サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。

チョコズキ

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ファン第一号と片思いの相手

第25話 心愛へのプレゼント

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 俺は今、心愛とゆっくり話をしていた。
 話の内容は、主に土曜日の事だ。

 心愛は驚きながらも、すごく心配してくれていた。
 本当にいい奴だ。

 「神谷さんってやっぱりすごいですね!」
 「そうか?ハハハ」
 「生命力だけ見たら、ゴキブリと同じですよ。ゴ・キ・ブ・リ♪」
 「何故二回も言った?大事な事だから二回言いましたとかは通用しないからな」
 「ポイントとして、皆さんに聞いて欲しかったので」
 「俺がゴキブリだと言う情報を、俺以外の誰に聞かせようとしてるんだ」

 年上の俺に向かって、なんて事を言いやがる。
 本当、失礼極まりない女子高生だぜ。

 そして俺の反応を見て、大爆笑をしている心愛。
 その笑顔はまるで、幼い子供にしか見えなかった。

 「冗談はさておき、結局部下の人には告白出来たんですか?」
 「いや……それは……」
 「出来てないんですね。ウケます」
 「いやいや、全くウケる要素が一つも見当たらないんだけど」
 「なんで告白しなかったんですか?」
 「俺にも色々あるんだ」
 「そうですか。経験不足ってやつなんですね」
 「話を聞いていたか?どう言う解釈をしたらそうなった」

 心愛は全部お見通しですと言う顔で、俺を見てくる。

 何と言う洞察力。
 今の女子高生は、本当に恐ろしい。

 「まあ、経験が無いと言うのはあながち間違えでもない」
 「ですよね」
 「告白と言うのは、思ってる以上にハードルの高いものなのかもしれないな」
 「確かに。ただ気持ちを伝えると言っても、やっぱりそれなりの覚悟が必要ですし」
 「何だ心愛、すごく深い事を言うな」
 「神谷さんよりかは色々と経験はありますから」
 「まいりました」

 心愛が勝ち誇った顔で言ってきた。
 なので俺は、反射的に頭を下げる。

 女子高生に経験で負けるとは、とても惨めだ。
 だがそれよりも、心愛が色々と経験している方が問題なのではないか?

 だってまだ女子高生だろ。
 そんな歳で、何を経験してるって言うんだよ。

 そこを深掘りしたかったが、聞くのが怖かったのでやめてしまった。

 すると心愛が、下を向いてる俺の事を覗き込むようにして話をしてくる。

 「あんまり深刻にならなくても大丈夫ですよ」
 「そ……そうか」
 「だって神谷さん、すごく素敵な男性ですから」
 「本当に思ってるか?」
 「当たり前じゃないですか。私は神谷さんのファン第一号ですよ?」
 「ハハハ、そうだったな」

 心愛の言葉で、何だか気持ちが楽になった。

 そして俺は、心愛に渡そうと思って持ってきていた物があった事を思い出す。

 「そうそう、心愛に渡そうと思っていた物があるんだった」
 「え?神谷さんが私にプレゼントですか!」
 「そんなに驚く事か?」
 「はい!神谷さんは、ファンサービスがあまり出来ない人なのかと思ってたので」
 「ファンサービスって……」

 心愛の顔を見ると、とてもワクワクしていることが伝わってくる。

 そんなに期待されるような物ではないのだが……。
 そう思いながら、鞄の中から物を取り出す。

 そして【ザッカヤ】と書かれた袋に入った物を、心愛に渡した。

 「はいこれ」
 「あのう……これって」
 「そうだ。土曜日に俺が部下に渡そうと思ってた物だ」
 「そんな大事な物をどうして私に?」
 「まあ何て言うか、これまでのお礼みたいなもんだ。誰か好きな人とか出来たら、それを使ってくれ」
 「ありがとうございます。また機会があれば使わせてもらいます」

 心愛がお礼を言うと、早速中身を確認し始める。
 その様子を満足そうな顔で見守っていた。

 俺自身、あの商品を見つけた時は結構嬉しかったからな。
 心愛も喜ぶに違いないと思っていた。

 しかし、物を見た心愛の顔は何だかそこまで嬉しそうじゃない表情を浮かべていた。

 「神谷さん、この石土曜日にもチラっとは見たんですけどあんまり趣味のいい物じゃないですよね」
 「うそ……。俺の中では結構いい感じだと思ってたのだが……」
 「いやいや、今の若い子にはウケないですよ。部下の人にあげなくて正解でしたね」
 「そうだったのか……。心愛もいらないなら捨てるか返品してもいいからな」
 「せっかく頂いた物なので、大切にしますよ」

 心愛はそう言うと、すぐ様鞄の中にしまった。
 少しニコッとしていた様にも見えたが、気のせいか。

 そしてそろそろ、学校と会社へ向かう時間になっていた。

 「それじゃあ行くか?」
 「そうですね。あ、そうだ!これどうぞ」
 「お、久しぶりの差し入れか?」
 「はい!心愛ちゃんのスペシャルお弁当です」
 「弁当か。ありがとな」

 心愛は俺に差し入れを渡し、手を振りながら学校へと向かった。
 俺も心愛を見送った後、久しぶりの会社へと続く道を進み始めた。
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