何でも屋さん

みのる

文字の大きさ
55 / 68

第42話 大晦日と掃除と・・・

しおりを挟む
本年最後の朝早くから中村と伊集院が何でも屋を訪れていた。
中村が入店早々から声をかける。

『おっさん、今日は伊集院と2人で大掃除を手伝いに来てやったぜ・・・って営業してるのかよ!』

店主が中村の申し出を聞き、

『いや、別に閉店にしてもいいんだけどな』

と言って笑う。

伊集院がたまと遊んでるのを横目にしながら中村が言う。

『せっかく伊集院と来たんだし…店閉めて掃除しようぜ』

店主は“じゃあそうするか”と呟き、店の奥へと声をかける。

『お~い、店の掃除をするから来てくれ
!』

すると“はいよ”と声が聞こえ、奥さんが出てきたから店主が経緯を話す。

『実は青年とお嬢ちゃんが店の大掃除を手伝いに来てくれてね、それで掃除をやろうと思ってね』

奥さんが微笑みながら挨拶する。

『おやおや、わざわざ来てもらってすまないねぇ』

中村が笑いながら返す。

『いつも無理を言ったりで世話になってるからな、それでどうすれば良い?』

どのように進めていくか店主が説明をしはじめる。

『そうだね、まずは私と青年でショーケースの品を取り出していくから、うちのとお嬢ちゃんの2人でどちらかが商品を取り出したショーケースの天井辺りからショーケースまでのハタキで埃を落として欲しいんだ、もう1人が埃を落とし終わった所に有るショーケースから雑巾で綺麗にして行って欲しいんだ』

おくさんと伊集院が返事する。

『はいよ~』

『わかりました!』

続いて店主がマスク4個、軍手3組、ゴム手袋1組、ハタキ1本、新品の雑巾1枚を取りだし、

『それぞれマスクと軍手を着けてやってよ、雑巾を使う人はゴム手袋ね』

各自がマスクと手袋を着け掃除に取りかかる。
店主が中村に、

『青年、このショーケースからはじめようか、出した商品はこの箱へ入れてくれたら良いからね』

中村は“ああ”と返事をして2人で商品を取り出し始める。
一方では奥さんが伊集院に話しかけていた、

『私が雑巾で拭くから伊集院さんはハタキをお願いね』

と声をかけると伊集院は“はい”と返事をする。

店主と中村がショーケースから次々商品を取り出し空にしていくと、その後を追うように伊集院が空になったショーケースの天井辺りからホコリを落としてゆき、奥さんが最後の仕上げにショーケースピカピカに磨き上げていく。

一通り終わった所で店主が声をかける。

『そろそろお昼にご飯にしようか、じゃあみんな外へ出て身体についたホコリを落として来てから手洗いやうがいをしてご飯にしよう』

3人がホコリを落とし手を洗ったりうがいをしたりしていると、先に身体を綺麗にした店主がCafeスペースへおにぎり・お漬物・お味噌汁・お茶を用意していて、

『簡単なもので悪いんだけどこれで我慢してよ、夕飯は奮発するからね』

と声をかけると中村は、

『いやこれでじゅうぶんだ、本格的に食べすぎたら午後から動けなくなるからな』

と満足そうにしている、伊集院も納得しているのか頷いている。

食べ始めると伊集院が、

『おにぎりの塩加減がちょうど良くて美味しい~、お漬物も美味しいしいしお味噌汁も美味しい!』

と頬を緩ませていると中村が、

『うめぇ~、おにぎりなのにこんなに美味いのは労働した後だから余計に美味く感じるんだろうな』

と満足気である、そんな2人を見ながら店主夫婦は微笑んでいる。

食事を終え一息休憩をしたのち店主が、

『それじゃそろそろはじめようか、地面を掃いて商品をショーケースへ戻したら店側は終わりだね、その後はcafeスペースの掃除で終わりだよ。
私と青年がまた商品をショーケースに戻すから2人は落とした埃を掃いてよ』

と言うと塵取りと箒とゴミ箱を取り出した。


再びそれぞれのやる事を再開する4人、奥さんと伊集院が掃き終え綺麗になった所から店主と中村が箱から商品を取り出しショーケースへと戻していると、中村がやや太さのある棒状の張りぼてを掴んで凝視しているのを店主が気付き声をかける。

