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ファン第一号と片思いの相手
第27話 早見ちゃんの弁当と心愛へのお礼
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俺は本気で祈っていた。
突然やって来た翔が早見ちゃんをどこかに連れて行ってくれる事を……。
このままこの場所で早見ちゃんに居られては、デスクの上にある心愛からもらった弁当を片付ける事が出来ない。
なのでどうにか翔には、早見ちゃんをこの場から遠ざけて欲しいのだ。
「どうして翔さんがここに?」
「あれ?悟から聞いてなかった?俺が早見さんを呼んでるって」
翔がすました顔でそう言った。
しかし、どうしてその事を翔が知っているんだ?
だってそれは、俺が勝手に作り出した作り話だろ。
何がどうなっているのか。
その時は何も分からなかった。
「えっと……、それは聞きましたけど……」
「そっか。じゃあちょっとだけいいかな?」
「分かりました」
そんなやり取りをした後、二人は翔のデスクがある方へと歩いて行った。
俺はその隙に、デスクの上にある心愛の弁当を急いで鞄の中にしまった。
これで万事解決だ。
そして数分が経過した頃、早見ちゃんが俺の元へと戻って来た。
「せんぱい、では私のお弁当を食べて下さい♪」
「本当にいいのか?」
「当たり前です♪せんぱいの為に作って来たお弁当ですから」
「そう言う事なら、遠慮なくいただくよ」
早見ちゃんから弁当を受け取り、自分のデスクに置いた。
可愛らしい弁当箱を開けると、中はとてもカラフルな構成になっている。
ありえない。
この弁当の内容は、多分だが自分の好みを敷き詰めただけなのではないだろうか。
だって普通、誰かに渡す弁当と言うのは定番な物を取り入れるだろ?
だがこの弁当には、一切それが無い。
あるのはフルーツと、明るい色が付いた食材だけ。
全くもって、食欲がそそられなかった。
「さあせんぱい、食べて下さい♪」
「お……おう。いただきます」
俺が最初に口にしたのは、ただ切られただけのパプリカだ。
味付けは何もなく、ただただ生のパプリカを俺は食べている。
その様子を、早見ちゃんはニコニコしながら見てきていた。
それもそれで、まずいなんて顔が出来ないのでとても食べにくい。
そして昼休みギリギリで、何とか弁当を食べ切る事が出来たのだが……。
俺の隣で、早見ちゃんが早く感想を聞かせろと言う顔をしながら待っていた。
「せんぱい、どうでした?おいしかったですか?」
「ま……まあ、美味かったぞ」
「何ですかその薄い反応。私が作ったお弁当なんですから、もっと喜んでくださいよ」
「そう言われてもな。みんながいるし……」
それに、そんなに喜べるほどの味でもなかったんだよな。
口が裂けても本人には言えないが。
「分かりました。ではせんぱい、明日も作ってきてあげますね♪」
「え?」
「何ですかその反応?嬉しくないですか?」
「い……いや、早見ちゃんが大変じゃないかなって……」
「全然ですよ!だって私は、せんぱいに命を助けられましたから。これくらい余裕です♪」
「そ……そうなのか。早見ちゃんが大丈夫なら、遠慮なくお願いするよ」
こうして俺は、明日から早見ちゃんが作った弁当を昼ご飯として食べなくてはならなくなった。
いつか腹を壊してしまわないかと心配しながら、午後の仕事を開始した。
そしてその日の夕方、翔に今日の昼の事を聞いた。
したら理由はとても単純な物だった。
「全部聞こえてたから。それに何か訳ありっぽかったし」と、すました顔で言われてしまった。
どこまでいっても、かっこいい奴だ。
◇◇◇◇
次の日の朝。
