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第8話 孫との再会
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桜の花があちらこちらで蕾を膨らませる頃であった。
店主はたまの肉球をぷにっとしながら”たまを散歩にでも出してやらないとな“たまの散歩を建前に、春の日本の花へ思いを馳せているその時だった。
『おはようございます~』
の言葉と共にガラガラガラッと引き戸を開き入店してくる1人の客。着物姿の良く似合う、落ち着いた感じの(年齢不詳な)女性であった。店主がたまを弄りながら声をかける。
『いらっしゃい、ゆっくり見ていっとくれ』
その女性はにこやかに店内をキョロキョロ見回していたが…やがて店主にこう切り出した。
『すみません…こちらには“何でも置いてある”と伺い、やって来てみたのですが亡くなった人の魂を甦らせる事も出来るのですか?』
その顔は笑顔だけれども…寂しさが溢れていた。
店主はそれを聞きその女性には残酷な事を、口にせざるをえなかった。
『……死んだ人間を甦らせるのはとても難しい事だ。でも、ほんの少しの間だけども、魂と言葉を交わすことは出来るよ?』
女性はその瞳をキラキラ輝かせながら、店主に食いつく。
『本当ですか!?……亡くなったあの子とまた、話が出来るなんて…』
その目からは、温かいモノが滲んでいた。
店主は、ただ…と付け加える。
『それ相応の代価が要るよ?…死んだ人間の魂と話をするなんて…普通は出来る事では無いからね?まぁ…50万円だな…』
『50万円…それって一体どれくらいなんでしょうか…?』
その女性はポソリと呟く。少し金銭感覚に疎いのであろうか?
店主は女性に、
『とにかく!安い金額では無いから帰って身内の人と一旦相談して来なよ?』
そう言って、家族との話し合いを勧める。
女性はとりあえず、
『そうですね…?一旦主人と相談して来ます』
と言い、失礼します。と店を出て行った。
ー翌日ー
その女性は、1人のじいさんと…女性の夫らしき人を連れてきた。女性は店主と話す。
『あれから、主人とそのお父さんとも相談して主人も“息子ともう一度話せるなら!?”とお代をお義父さんと共に支払ってくれることを承諾してくれました!!』
とても嬉しそうな女性。じいさんも、孫と話がしたいのだろう。に対して何処か複雑そうな顔をしている夫。
店主はその代金を受取り、代わりに“商品”を引き渡した。その商品とはなんと入れ歯。
じいさんは言う。
『こ…これは…!?ワシが今愛用しとる入れ歯と、一体何が違うのじゃ?』
同じ入れ歯に多額の金額は支払えない!と言ったところだろうか?
(よくよく見たら…このじいさん、ウチの常連客じゃないか?)←入れ歯のね。
『その入れ歯はタダの入れ歯じゃない、嵌めると実に自分の口に馴染むどころか約5分、亡くなった者の魂と会話できると言うスグレモノなのだよ?』
店主は商品の説明。
とりあえず此処ではアレだし…ということで、入れ歯を手にした3人は店を後にした。女性は何度も何度もお礼を店主に述べて。
3人は夫の実家に向かう。居間に亡くなった孫のばあさんも呼んで、皆でじいさんを取り囲む。
そんな中、じいさんは孫と話をしたい一心で緊張しながら入れ歯を、購入してきた物と嵌め替えた。
“…ぃ…、じ…じ…”何処か懐かしい、この感覚。
“じぃじ!!…あれ?ぱぱにまま…それからばぁばまでいる…?なんかみんなそろってるとうれしいね。”3人とも、生きていた頃の孫を思い出し止めようとも止まらない涙。
『おぉそうじゃ!ワシじゃよ、みんないるぞい!?お前ともう一度話がしたくて…』
皆、我先にと順番争い。
『あなた…そっちでも元気で暮らしてるの?』
息子の様子が心配でならなかったようだ。
“ぼくはこっちでもげんきだよ?みんなないてるの?”息子の少し悲しそうな声。
“ぼくはいつまでも…みんなのこころでいきているから…なかないで…いつでもいっしょだよ?”
父親がどうしても息子に伝えたかったことを、思い切って口にした。
『オレは!来る日も来る日も仕事ばかりでお前と一緒にたくさん遊んでやる事が出来なくて本当にすまない事をしたと何時も後悔しているんだ!本当に…ごめんな?』
息子は父親の懺悔に近い言葉に、微笑みながら…(※声だけ)
“ぼくは、ぱぱともたくさんあそんでもらったよ?ぱぱは、なんにもわるいことしてないよ?…ぼくは…ぱぱにまま、じぃじにばぁば…みんなのことが、いつまでもだいすきだよ?”
