サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。

チョコズキ

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ファン第一号と片思いの相手

第7話 早見ちゃんとの初ランチ?

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 俺は少し早く会社に着いた。
 そしてすぐに自分の席に向かい、心愛から貰ったスムージーを飲む。

 「うん、これも美味いな」

 口の中いっぱいに広がる甘みと、程よい酸味のコラボレーション。
 しっかりと果実本来の味を生かせてて、プロ顔負けの一品に仕上がっている。

 本当、流石としか言えないな。
 こんなに質の高い物が作れる女子高生は、探したってそうそう見つからないだろう。

 そう思うと、俺はすごくラッキーな人間なのかも知れない。
 昨日のあれだけ美味しかったクッキーや、今日のこのスムージーをタダで食すことが出来ているのだから。

 ありがとう神様、ありがとう心愛。
 感謝の意を唱えながら、ゆっくりと最後まで飲み干した。

 「ご馳走様でした」

 そして仕事が始まるまではまだ5分程度時間があったので、自分の席でしばし寛ぐことにした。

 だがそんな状態の俺に、何の遠慮もなく話しかけてくる人物がいた。

 「おはよう悟」

 この少し中性的な声にほのかに香る甘い匂い、間違いなく翔だ。
 目を瞑っていた俺はその声に反応して、ゆっくりと目を開ける。

 「……おはよ」
 「どしたの?テンション低いね」
 「誰のせいだ」
 「うそ……。早見さんに振られちゃった?」
 「んなわけねえだろ!て言うか、告ってもねえわ!」

 少しムキになって言い返した。

 はぁ最悪だ……。
 せっかくのリラックスタイムがこいつのせいで台無しじゃねえか。

 「それでさ、今日って昼から報告会があったよね?」
 「確かそうだな」
 「また悟怒られちゃうね」
 「ほっとけ」

 翔は俺と少し会話をした後、机の上に置いてあるスムージーが入っていた水筒を見て表情を変えた。

 「悟、それは?」

 翔が水筒を指差し、俺に尋ねてきた。

 「ただの飲み物だが」
 「誰に貰ったの?」
 「えっと……自分で買ったんだよ」
 「うそ」

 苦し紛れについた嘘は、すぐにバレてしまった。

 昔から嘘をつけない性格で、頑張って嘘をついたとしてもすぐにバレてしまう事がしょっちゅうだった。
 そして今回もそのパターンだ。

 だがここは、嘘を突き通すしかない!
 絶対に心愛との事は、会社の連中にバレるわけにはいかないのだ。

 しかし、翔の奴にはほぼほぼ勘付かれている。
 あいつの性格上、絶対に関係ないと断言出来る証拠を突き付けるまでは疑い続けてくるだろう。

 「本当だ」
 「じゃあ証拠見せて」
 「……ほれ」
 「ん?」

 俺がポケットから取り出したコンビニのレシートを見て、翔は首を傾げてそれをじっとみていた。
 それもそのはず、そのレシートには今日の朝の時刻が刻まれており購入物がスムージーと書かれているのだから。

 何故そんなレシートを持っているかって?
 いざと言う時の為に、俺が仕込んでおいたのだ。

 これで翔の奴も引き下がるしかないだろう。

 「どうだ?信じてくれたか?」

 勝ち誇った表情で翔に聞いた。

「いやいや、こんなの何の証拠にもならないよ」

 翔は呆れた表情でそう言い返してくる。
 おかしいぞ。
 俺の想像では、このレシートさえ出しとけばピンチは回避出来るはずだったんだけど……。

 「まじで?」
 「まじで」
 「理由は?」
 「聞きたい?」
 「頼む」

 この後、翔から何故コンビニのレシートでは証拠にならないのかの説明を受けた。
 とても分かりやすく説明をされてしまい、頷く他に何も出来なかった。

 まじで不甲斐ねぇ。

 「じゃあそろそろ仕事が始まるから」
 「そうだな」
 「悟、女子高校生との付き合い方もうちょっと考えなよ」
 「……」

 翔にそう言われた俺は、何も言葉を返せなかった。
 そんな俺に翔は、ただただ見つめるだけで何も言わずに自分の席へと戻って行った。


 そして俺は、仕事が始まっても集中出来ないでいる。
 翔から言われた言葉を、自分なりに色々と考えていたのだ。

 女子高生との正しい接し方?や女子高生とおっさんどこまでいったら犯罪?など、女子高生にまつわるありとあらゆる事をスマホでググり、絶対に心愛との関係で間違いが起きないよう勉強をしていたのだ。

 だがそんな時、一人の女性社員が話しかけてくる。

 「せーんぱい♪」
 「!?」

 こ……この声は。

 「先輩、何をそんなに集中して見ていたんですか?」
 「は……早見ちゃん!こ……これは、べつに何でもないんだ」
 「そうなんですか?」
 「ああ、気にしないでくれ」

 とっさにスマホを隠し、冷静を装う。
 あんな馬鹿みたいな事を調べていたなんて、絶対に早見ちゃんには知られるわけにはいかないのだ。

 もしもバレるような事があったら……俺は死ぬ!

 内心焦りまくっている俺に、追い討ちをかけるかのような発言を早見ちゃんが繰り出してくる。

 「先輩、突然なんですけど……お昼一緒に食べませんか?」

 はい?
 あの早見ちゃんが俺をランチに招待だと?
 何故好きな相手の翔ではなく、俺なんだ。
 通り魔から市民を助けた事が、そんなにも彼女の中で評価されるべきポイントだったのか?

 それならそれで、ついに俺にも希望の光がさしたって事じゃねえか!

 「是非、喜んで!」

 満面の笑みを浮かべながら、そう返答した。

 その後の俺は、昼休憩までバリバリと働いた。
 翔から言われた事や心愛の事を忘れ、目の前にある早見ちゃんとのランチで頭がいっぱいになっていた。


◇◇◇


 そして昼の12時。
 待ちに待ったランチの時間がやってきた。
 俺は12時になった瞬間、トイレに駆け込み顔や髪型などを念入りにチェックした。

 よし、問題ないな。
 自分で言うのも何だが、俺の顔って中の上くらいには整っていると思うんだよ。
 何て言うのかな。
 最近流行の、塩顔イケメンみたいな?

 こんな感じで、今の俺は早見ちゃんとのランチ前と言う事もあり盛大に浮かれていた。


 「このカフェか」

 そして、早見ちゃんから指定された会社近くのおしゃれなカフェにやって来たのだが……。

 なんか俺、場違いじゃね?
 周りのお客さん達がみんな、お洒落な若者女性ばかりなんだけど!

 「いらっしゃいませ!お客様……お一人ですか?」

 あれ、何この感じ。
 ちょっと店員さんにも惹かれてたような気がしたんだけど。

 「あ、ええと……」
 「すみません二人です!ですよね、先輩♪」

 おっと、ここで救いの女神降臨か!

 「ああ。そうだな」
 「かしこまりました。ではこちらのお席へどうぞ」


 こうして俺と早見ちゃんの初ランチが始まった。
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