新☆何でも屋

みのる

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和菓子婆さんに関わると常に疲れ果てる店主中村

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梅雨になり、ぐずついた天気が続いてる中でのある晴れた日の朝。中村奥さんが猫ちゃん達を連れて散歩に出かけようとしていた。
『アナタ、久しぶりに晴れたから猫ちゃん達を散歩に連れて行ってきますね♪』

『あぁわかった、でも散歩のコースは人の多い近所だけにするんだぞ?』

『わかってるわよ、じゃあ行ってきます☆』

『気を付けて行っといで~』

『はーい♪』
先日奥さんが拐われそうになりシビアになってる中村夫妻、お年寄り達が所で集まって井戸端会議をしている何でも屋の近所なら大丈夫だろうと奥さんを送り出す店主中村。
(しかしジィさん、バァさん達ってのは余程暇なのかどこにでも集まってるな…人が通る度にジロジロ見やがって気分悪いったらありゃしない!まぁ人の目があるってのは防犯上良いんだけどな)等と思う店主中村であった。
奥さんが出かけたと思ったら、また直ぐに戻って来た(?)

『アナタ~!』

『ん?まいか、どうした?
何か忘れ物でもしたか?』

『違うわよ、いつもよく和菓子を買いに来てくれていた近所のお婆さん居るでしょ!?』

『あぁ、そのバァさんがどうかしたか!?』

『深夜にお亡くなりになったそうよ!!』

『えっ!?そ、そうかあのバァさん遂にくたばったか······
······まい、悪いけど散歩に行くの少し遅らせてくれるか?俺……ちょっと婆さん家行ってくる。客は来ないと思うが留守頼む。』

『えぇ良いわよ、挨拶はキチンとするのよ!?』

『あぁ、わかってるって。』

奥さんに暫くの間留守番を変わってもらい、和菓子婆さんの家へとお悔やみに行った店主中村は30分程してから帰ってきた。
『悪かったな、······遅くなったけど散歩行っておいで?』

『えぇ、じゃあ行ってきます。』
心の張合いを失くしたのか店番をしていてもこころここに在らずでその日1日、店主中村は元気が無かった。

翌日、県内一の広さを誇る葬儀場で執り行なわれたお婆さんのお通夜には、大勢の弔問客ちょうもんきゃくがおりその中には店主中村の姿も見受けられた。

お通夜に出席しただけなはずの店主中村が疲れ果て帰ってきた。

『くそ~、酷い目に遭ったぜ······』

『疲れたって、お通夜に行っただけでしょ、何でそんなにも疲れるの?』

『それなんだけどさ、軽い気持ちで行ったら大勢の出席者が居てお焼香の順番待ちが大変だったんだ。何人居たのか知らないけど会場から数百mも続く人の山を見た時は愕然としたぜ!あのバァさん……いったい何者だ?』

『昔歌手をされてたのよね?ファンの方とか?』

『歌手って言っても数十年前の話だしな。……そうそう会葬返礼品ってのを貰ったんだった、え~と、中身は······昔治タオルと、オヤブンの微糖コーヒー、ロッデのチョコケーキか
おいまい喜べ、チョコケーキの新製品でイチゴだってよ?』

『えっ、本当?やった~、とっても美味しそうね♡』
会葬返礼品で貰ってきた中に奥さんの好きなチョコケーキがあり、食べた事の無いイチゴ味で小躍りする中村奥さん♪


和菓子婆さんのお葬式の済んだ2日後に何でも屋の電話が鳴り響き、中村奥さん電話に出る。
『はい、もしもし何でも屋です。
はい、はい、えっ?500では無く………?はい、初七日にですか?はい、分かりました。主人にそう伝えます。』

『まいどうした、誰からだったんだ?』

『あのお婆さんの息子さんのお嫁さんからなんですけど、急な話で悪いけど初七日の粗供養そくようにうちの和菓子セットを使いたいんですって。何でもお婆さんの遺言だとの事よ?』

『ほぉありがたい話だな、で数はどのくらいいるんだ?』

『1箱の中に和菓子を20個で、それを5000箱欲しいんですって初七日に……』

『・・・はぁ?ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっとまってくれ
50や500じゃ無くて5000?それも初七日に?』

『確認したけど間違いなく5000って言ったわ、それに熨斗も付けてほしいと······代金はいつも通りに、と言えばわかるとお婆さんに言われたそうよ?』

『え~と初七日っつったら、死んだ翌日がお通夜で、今日は葬式の2日後だから······ゲッ、残り2日しかねーじゃ無いか!!
まい、今日、明日と臨時休業にして大急ぎで用意するぞ!!』

『はい、臨時休業の貼り紙を用意してきます!』

『あぁ、頼むよ!
あのババァめ死んでからも迷惑かけやがって!!ほんとにまったく……‼』

それから2日間は中村夫妻は大忙しで饅頭の用意をした。
初七日当日に婆さん宅の人手も借りて全て婆さん宅に運び込んだ。
『ゼーゼー、こ、これで全てです……ありがとうございました‼』

『ご苦労様です、それでお代金の方は······?』

『えーと、(少しマケロって事だし面倒だから1つ100円で良いか······)1つ100円の饅頭が1箱20入りで2000円、それが5000個で1000万円ですが······』

『はい、分かりました。』
店主中村が値段を伝えると若奥さんがサラサラサラと小切手に値段を書き込み中村へと渡す。
『小切手でも大丈夫ですか?』

『はい大丈夫です、こちらが領収書です。
それとこれをバァさんさんの仏前に御供えしてくれるか、それと中身は和菓子なのでお早めに食べてくれ。』

『すみません、有難くお供えさせて頂きます。』

最初は丁寧にやり取りしていたが徐々に地が出る店主中村は、最後にお婆さんの御仏前に和菓子を備えてくれと春・夏・秋・冬をモチーフにした四季折々の豪華4段重ねを手渡した。
その日の夕刻初七日を済ませ落ち着いた家族や親類は、お供えしていた和菓子を下げて食べようと言うことになった。
和菓子を開くと各季節に応じて並べられており、そのあまりもの美しさに目を奪われ、美味しさに舌鼓を打っていた。

ーその日の夜ー
店主中村は夢を見ていた。夢にまで出て来た婆さんが両手に和菓子を持ち、歯の抜けた口をニンマリとさせ微笑んでいた。
『何でも屋、色々と手間かけさせて悪かったね。それと良い物をありがとね、これでワシャァ未練は無いよ。』
と言い残して消えていった······歯の抜けた隙間から和菓子をボロボロこぼしながら。

翌朝、目覚めた店主中村の目には光るものがあった。
『まいおはよう、夢に婆さんが出て来たよ······なんか礼を言ってた。』

『まぁ、良かったわねア・ナ・タ♡』

店主中村が奥さんに婆さんが夢に出て来て、お礼を言われた事を照れ臭そうに言うと奥さんは店主中村を茶化して微笑んでいた。


後日、何でも屋の饅頭は美味しいと甘党の爺さんや婆さんがカフェスペースを占領したり、購入したりしに来るのであった。
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