『ばぁばも!?お前の事がいつまでも大好きだよ?』
そのばあさんの問いには孫の答えは返って来なかった。タイムリミットだ。
息子や孫との久しい会話に、皆ただただ号泣していた。
店主はたまの肉球をぷにっとしながら”たまを散歩にでも出してやらないとな“たまの散歩を建前に、春の日本の花へ思いを馳せているその時だった。
『おはようございます~』
の言葉と共にガラガラガラッと引き戸を開き入店してくる1人の客。着物姿の良く似合う、落ち着いた感じの(年齢不詳な)女性であった。店主がたまを弄りながら声をかける。
『いらっしゃい、ゆっくり見ていっとくれ』
その女性はにこやかに店内をキョロキョロ見回していたが…やがて店主にこう切り出した。
『すみません…こちらには“何でも置いてある”と伺い、やって来てみたのですが亡くなった人の魂を甦らせる事も出来るのですか?』
その顔は笑顔だけれども…寂しさが溢れていた。
店主はそれを聞きその女性には残酷な事を、口にせざるをえなかった。
『……死んだ人間を甦らせるのはとても難しい事だ。でも、ほんの少しの間だけども、魂と言葉を交わすことは出来るよ?』
女性はその瞳をキラキラ輝かせながら、店主に食いつく。
『本当ですか!?……亡くなったあの子とまた、話が出来るなんて…』
その目からは、温かいモノが滲んでいた。
店主は、ただ…と付け加える。
『それ相応の代価が要るよ?…死んだ人間の魂と話をするなんて…普通は出来る事では無いからね?まぁ…50万円だな…』
『50万円…それって一体どれくらいなんでしょうか…?』
その女性はポソリと呟く。少し金銭感覚に疎いのであろうか?
店主は女性に、
『とにかく!安い金額では無いから帰って身内の人と一旦相談して来なよ?』
そう言って、家族との話し合いを勧める。
女性はとりあえず、
『そうですね…?一旦主人と相談して来ます』
と言い、失礼します。と店を出て行った。
ー翌日ー
その女性は、1人のじいさんと…女性の夫らしき人を連れてきた。女性は店主と話す。
『あれから、主人とそのお父さんとも相談して主人も“息子ともう一度話せるなら!?”とお代をお義父さんと共に支払ってくれることを承諾してくれました!!』
とても嬉しそうな女性。じいさんも、孫と話がしたいのだろう。に対して何処か複雑そうな顔をしている夫。
店主はその代金を受取り、代わりに“商品”を引き渡した。その商品とはなんと入れ歯。
じいさんは言う。
『こ…これは…!?ワシが今愛用しとる入れ歯と、一体何が違うのじゃ?』
同じ入れ歯に多額の金額は支払えない!と言ったところだろうか?
(よくよく見たら…このじいさん、ウチの常連客じゃないか?)←入れ歯のね。
『その入れ歯はタダの入れ歯じゃない、嵌めると実に自分の口に馴染むどころか約5分、亡くなった者の魂と会話できると言うスグレモノなのだよ?』
店主は商品の説明。
とりあえず此処ではアレだし…ということで、入れ歯を手にした3人は店を後にした。女性は何度も何度もお礼を店主に述べて。
3人は夫の実家に向かう。居間に亡くなった孫のばあさんも呼んで、皆でじいさんを取り囲む。
そんな中、じいさんは孫と話をしたい一心で緊張しながら入れ歯を、購入してきた物と嵌め替えた。
“…ぃ…、じ…じ…”何処か懐かしい、この感覚。
“じぃじ!!…あれ?ぱぱにまま…それからばぁばまでいる…?なんかみんなそろってるとうれしいね。”3人とも、生きていた頃の孫を思い出し止めようとも止まらない涙。
『おぉそうじゃ!ワシじゃよ、みんないるぞい!?お前ともう一度話がしたくて…』
皆、我先にと順番争い。
『あなた…そっちでも元気で暮らしてるの?』
息子の様子が心配でならなかったようだ。
“ぼくはこっちでもげんきだよ?みんなないてるの?”息子の少し悲しそうな声。
“ぼくはいつまでも…みんなのこころでいきているから…なかないで…いつでもいっしょだよ?”
父親がどうしても息子に伝えたかったことを、思い切って口にした。
『オレは!来る日も来る日も仕事ばかりでお前と一緒にたくさん遊んでやる事が出来なくて本当にすまない事をしたと何時も後悔しているんだ!本当に…ごめんな?』
息子は父親の懺悔に近い言葉に、微笑みながら…(※声だけ)
“ぼくは、ぱぱともたくさんあそんでもらったよ?ぱぱは、なんにもわるいことしてないよ?…ぼくは…ぱぱにまま、じぃじにばぁば…みんなのことが、いつまでもだいすきだよ?”
『ばぁばも!?お前の事がいつまでも大好きだよ?』
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