俺はいつもの時間に、商店街の入り口にやって来ていた。
すると、いつもの女子高生が俺に気づいて元気に挨拶をしてくる。
「おはようです!神谷さん」
「おはよ。心愛」
恒例の挨拶が終わると、俺はすぐに鞄の中から弁当箱を取り出す。
そして取り出した弁当箱を、心愛に渡しながら弁当の感想を言う。
「これ、ありがとな。すごく美味かったぞ」
「よかったです。それで?他に感想はありませんか?」
「そうだな……」
確か心愛は、具体的な部分までの感想を欲しがる奴だったよな……。
やばい、全然考えてなかったぜ。
俺は必死に昨日の弁当の味を思い出し、心愛に伝える。
「……パプリカとかいい味してたよな」
「パプリカですか?私、昨日のお弁当には入れてなかったと思うんですけど」
心愛が不思議そうな顔をして、こちらを見つめてくる。
それはそうだ。
パプリカの入った弁当は、早見ちゃんの物なのだから。
完全にやってしまった。
何故か咄嗟に思い出した物が、パプリカだったのだ。
たぶん、一番印象に残っていたからだろう。
別の意味で。
「ハハハ。まあそれは冗談として、全体的にバランスが良くてほんと美味かったぞ」
「それが今出来る、神谷さんの精一杯なんですね」
「察してくれてありがとう」
「どんまいです」
何とかごまかし、弁当の話題は終了した。
すると、心愛が何かモジモジとしながら言いたそうにしていた。
「心愛?」
「あ……その、神谷さんに言いたい事があって」
「何だ?」
心愛が俺と全く目を合わせずに、言葉を発する。
「私とお出掛けしてくれませんか?」
「お出掛け?」
「はい。前に、アドバイスをしたからお礼をしてくれるって言ってたので……」
「そのお礼が、お出掛けって事か?」
「駄目ですか?」
確かにお礼はすると言ったが……。
女子高生とお出掛けって、世間の目は大丈夫なのだろうか。
しかし、心愛のあんな目を見せられては断れねえよな。
「分かった。いいぜ」
「本当ですか!」
「ああ」
「では詳しい事はLimeで伝えるので、交換よろしくお願いします!」
「了解」
こうして俺は、心愛とお出掛けをする事となり連絡先の交換までしてしまった。
女子高生とサラリーマンが、お出掛けって……。
大丈夫なのだろうか。
突然やって来た翔が早見ちゃんをどこかに連れて行ってくれる事を……。
このままこの場所で早見ちゃんに居られては、デスクの上にある心愛からもらった弁当を片付ける事が出来ない。
なのでどうにか翔には、早見ちゃんをこの場から遠ざけて欲しいのだ。
「どうして翔さんがここに?」
「あれ?悟から聞いてなかった?俺が早見さんを呼んでるって」
翔がすました顔でそう言った。
しかし、どうしてその事を翔が知っているんだ?
だってそれは、俺が勝手に作り出した作り話だろ。
何がどうなっているのか。
その時は何も分からなかった。
「えっと……、それは聞きましたけど……」
「そっか。じゃあちょっとだけいいかな?」
「分かりました」
そんなやり取りをした後、二人は翔のデスクがある方へと歩いて行った。
俺はその隙に、デスクの上にある心愛の弁当を急いで鞄の中にしまった。
これで万事解決だ。
そして数分が経過した頃、早見ちゃんが俺の元へと戻って来た。
「せんぱい、では私のお弁当を食べて下さい♪」
「本当にいいのか?」
「当たり前です♪せんぱいの為に作って来たお弁当ですから」
「そう言う事なら、遠慮なくいただくよ」
早見ちゃんから弁当を受け取り、自分のデスクに置いた。
可愛らしい弁当箱を開けると、中はとてもカラフルな構成になっている。
ありえない。
この弁当の内容は、多分だが自分の好みを敷き詰めただけなのではないだろうか。
だって普通、誰かに渡す弁当と言うのは定番な物を取り入れるだろ?
