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新プロジェクトとニューチューバー
第45話 心愛と映画
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土曜日の朝。
時刻は10時30分。
大型ショッピングモールの中にある映画館の入り口で、俺はスマホを弄りながら心愛が来るのを待っていた。
第三者から見ると彼氏が彼女をただただ待っている様子に見えるかも知れないが、俺たちの関係はそんな普通なもんじゃない。
ではどう言う関係なんですか?と質問された時、俺はこう答える。
ファンになった者となられた者だ……と。
「おはようです!神谷さん」
「おお心愛、おはよ」
「私を待っていた神谷さん、なんかイケおじって感じで渋かったですよ」
「来てたんならさっさと声かけろよ」
「イケおじバージョンの神谷さんを盗撮するのも、ファンの勤めですから」
そう言いつつ、俺がスマホを弄っている姿の盗撮写真を心愛が見せてくる。
女子高生がおっさんの盗撮をするのはなんか大丈夫そうに思えるけど、おっさんが女子高生の盗撮をしたら秒でアウトって思えるのは一体何でなんだ?
どっちの種族にも人権はあるし同じように生きてるだろ。
男だから~とか女だから~なんて理由は、今のこのご時世差別に繋がりかねないから通用しないだろうし。
まあ、こんな事をいちいち考えるのはナンセンスなんだろうな。
答えは至ってシンプルなのだから。
……歴史だ。
「か~み~や~さ~ん!何で決め顔してるんですか?」
「え……決め顔?」
「はい、すごくカッコつけた顔になってましたよ」
「……マジか。頭の中でちょっと色々あってな」
「それはつまり、頭の中でカッコつけてたって事ですか?」
「否定はせん」
そんないつもの馬鹿みたいな雑談をした後、何の映画を観るか決める為に映画館の中をウロウロとし始めた。
お洒落な女子高生と今時とはかけ離れてるおっさんの二人が並んで歩いているからか、周りの人達からジロジロと見られている様な気がする。
別に変な関係ではないので、みなさんどうか心配なさらずに。
「神谷さんは観たい映画、決めて来てくれました?」
「まあ、一応は決めて来たかな」
「どれですか?」
「あのゾンビがいっぱい出てくるやつか、あっちの感動的なアニメ映画」
「じゃあこっちの純愛ラブストーリーにしましょう」
「もう決めてんじゃねえか!何で聞いてきたんだよ」
「確認したかったんです!神谷さんが前に言ってくれた、その日は全力で一緒に楽しもうって言葉が嘘じゃないってことを」
「……はぁ、嘘なんてつくはずないだろ。もう心愛には嘘はつかないって決めてるし」
「う……嘘じゃなかったって確認が取れたんで、チケット買いに行きますよ!」
突然心愛の様子がおかしくなり、思いっきり俺は手を引っ張られた。
少しだけ心愛の表情が見えたのだが、すごく微笑んでいたようだった。
◇◇◇
「なかなか面白かったな」
「ほんとですか?神谷さん序盤寝てましたよね」
「ば……バレてたか。まあ寝てたけど、中盤から終盤はしっかり観てたぞ」
「じゃあ具体的にどこが面白かったか教えてくださいよ」
「全然いいけど。まずはあそこだろ。主人公の男の子がヒロインの女の子の手術費用を集めるために、あの手この手を使うシーン。あそこはやばかったなぁ」
「うんうん。あのシーンは私も泣きました。女の子と言う生き物は、自分の為に必死になってくれる男の子に弱いんですよ」
「そうなのか。それは勉強になった」
「いかにもポイント稼ぎみたいな必死さは逆に冷めるのでやめてくださいね」
「あ……ああ」
その言い方だと、なんか俺がポイント稼ぎに必死な男みたいだからやめて頂きたい。
この後も、俺たちは映画の感想を言い合いながらカフェでお茶をした。
一人映画も結構好きなのだが、観終わった後にこうやって誰かと感想を言い合えると言うのも悪くないな。
「神谷さん!このショッピングモールの中庭には、大きなクリスマスツリーがあるみたいです!」
「へぇ、そうか。もうクリスマスの時期だもんなぁ」
「ちょっと反応薄すぎないですか?クリスマスツリーって聞いたら普通はもっとわーい!クリスマスツリー最高!!テンション上がりすぎて大気圏突破しちゃったーみたいな感じになると思うんですけど」
「いやいや、それはならんだろ。逆にクリスマスツリーってワードだけで、テンションが大気圏突破する奴を俺も一度見てみたくなったぞ」
「あ~あ、神谷さんはクリスマスツリーに興味ないんですね~。見たかったなぁクリスマスツリー」
心愛のこの言い方は、行きたいからお前も一緒に来いと言うアピールだ。
これは一緒に行かないと確実に機嫌を損ねるだろうな。
仕方ない、別に帰ってもする事はないし付き合ってやるか。
「まあ別に、一緒に行ってやってもいいぞ」
「誘い方がアウトです。やり直してください」
……は?
クリスマスツリーを見たがってるのは君だよな?
なんか今の状況だと、俺の方が立場下な感じがするんだが。
「クリスマスツリーが見たいんだよな?見に行くか?」
「今のもアウトです。こう言う場合は、自分も見たいと言う思いを伝えて誘ってください。その方が女性側は気持ちが乗りやすくなりますから」
「はいはい。クリスマスツリーが見たいから一緒に観に行かないか?これでいいか?」
「なんか投げやりな感じが見受けられたんですけど、今回は目を瞑りますね。では、クリスマスツリーを見に行きましょうー!」
こうして俺は、心愛とクリスマスツリーを見に行くことになった。
なんか心愛にまんまと嵌められたような気がするが、俺も今回は目を瞑ってやろう。
時刻は10時30分。
大型ショッピングモールの中にある映画館の入り口で、俺はスマホを弄りながら心愛が来るのを待っていた。
第三者から見ると彼氏が彼女をただただ待っている様子に見えるかも知れないが、俺たちの関係はそんな普通なもんじゃない。
ではどう言う関係なんですか?と質問された時、俺はこう答える。
ファンになった者となられた者だ……と。
「おはようです!神谷さん」
「おお心愛、おはよ」
「私を待っていた神谷さん、なんかイケおじって感じで渋かったですよ」
「来てたんならさっさと声かけろよ」
「イケおじバージョンの神谷さんを盗撮するのも、ファンの勤めですから」
そう言いつつ、俺がスマホを弄っている姿の盗撮写真を心愛が見せてくる。
女子高生がおっさんの盗撮をするのはなんか大丈夫そうに思えるけど、おっさんが女子高生の盗撮をしたら秒でアウトって思えるのは一体何でなんだ?
どっちの種族にも人権はあるし同じように生きてるだろ。
男だから~とか女だから~なんて理由は、今のこのご時世差別に繋がりかねないから通用しないだろうし。
まあ、こんな事をいちいち考えるのはナンセンスなんだろうな。
答えは至ってシンプルなのだから。
……歴史だ。
「か~み~や~さ~ん!何で決め顔してるんですか?」
「え……決め顔?」
「はい、すごくカッコつけた顔になってましたよ」
「……マジか。頭の中でちょっと色々あってな」
「それはつまり、頭の中でカッコつけてたって事ですか?」
「否定はせん」
そんないつもの馬鹿みたいな雑談をした後、何の映画を観るか決める為に映画館の中をウロウロとし始めた。
お洒落な女子高生と今時とはかけ離れてるおっさんの二人が並んで歩いているからか、周りの人達からジロジロと見られている様な気がする。
別に変な関係ではないので、みなさんどうか心配なさらずに。
「神谷さんは観たい映画、決めて来てくれました?」
「まあ、一応は決めて来たかな」
「どれですか?」
「あのゾンビがいっぱい出てくるやつか、あっちの感動的なアニメ映画」
「じゃあこっちの純愛ラブストーリーにしましょう」
「もう決めてんじゃねえか!何で聞いてきたんだよ」
「確認したかったんです!神谷さんが前に言ってくれた、その日は全力で一緒に楽しもうって言葉が嘘じゃないってことを」
「……はぁ、嘘なんてつくはずないだろ。もう心愛には嘘はつかないって決めてるし」
「う……嘘じゃなかったって確認が取れたんで、チケット買いに行きますよ!」
突然心愛の様子がおかしくなり、思いっきり俺は手を引っ張られた。
少しだけ心愛の表情が見えたのだが、すごく微笑んでいたようだった。
◇◇◇
「なかなか面白かったな」
「ほんとですか?神谷さん序盤寝てましたよね」
「ば……バレてたか。まあ寝てたけど、中盤から終盤はしっかり観てたぞ」
「じゃあ具体的にどこが面白かったか教えてくださいよ」
「全然いいけど。まずはあそこだろ。主人公の男の子がヒロインの女の子の手術費用を集めるために、あの手この手を使うシーン。あそこはやばかったなぁ」
「うんうん。あのシーンは私も泣きました。女の子と言う生き物は、自分の為に必死になってくれる男の子に弱いんですよ」
「そうなのか。それは勉強になった」
「いかにもポイント稼ぎみたいな必死さは逆に冷めるのでやめてくださいね」
「あ……ああ」
その言い方だと、なんか俺がポイント稼ぎに必死な男みたいだからやめて頂きたい。
この後も、俺たちは映画の感想を言い合いながらカフェでお茶をした。
一人映画も結構好きなのだが、観終わった後にこうやって誰かと感想を言い合えると言うのも悪くないな。
「神谷さん!このショッピングモールの中庭には、大きなクリスマスツリーがあるみたいです!」
「へぇ、そうか。もうクリスマスの時期だもんなぁ」
「ちょっと反応薄すぎないですか?クリスマスツリーって聞いたら普通はもっとわーい!クリスマスツリー最高!!テンション上がりすぎて大気圏突破しちゃったーみたいな感じになると思うんですけど」
「いやいや、それはならんだろ。逆にクリスマスツリーってワードだけで、テンションが大気圏突破する奴を俺も一度見てみたくなったぞ」
「あ~あ、神谷さんはクリスマスツリーに興味ないんですね~。見たかったなぁクリスマスツリー」
心愛のこの言い方は、行きたいからお前も一緒に来いと言うアピールだ。
これは一緒に行かないと確実に機嫌を損ねるだろうな。
仕方ない、別に帰ってもする事はないし付き合ってやるか。
「まあ別に、一緒に行ってやってもいいぞ」
「誘い方がアウトです。やり直してください」
……は?
クリスマスツリーを見たがってるのは君だよな?
なんか今の状況だと、俺の方が立場下な感じがするんだが。
「クリスマスツリーが見たいんだよな?見に行くか?」
「今のもアウトです。こう言う場合は、自分も見たいと言う思いを伝えて誘ってください。その方が女性側は気持ちが乗りやすくなりますから」
「はいはい。クリスマスツリーが見たいから一緒に観に行かないか?これでいいか?」
「なんか投げやりな感じが見受けられたんですけど、今回は目を瞑りますね。では、クリスマスツリーを見に行きましょうー!」
こうして俺は、心愛とクリスマスツリーを見に行くことになった。
なんか心愛にまんまと嵌められたような気がするが、俺も今回は目を瞑ってやろう。
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