ、あの~、どうしました?』
超!困り顔で聞く。
女性は思い切って口を開いた。
『…あの~、ここなんでも屋さんですよね?“タラコ唇”って販売してますか?』
店主は戸惑いながら答える。
『た、タラコ唇ですか?有りますけど…』
迷いなく女性は店主に注文する。
『じゃあそれください!』
店主は、
『は、はい、どうぞ…』
タラコ唇を女性に手渡した。
タラコ唇を購入して、そそくさと店を出る女性。
笑顔の可愛い女性は壮大な勘違いをし、店主に好かれたいが為に…「タラコ唇として生きることを決めた」瞬間であった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる