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ファン第一号と片思いの相手
第24話 神谷のプライドと心愛の微笑み
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俺の発した言葉で、男達は動きを止めた。
そして興味の対象を早見ちゃんから俺へと変更したようだ。
「なんだお前?」
「何俺たちの邪魔しちゃってんの?」
「ヒーロー気取りですかこの野郎!」
男達が口々に、俺へ罵声を浴びせてくる。
だが今の俺に、そんな言葉は通用しない。
何故なら、大切な部下であり片思いの相手でもある早見ちゃんが目の前で傷つけられたんだ。
その怒りは、相当なモンだぜ。
なので、奴らへの恐怖心はわずかにも感じていなかった。
今なら何人相手でも、負ける気がしないぜ。
「お前ら!俺の大切な部下に手を出してタダで済むと思うなよ?」
「はぁ?お前何言っちゃってんの?」
「こいつ頭おかしいぜ!」
「3体1って事、見えてねえんじゃねえの!」
男達が俺を囲むようにして、位置どりをした。
それでも俺は、恐怖を感じず冷静でいる。
人間本気でキレると、逆に冷静になるんだな。
こんな状況になって、初めて知ったぜ。
俺は指をポキポキと鳴らし、戦闘態勢に入った。
大して喧嘩の経験は無いが、ここは負けるわけにはいかないのだ。
それが男として、上司としてのプライドだ。
そしてその場が静まり返る。
………
………
お互いが睨み合い、隙を窺う。
奴らは三人、長期戦になれば確実にやられる。
ならば先制を仕掛け、二人だけはそこで必ず倒す。
それしか奴らに勝つ方法はない。
「せんぱい!もういいから逃げてください!」
そんな時、体を震わせボタンが引きちぎられた箇所を押さえながら早見ちゃんがそう叫んできた。
相当怖いはずなのに、俺の心配をしてくれるなんて彼女はやっぱり良い子なんだ。
その事を改めて感じ、俺は彼女に言う。
「心配するな。俺が絶対に守るから!」
そう言うと、俺は三人の中の一人に先制攻撃を仕掛けた。
喧嘩の素人だと丸分かりな右ストレート、それを余裕で躱されて俺は体制を崩す。
やばい!後ろを取られた!
そう思った時にはすでに遅く、思いっきり後ろから殴られた。
猛烈な痛みが身体中を走り、一瞬意識が飛んだ。
「わかったか?もう俺たちに逆らうなよ」
「本当バカだなお前」
「そこで死んでろ」
そう言われた俺は、地面で倒れ込んでいた。
身体中が痛すぎて、立ち上がる事も出来ない。
そして男達は、ゆっくりと早見ちゃんの方へと歩いて行く。
止めないと。
俺が止めないで、いったい誰が止めるんだ。
そう思い、激痛が走る体を必死に起こして早見ちゃんの元へと走った。
「ハァハァハァ、やめろ」
早見ちゃんの前に立ち、両手を広げ三人を睨みつける。
絶対に早見ちゃんには指一本触れさせないぞ。
「またお前か」
「おっさんは引っ込んでろって」
「マジで殺すぞ」
三人が口々に暴言を吐き、俺を殴りまくる。
だが俺は、一歩も動かなかった。
もう奴らと戦う力は無い。
でも、早見ちゃんの変わりに犠牲になる事だけは出来る。
俺が殴られる事で、奴らの気が済むならいくらでも殴られる覚悟は出来ていたのだ。
ひたすら殴られる俺を、早見ちゃんは涙を流しながら見ていた。
「やめて、やめて」と言う声は聞こえたが、奴らには全く届いていないようだ。
殴られ始めて数分が経った時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
その音はどんどんこの公園に近づいて来る。
「おい、これまずいんじゃねえか」
「そうだな。逃げるぞ!」
「おう」
男達が殴るのをやめ、そそくさと逃げて行った。
俺はと言うと、もう一歩も動く事は出来ずその場で倒れている。
「……せんぱい?」
小さな声で、早見ちゃんが囁いてくる。
だが俺は、返答しようにも声が出せなかった。
「せんぱい。ねえせんぱい。せんぱいってば!」
早見ちゃんが相当心配してくれてるのが伝わってくる。
なんとか安心はさせたいのだが、声を出す気力が出ない。
俺の体を摩る早見ちゃん。
それに反応するかのように、笑顔を見せた。
「よかった……。せんぱい……本当に……ありがとうござ……ま……た」
早見ちゃんが泣きじゃくりながら、お礼を言ってきた。
こんな早見ちゃん、初めて見たな。
ちょっと得した気分になった。
そして警察が到着し、早見ちゃんは事情を聞かれ俺は救急車で運ばれた。
通りすがった近所に住むおばさんが、警察に通報してくれたらしい。
早見ちゃんの情報から、すぐにあの男達は捕まったようだ。
しかし俺は、全治3日間の怪我を負ってしまった。
◇◇◇◇
4日後ーー。
久しぶりに会社へと出勤する。
いつもの時間に起き、いつもの時間に家を出た。
この通勤時の風景、なんだか懐かしく感じるな。
そしてこの場所、商店街入り口地点。
俺はいつもここで、心愛と話をしていた。
しかし、今回の件で心愛になんの連絡もせず突然行かなくなったからもう来てはくれないだろう。
そんな風に思っていると、聞き覚えのある挨拶が後ろから聞こえてきた。
「おはようです!神谷さん」
「おはよ……心愛」
驚きながらも、俺は挨拶を返した。
だが心愛の方は、いつも通りの様子を見せる。
「心愛、その……色々あってな」
