甘く蕩ける程に愛して

みのる

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第二章 屋敷を飛び出した2人の生活

栗栖…………

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『お嬢様、お茶が入りましたよ?』

淹れてくれたのは…残念ながら、栗栖では無い。
カグラが昔のように…そう、あの男栗栖がこの屋敷に来る前のように…そしてまた、それがあたかもごく当たり前な事の如くに執り行われる。

まるで、「栗栖」と言う者の存在がこの屋敷には初めから無かったかのように。


シュウイチ達に見逃して貰ったのも束の間の出来事で……それを他所から監視していた、サエキグループの者に私達は呆気なく捕まった。

様々な箇所から砂糖を見つけた蟻のように、ワラワラと集ってくる者達。
私と栗栖は……たくさんの人員により別々に捕獲され、栗栖は何処かへ連れて行かれた。私はまた、あの屋敷に逆戻りだ。


屋敷に連れ戻されてから、私はさぞかし酷い仕打ちを受ける事になるのだろうと覚悟していたのだが…お父様とお母様は、まるで!何事も無かったの如くに私に接した。


『ねぇ…カグラ…』

ある日、意を決して私はカグラに確かめる。

『何でございますか?お嬢様』

カグラはにっこりと微笑みながら返事をする。

『栗栖は…栗栖はあれから…一体どうなったの?』

何か、酷い目に遭っていないだろうか?サエキグループの者達から…

するとカグラは、その微笑みを崩す事無く答える。

『栗栖?…一体、誰の話でございますか?』

やはり…!栗栖は……元から此処には存在しなかった事にされている!
何故!?何故みんな平気なの?私には……栗栖の不在が辛すぎる‼

私は、今夜帰って来たら…お父様に直接聞いてみようと思う。

晩ご飯をいただいている時に、珍しくお父様とお母様が帰って来た。
私は食べている途中であることにも構わずに、お父様に訊ねる。

『お父様‼伺いたい事があります!……あの男は……栗栖は一体、どうなったのですか⁉』

すると何故かお母様がその問いに答えた。

『栗栖?それは一体、誰の事なのですか?架苗』

私は力無くその場に崩れ落ちた。
追い討ちをかけるように私にかけられた言葉。

『架苗、食事の途中で…席を立ってはなりません』

私…今まさに…恋愛小説のヒロインみたいじゃない?
………………でなくって‼


栗栖……貴方は一体今、何処で何をしているの?
逃亡を試みて2日目の早朝に捕まり…時は何時の間にかまた、桜の蕾が膨らむあの時期になっていた。


私は密かに決意をした。

昔ばぁやが……耳にタコが出来る位に…私に彼女の住んでる場所の在処を語ってくれたっけ…。
(個人情報の漏洩)

その記憶を頼りに‼私はばぁやの家を訪ねてみようと思ったのだ。

もしかしたら…栗栖も…(淡い期待)

……でも、どうやって…3人のセキュリティを抜け出そうか……?
明日は、ミツキの付き添いの日だ!ミツキは新人で…まだ若そうだし⁉誤魔化せるかも‼


ーそうして翌日ー
私はミツキに声をかけた。

『ミツキ!…私、今日はお散歩がしたいわ』

するとミツキも賛同してくれる。

『良いですねぇ♪良いお天気だし…そろそろ桜が咲いてるところもあるのではないですか?』

よし!第1ミッションはクリア‼

シュウイチに「散歩してくる」と告げて、私とミツキは出かけた。

『お嬢様、とても気持ち良いですねぇ♡桜には、まだ少し早いみたいですがね』

そう言って、ミツキは無邪気に笑う。
とてもふわふわした感じで、女である私も守ってあげたくなる。

『そうね、良いお天気で良かったわ』

私は、ばぁやの家を探しながら歩いているから…正直ミツキの話にはうわの空だ。

(確か…この辺りだと思ったのだけど……‼)

私は咄嗟に、

『ミツキ。そ…そろそろ引き返しましょうか?』

今歩いて来た道を逆戻りし始める。

『???どうか致しましたか?お嬢様』

……明らかにサエキグループの人間と思わしき人間が…何人もあの大きな日本家屋の周りを徘徊してる…っ!


私は…今日のところはとりあえず引き下がる事にした。……何か…方法は無いものか……(悔)
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