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ファン第一号と片思いの相手
第13話 早見ちゃんの圧が怖い
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会社に着いた俺は、すぐに自分のデスクへと向かった。
そして、昨日考えておいた翔から恋愛話を聞き出す為の作戦を一つづつ紙に書き出していく。
せっかく睡眠時間まで削って考えてきたんだ。
絶対土曜日までに翔から聞き出してやる。
でなきゃ俺は、確実に早見ちゃんから嫌われてしまうのだ。
そんな思いを込めながら、ペンを走らせた。
そして作戦を全て書き終えた俺は、その紙を見つめながら頭を悩ませていた。
「はぁ、どうすればいいんだ」
ボソッと呟いた。
どの作戦を一番最初に実行すればいいのか、それが全然決まらないのだ。
一つ目 そのまま直接本人に聞く
二つ目 遠回しにジワジワと聞いていく
三つ目 部下を使って聞き出させる
四つ目 何かと引き換えに教えてもらう
うーん。
何と言うか、今更なのだがどの作戦も上手くいかない気がしてきた。
これと言って、深い理由はないのだけど。
しかし、強いて理由を挙げるとするならば相手が翔だからだろうか。
あいつは何故か妙に感が鋭いし、間違って下手な事を言うと俺の方が色々と言わされてしまう可能性がある。
だから俺はこれだけ慎重に、念入りに事を進めていると言うわけなのだ。
「先輩、おはようございます♪」
「おお、おはよう」
真剣に悩んでいる俺の元に、部下で片想い中の相手である早見ちゃんが挨拶をしてくる。
今日も一段と、ふわふわっとした服装で地雷系感丸出しのメイクと言う会社員にはあるまじき見た目をしていた。
これが許されるのも、親がこの会社の社長だからなのか?
それとも彼女がただの世間知らずなだけなのか?
この辺りの謎は、未だにはっきりとはしていない。
いや、ハッキリとさせられないと言った方が正確か。
彼女が入社して一年、彼女の見た目を注意した者は次々と地方に飛ばされて行き、その事を恐れた会社の社員達は誰も彼女と深く関わらなくなった。
そしていつしか彼女の見た目を注意する者は誰一人としていなくなってしまったのだ。
そんな事もあり、早見ちゃんはうちのチームでも若干浮いている存在になっている。
唯一普通に会話をしている人物と言えば、翔と俺くらいだろう。
色々と考えていた俺はふと、早見ちゃんの方を見た。
すると、こちらをニコニコと見てくる早見ちゃんと目が合う。
その瞬間、朝の心愛の話が頭を過ぎった。
まさか、心愛が言っていた夢の中の地雷系女って……早見ちゃんの事なんじゃ……。
俺を殺すのに使っていたチャネルのリップも、つい最近手に入れていたし……俺のお陰で。
偶然にも早見ちゃんと夢の中の地雷系女との人物像が一致してしまって、俺は少し冷や汗をかいていた。
「せんぱーい、どうしたんですか?顔が秋田県のナマハゲみたいに怖くなっていますよ?」
「何だその分かりづらい例えは」
「あれ、そんなに分かり辛かったですか?」
「普通はそんな例え方なんてしないからな」
「それって、私が天才って事じゃないですか!」
早見ちゃんが少し嬉しそうに言ってくる。
だが、彼女の本題はそんな事ではないだろう。
例の土曜日まで一週間を切ったと言う事もあり、俺に色々と圧をかけに来たのだとそう思った。
「せーんぱい?」
不気味な笑みを浮かべて、こっちをジーと見つめてくる早見ちゃん。
「お……おお」
「分かってます?私の言いたい事」
「勿論だとも」
「それならいいんですけど。それで、上手くいっているんですか?」
「あ……当たり前じゃないか。俺を信じろって」
タジタジになりながらも、そう答えた。
何故後輩相手に上司であるこの俺が、こんなにもビビらなくてはいけないのか。
そこが腑に落ちないまま、やり取りはどんどん進んでいく。
「本当に信じてもいいんですね?」
「ああ……。信じてくれ」
「なんか先輩って、頼りにならない感じがして心配なんですよねー」
「一応俺、上司なんですけど……」
「あ、そうでしたね。今のは聞かなかった事にしてください♪」
「努力はしてみる」
充分に圧を掛けられた後、早見ちゃんは鼻歌を鳴らしながら席に戻って行った。
そして俺は急ぎの仕事を片付けた後、翔に声を掛けにいく。
「よう翔。昨日は大丈夫だったか?」
「おはよう悟。何とかね」
「すげえ酔ってたもんな」
「俺、変な事とか言ってなかったよね?」
「たぶん大丈夫だったと思うぞ」
「たぶんって何!?」
翔が焦った様子でそう言ってくる。
そんな普段の会話の中でも、俺はチャンスを窺っていた。
どのタイミングで切り出せばいいのか、獲物を狙うハンターかのように。
「そうだ。翔、今日の昼飯一緒にどうだ?」
「いいよ。昨日迷惑かけた分、俺が奢るよ」
「そんなに気を使うなよ」
「いや、今日は奢らせて」
「そこまで言うなら、鰻でも奢ってもらうか」
「それはちょっと……」
こうして俺達は昼飯の約束をした。
ただの昼飯ではない、俺の運命が掛かっている昼飯の約束を……。
本当に大丈夫なんだろうか……。
そして、昨日考えておいた翔から恋愛話を聞き出す為の作戦を一つづつ紙に書き出していく。
せっかく睡眠時間まで削って考えてきたんだ。
絶対土曜日までに翔から聞き出してやる。
でなきゃ俺は、確実に早見ちゃんから嫌われてしまうのだ。
そんな思いを込めながら、ペンを走らせた。
そして作戦を全て書き終えた俺は、その紙を見つめながら頭を悩ませていた。
「はぁ、どうすればいいんだ」
ボソッと呟いた。
どの作戦を一番最初に実行すればいいのか、それが全然決まらないのだ。
一つ目 そのまま直接本人に聞く
二つ目 遠回しにジワジワと聞いていく
三つ目 部下を使って聞き出させる
四つ目 何かと引き換えに教えてもらう
うーん。
何と言うか、今更なのだがどの作戦も上手くいかない気がしてきた。
これと言って、深い理由はないのだけど。
しかし、強いて理由を挙げるとするならば相手が翔だからだろうか。
あいつは何故か妙に感が鋭いし、間違って下手な事を言うと俺の方が色々と言わされてしまう可能性がある。
だから俺はこれだけ慎重に、念入りに事を進めていると言うわけなのだ。
「先輩、おはようございます♪」
「おお、おはよう」
真剣に悩んでいる俺の元に、部下で片想い中の相手である早見ちゃんが挨拶をしてくる。
今日も一段と、ふわふわっとした服装で地雷系感丸出しのメイクと言う会社員にはあるまじき見た目をしていた。
これが許されるのも、親がこの会社の社長だからなのか?
それとも彼女がただの世間知らずなだけなのか?
この辺りの謎は、未だにはっきりとはしていない。
いや、ハッキリとさせられないと言った方が正確か。
彼女が入社して一年、彼女の見た目を注意した者は次々と地方に飛ばされて行き、その事を恐れた会社の社員達は誰も彼女と深く関わらなくなった。
そしていつしか彼女の見た目を注意する者は誰一人としていなくなってしまったのだ。
そんな事もあり、早見ちゃんはうちのチームでも若干浮いている存在になっている。
唯一普通に会話をしている人物と言えば、翔と俺くらいだろう。
色々と考えていた俺はふと、早見ちゃんの方を見た。
すると、こちらをニコニコと見てくる早見ちゃんと目が合う。
その瞬間、朝の心愛の話が頭を過ぎった。
まさか、心愛が言っていた夢の中の地雷系女って……早見ちゃんの事なんじゃ……。
俺を殺すのに使っていたチャネルのリップも、つい最近手に入れていたし……俺のお陰で。
偶然にも早見ちゃんと夢の中の地雷系女との人物像が一致してしまって、俺は少し冷や汗をかいていた。
「せんぱーい、どうしたんですか?顔が秋田県のナマハゲみたいに怖くなっていますよ?」
「何だその分かりづらい例えは」
「あれ、そんなに分かり辛かったですか?」
「普通はそんな例え方なんてしないからな」
「それって、私が天才って事じゃないですか!」
早見ちゃんが少し嬉しそうに言ってくる。
だが、彼女の本題はそんな事ではないだろう。
例の土曜日まで一週間を切ったと言う事もあり、俺に色々と圧をかけに来たのだとそう思った。
「せーんぱい?」
不気味な笑みを浮かべて、こっちをジーと見つめてくる早見ちゃん。
「お……おお」
「分かってます?私の言いたい事」
「勿論だとも」
「それならいいんですけど。それで、上手くいっているんですか?」
「あ……当たり前じゃないか。俺を信じろって」
タジタジになりながらも、そう答えた。
何故後輩相手に上司であるこの俺が、こんなにもビビらなくてはいけないのか。
そこが腑に落ちないまま、やり取りはどんどん進んでいく。
「本当に信じてもいいんですね?」
「ああ……。信じてくれ」
「なんか先輩って、頼りにならない感じがして心配なんですよねー」
「一応俺、上司なんですけど……」
「あ、そうでしたね。今のは聞かなかった事にしてください♪」
「努力はしてみる」
充分に圧を掛けられた後、早見ちゃんは鼻歌を鳴らしながら席に戻って行った。
そして俺は急ぎの仕事を片付けた後、翔に声を掛けにいく。
「よう翔。昨日は大丈夫だったか?」
「おはよう悟。何とかね」
「すげえ酔ってたもんな」
「俺、変な事とか言ってなかったよね?」
「たぶん大丈夫だったと思うぞ」
「たぶんって何!?」
翔が焦った様子でそう言ってくる。
そんな普段の会話の中でも、俺はチャンスを窺っていた。
どのタイミングで切り出せばいいのか、獲物を狙うハンターかのように。
「そうだ。翔、今日の昼飯一緒にどうだ?」
「いいよ。昨日迷惑かけた分、俺が奢るよ」
「そんなに気を使うなよ」
「いや、今日は奢らせて」
「そこまで言うなら、鰻でも奢ってもらうか」
「それはちょっと……」
こうして俺達は昼飯の約束をした。
ただの昼飯ではない、俺の運命が掛かっている昼飯の約束を……。
本当に大丈夫なんだろうか……。
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