「大丈夫ですよ。私は、神谷さんが元気ならそれで良いです」
そう言って、心愛はニコッと微笑んだ。
そして興味の対象を早見ちゃんから俺へと変更したようだ。
「なんだお前?」
「何俺たちの邪魔しちゃってんの?」
「ヒーロー気取りですかこの野郎!」
男達が口々に、俺へ罵声を浴びせてくる。
だが今の俺に、そんな言葉は通用しない。
何故なら、大切な部下であり片思いの相手でもある早見ちゃんが目の前で傷つけられたんだ。
その怒りは、相当なモンだぜ。
なので、奴らへの恐怖心はわずかにも感じていなかった。
今なら何人相手でも、負ける気がしないぜ。
「お前ら!俺の大切な部下に手を出してタダで済むと思うなよ?」
「はぁ?お前何言っちゃってんの?」
「こいつ頭おかしいぜ!」
「3体1って事、見えてねえんじゃねえの!」
男達が俺を囲むようにして、位置どりをした。
それでも俺は、恐怖を感じず冷静でいる。
人間本気でキレると、逆に冷静になるんだな。
こんな状況になって、初めて知ったぜ。
俺は指をポキポキと鳴らし、戦闘態勢に入った。
大して喧嘩の経験は無いが、ここは負けるわけにはいかないのだ。
それが男として、上司としてのプライドだ。
そしてその場が静まり返る。
………
………
お互いが睨み合い、隙を窺う。
奴らは三人、長期戦になれば確実にやられる。
ならば先制を仕掛け、二人だけはそこで必ず倒す。
それしか奴らに勝つ方法はない。
「せんぱい!もういいから逃げてください!」
そんな時、体を震わせボタンが引きちぎられた箇所を押さえながら早見ちゃんがそう叫んできた。
相当怖いはずなのに、俺の心配をしてくれるなんて彼女はやっぱり良い子なんだ。
その事を改めて感じ、俺は彼女に言う。
「心配するな。俺が絶対に守るから!」
そう言うと、俺は三人の中の一人に先制攻撃を仕掛けた。
喧嘩の素人だと丸分かりな右ストレート、それを余裕で躱されて俺は体制を崩す。
やばい!後ろを取られた!
そう思った時にはすでに遅く、思いっきり後ろから殴られた。
猛烈な痛みが身体中を走り、一瞬意識が飛んだ。
「わかったか?もう俺たちに逆らうなよ」
「本当バカだなお前」
「そこで死んでろ」
そう言われた俺は、地面で倒れ込んでいた。
身体中が痛すぎて、立ち上がる事も出来ない。
そして男達は、ゆっくりと早見ちゃんの方へと歩いて行く。
止めないと。
俺が止めないで、いったい誰が止めるんだ。
そう思い、激痛が走る体を必死に起こして早見ちゃんの元へと走った。
「ハァハァハァ、やめろ」
早見ちゃんの前に立ち、両手を広げ三人を睨みつける。
絶対に早見ちゃんには指一本触れさせないぞ。
「またお前か」
「おっさんは引っ込んでろって」
「マジで殺すぞ」
三人が口々に暴言を吐き、俺を殴りまくる。
だが俺は、一歩も動かなかった。
もう奴らと戦う力は無い。
でも、早見ちゃんの変わりに犠牲になる事だけは出来る。
俺が殴られる事で、奴らの気が済むならいくらでも殴られる覚悟は出来ていたのだ。
ひたすら殴られる俺を、早見ちゃんは涙を流しながら見ていた。
「やめて、やめて」と言う声は聞こえたが、奴らには全く届いていないようだ。
殴られ始めて数分が経った時、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
その音はどんどんこの公園に近づいて来る。
「おい、これまずいんじゃねえか」
「そうだな。逃げるぞ!」
「おう」
男達が殴るのをやめ、そそくさと逃げて行った。
俺はと言うと、もう一歩も動く事は出来ずその場で倒れている。
「……せんぱい?」
小さな声で、早見ちゃんが囁いてくる。
だが俺は、返答しようにも声が出せなかった。
「せんぱい。ねえせんぱい。せんぱいってば!」
早見ちゃんが相当心配してくれてるのが伝わってくる。
なんとか安心はさせたいのだが、声を出す気力が出ない。
俺の体を摩る早見ちゃん。
それに反応するかのように、笑顔を見せた。
「よかった……。せんぱい……本当に……ありがとうござ……ま……た」
早見ちゃんが泣きじゃくりながら、お礼を言ってきた。
こんな早見ちゃん、初めて見たな。
ちょっと得した気分になった。
そして警察が到着し、早見ちゃんは事情を聞かれ俺は救急車で運ばれた。
通りすがった近所に住むおばさんが、警察に通報してくれたらしい。
早見ちゃんの情報から、すぐにあの男達は捕まったようだ。
しかし俺は、全治3日間の怪我を負ってしまった。
◇◇◇◇
4日後ーー。
久しぶりに会社へと出勤する。
いつもの時間に起き、いつもの時間に家を出た。
この通勤時の風景、なんだか懐かしく感じるな。
そしてこの場所、商店街入り口地点。
俺はいつもここで、心愛と話をしていた。
しかし、今回の件で心愛になんの連絡もせず突然行かなくなったからもう来てはくれないだろう。
そんな風に思っていると、聞き覚えのある挨拶が後ろから聞こえてきた。
「おはようです!神谷さん」
「おはよ……心愛」
驚きながらも、俺は挨拶を返した。
だが心愛の方は、いつも通りの様子を見せる。
「心愛、その……色々あってな」
「大丈夫ですよ。私は、神谷さんが元気ならそれで良いです」
そう言って、心愛はニコッと微笑んだ。
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