だがこの弁当には、一切それが無い。
あるのはフルーツと、明るい色が付いた食材だけ。
全くもって、食欲がそそられなかった。
「さあせんぱい、食べて下さい♪」
「お……おう。いただきます」
俺が最初に口にしたのは、ただ切られただけのパプリカだ。
味付けは何もなく、ただただ生のパプリカを俺は食べている。
その様子を、早見ちゃんはニコニコしながら見てきていた。
それもそれで、まずいなんて顔が出来ないのでとても食べにくい。
そして昼休みギリギリで、何とか弁当を食べ切る事が出来たのだが……。
俺の隣で、早見ちゃんが早く感想を聞かせろと言う顔をしながら待っていた。
「せんぱい、どうでした?おいしかったですか?」
「ま……まあ、美味かったぞ」
「何ですかその薄い反応。私が作ったお弁当なんですから、もっと喜んでくださいよ」
「そう言われてもな。みんながいるし……」
それに、そんなに喜べるほどの味でもなかったんだよな。
口が裂けても本人には言えないが。
「分かりました。ではせんぱい、明日も作ってきてあげますね♪」
「え?」
「何ですかその反応?嬉しくないですか?」
「い……いや、早見ちゃんが大変じゃないかなって……」
「全然ですよ!だって私は、せんぱいに命を助けられましたから。これくらい余裕です♪」
「そ……そうなのか。早見ちゃんが大丈夫なら、遠慮なくお願いするよ」
こうして俺は、明日から早見ちゃんが作った弁当を昼ご飯として食べなくてはならなくなった。
いつか腹を壊してしまわないかと心配しながら、午後の仕事を開始した。
そしてその日の夕方、翔に今日の昼の事を聞いた。
したら理由はとても単純な物だった。
「全部聞こえてたから。それに何か訳ありっぽかったし」と、すました顔で言われてしまった。
どこまでいっても、かっこいい奴だ。
◇◇◇◇
次の日の朝。
俺はいつもの時間に、商店街の入り口にやって来ていた。
すると、いつもの女子高生が俺に気づいて元気に挨拶をしてくる。
「おはようです!神谷さん」
「おはよ。心愛」
恒例の挨拶が終わると、俺はすぐに鞄の中から弁当箱を取り出す。
そして取り出した弁当箱を、心愛に渡しながら弁当の感想を言う。
「これ、ありがとな。すごく美味かったぞ」
「よかったです。それで?他に感想はありませんか?」
「そうだな……」
確か心愛は、具体的な部分までの感想を欲しがる奴だったよな……。
やばい、全然考えてなかったぜ。
俺は必死に昨日の弁当の味を思い出し、心愛に伝える。
「……パプリカとかいい味してたよな」
「パプリカですか?私、昨日のお弁当には入れてなかったと思うんですけど」
心愛が不思議そうな顔をして、こちらを見つめてくる。
それはそうだ。
パプリカの入った弁当は、早見ちゃんの物なのだから。
完全にやってしまった。
何故か咄嗟に思い出した物が、パプリカだったのだ。
たぶん、一番印象に残っていたからだろう。
別の意味で。
「ハハハ。まあそれは冗談として、全体的にバランスが良くてほんと美味かったぞ」
「それが今出来る、神谷さんの精一杯なんですね」
「察してくれてありがとう」
「どんまいです」
何とかごまかし、弁当の話題は終了した。
すると、心愛が何かモジモジとしながら言いたそうにしていた。
「心愛?」
「あ……その、神谷さんに言いたい事があって」
「何だ?」
心愛が俺と全く目を合わせずに、言葉を発する。
「私とお出掛けしてくれませんか?」
「お出掛け?」
「はい。前に、アドバイスをしたからお礼をしてくれるって言ってたので……」
「そのお礼が、お出掛けって事か?」
「駄目ですか?」
確かにお礼はすると言ったが……。
女子高生とお出掛けって、世間の目は大丈夫なのだろうか。
しかし、心愛のあんな目を見せられては断れねえよな。
「分かった。いいぜ」
「本当ですか!」
「ああ」
「では詳しい事はLimeで伝えるので、交換よろしくお願いします!」
「了解」
こうして俺は、心愛とお出掛けをする事となり連絡先の交換までしてしまった。
女子高生とサラリーマンが、お出掛けって……。
大丈夫なのだろうか。
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