『なんだ?お嬢ちゃんとそのおもちゃで遊ぶつもりなのか?』

とニヤニヤ笑っている。
中村がハッとして、

『い、いや、そういう訳じゃないんだが・・・』

と言うも奥さんが“おやおや”と言ってニタニタ笑ってる。その横では伊集院がジト目で見ている事に気付いた中村は必死に言い訳をはじめる・・・手に張りぼてを掴んだまま。

『伊集院違うんだ、これは違うんだ~!!何に使う物なのかなと思って見てただけなんだよ!!』

顔を赤くした伊集院が冷たく口を開く。

『何が違うんですか、そんなあからさまな形をした物なのにわからないはずないでしょう!』

と中村を横目に掃き掃除を再開する伊集院の姿を見て中村は崩れ落ちる。

そんな様子を見ていた店主が、気の毒に思ったのか思ってないのか中村に声をかけた。

『遊んで無いで早く終わらそう』

と、これを聞いた中村が怒りだす。

『遊んでるんじゃ無くて落ち込んでるんだ、それに誰の所為でこうなったと思ってるんだ?』

店主が冷たく言い放つ。

『それはお前さんがジッと見ているからだろう?』

この一言に中村は“ウッ”としか言えず呻いて項垂れてしまう、奥さんが気の毒に思って伊集院に話しかける。

『そろそろ許しておやりよ、見てただけじゃ無いか…それにそんなに恥ずかしがら無くても良いよ、私も愛用してるし(笑)』

と言いニタ~っとイヤらしく笑う、顔が赤いままの伊集院は“はぁ”とだけ返事した。

少々手違いは出たものの店舗側の掃除も終わり、Cafeスペースの掃除に取りかかる4人だが少し早めに切り上げた店主が、4人分の紅茶とお手拭きと皿に洋菓子を盛り付けてトレイに乗せ、Cafeスペースへ持ってきて声をかける。

『そろそろ15時のおやつにしようよ』

3人が手を止めて席につく、お手拭きで手を拭いて紅茶と洋菓子を食べはじめる。
伊集院が思わすため息を吐き呟く。

『はあ~、ここの紅茶はいつ飲んでも美味しいわ♪』

と幸せそうな顔をしている。

休憩を終えた4人は最後の仕上げとばかりに掃除を再開させる。
掃除を終えた4人は椅子に腰掛け一息つく、中村が

『ふぅ~、やっと終わったぜ』

と言うと奥さんが2人に向かって、

『2人共お疲れさま、今日は助かったよ。ありがとね!』

声をかけ続けて店主が、

『まだ夕飯には少し早いから暫く寛いでってよ』

と声をかけ談笑をはじめる。
暫く談笑を続けて夕飯を食べるのに良くなった頃、店主が大きめの焼き肉用の鉄板を取り出し、味が変えれる様に仕切りがある皿を4枚、箸を4組、焼き肉のタレ、塩、ワサビ、ご飯入の茶碗を4膳、様々な部位の牛肉が盛られた皿を2枚、野菜の盛られた大皿を2枚並べてゆくと奥さんが焼きだす。
鉄板の上に置かれた肉を見た中村が唸る。

『うぉ~!!すげぇ、もの凄い霜降り肉だ!!』

肉やら野菜がどんどん焼かれ食べはじめるが中村に至っては涙を流しながら食べている。

『うめぇ~よ、うめぇ~よ♡』

伊集院も肉を食べて驚いている。

『まぁ、肉に甘味が有って口に入れるとどうじにとろけていきますね。
野菜も新鮮で甘味が有って美味しいし、何よりこの焼き肉のタレも絶品ですね』

店主夫婦は食事をしながら、美味しそうに食べる2人を微笑ましく見ている。
中村がひたすら肉ばかり食べているので、店主が追加の肉を次々取り出してると中村が伊集院に“野菜も食べてください”と注意されていて、やや不満げに“わかったよ”とこぼしている。
中村が、

『どの部位もうめぇ肉だな、塩だと肉の旨味が更に引き立つしワサビだとサッパリするし絶品だ、これからは肉もここに買いに来ようかな…』

と言っている。

食の細目な伊集院が食べ終わり、

『御馳走様でした、とても美味しかったです』

と言っているが食い意地の張ってる中村と奥さんは肉9割・野菜1割の割合で黙々と食べ続けている。
店主も食べ終わり2人に餌を与えるがごとく黙々と肉を焼き続ける。
やがて満足したのか、
奥さんが“ゲフ~”と一際大きなゲップをしてお腹を擦っている。
中村も食べ終わり、

『ごちそうさん、いや~満足満足♪』

と腹を擦っている。

店主が中村達に、

『この後どうする?暫く遊んで年越しそば食べていくかね?』

と問いかけると2人が相談して中村が、

『ありがたい話しだけど今日はもう帰るよ、俺だけならともかく伊集院もいるしあまり遅くなると危ないからな』

と断ると店主が、

『じゃあこれ持って帰って家で食べてよ』

とソバを2人前取り出し渡した。

中村が恐縮して、

『おっさん、色々と悪いな晩飯ご馳走になって年越しそばまで貰っちまって…』

伊集院も続けてお礼を言う。

『本当にありがとうございます、お蕎麦また後でいただきますね』

奥さんが店の前まで見送り声をかける。

『気を付けて帰るんだよ』

2人が“はい”と返事して帰ってゆく。

奥さんが店内に戻ってきて、

『おやおや、怒ってはいけない罰ゲームがはじまってるじゃないの』

と言ってテレビ番組を見るために慌てて店の奥へと戻っていく。
店主も店じまいをして奥へと入っていく。
店内には奥の部屋から漏れてきた笑い声が夜遅くまで響き渡っていた。


テレビから年越しの鐘が鳴りはじめた頃、店主が店舗の方へと出てきて何やらゴソゴソしてまた奥へと戻っていく。
すると奥から除夜の鐘を聞きながら

『大晦日はやっぱりこれだねぇ…』

と言う奥さんの声が聞こえてきて、何やら“ふ~、ふ~ズッズー、ズルズルズル~”と言う音も聞こえだし良い匂いが店内には充満していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...