甘く蕩ける程に愛して

みのる

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如何なる時も使用人はお嬢様に仕えなくてはならない

(その6) シュウイチさんの入院

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ある秋のまだまだ太陽の照る日、庭の手入れを珍しくシュウイチさんが手伝ってくれた。暫く、草をむしってくれていたシュウイチさん。

『あれ…おかしいなぁ…?なんか頭がクラクラするよ…?』

そう言ったかと思うと、シュウイチさんはそのまま庭に力無くうずくまった。
オレはこれは大変だ!と認識し、カグラさんに了承を得て、シュウイチさんを病院に連れて行った。

シュウイチさんを診察をしていた医者が、

『過労ですな。だいぶ疲れておる。1週間程、入院されることをオススメするが…』

なんか入院を渋るシュウイチさんの代わりに、オレが代弁する。

『シュウイチさんが良くなるなら1週間でも1ヶ月でも、入院させてやって下さい!』

オレは、そんなオレとシュウイチさんを…看護師さんから「偏見」というモノの見方で見られていた事に気づかなかった。
(後に…看護師さんから、オレたちはカップルに見えた…という話を聞かされる!)

406号室に案内され、

『今日から桑原さんの入院する部屋ですよ』

寝間着とか…歯ブラシその他…etc…を用意するように言われた。
オレは実家暮らしのシュウイチさんの家の番号を本人から聞き出し、病院の公衆電話にて電話してお母さんに、シュウイチさんの入院を伝えた。お母さんは呑気な声で、

『おや、シュウイチが入院なのかい?…てか、あの子…働いてたんだねぇ(笑)』

どうやらシュウイチさんは親御さんにも仕事の話をしていなかったらしい。

『で、急いでこれから言う物をタシロ病院まで届けて欲しいのですが…』

そう伝えると、シュウイチさんのお母さんは、

『分かったよ、これから仕度して持ってくから』

電話を切りフゥ…と一息つき、シュウイチさんの部屋に戻った。

すると、やはり情報が早い!既に3人の使用人がコスチュームのまんまで、(しかもお見舞いの品付き)シュウイチさんの部屋にお見舞いに来ていた。
そして……なんとお嬢様まで⁉
お嬢様も心配そうにシュウイチさんを見つめる。
お嬢様が口を開いた。

『シュウイチ…私の屋敷でこんなになるまで尽くしてくれたのですね…』

お嬢様の目にはうっすら涙。
シュウイチさんが、途切れ途切れにお嬢様に言葉を発した。

「お嬢様…オレ如きに勿体ない事にございます…」

オレはみんな、喉が乾いたろうと思い…慌てて飲み物を買いに1階に降りた。
(お嬢様はレモンティーで、オレも同じく…んで、後は珈琲かな?)
飲み物を5本買い、シュウイチさんの病室に急いで戻る。
それぞれに飲み物を手渡して、ポツリポツリポツリとみんなで語り合った。

オレの渡した珈琲を手にしたまま、カグラさんが呟く。

「私たちの中の…誰が次に倒れてもおかしくないのよね…?」

その呟きに、オレは元気に返事する。

『まぁ、そうかもしれないですが、ちゃんと体調管理に気を付けてれば大丈夫ですよ!』

すると、弱々しくシュウイチさんが声を出す。

「…なんだよ…オレの体調管理が悪かったみたいな言い方じゃない……」

オレはシュウイチさんに慌てて返す。

『い、いや…オレ…けしてそんなつもりでは…』

するとシュウイチさんが弱々しく笑い出す。

「やだな…♡冗談だよ?」

オレたちも可笑しくなって笑った。

それからちょうど1週間、シュウイチさんは入院して安静にし見違える程に元気を取り戻して、屋敷に戻ってきた。

※『あの人』が帰ってきた!と何気にコラボしとりまする。
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