サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。

チョコズキ

文字の大きさ
47 / 50
新プロジェクトとニューチューバー

第46話 クリスマスツリーと心愛の怒り

しおりを挟む
 クリスマスツリーを見る為、俺と心愛はショッピングモールの中庭にやって来ていた。
 時刻も18時を過ぎているので、外は来た時よりもだいぶ暗くなっている。
 ツリーに飾られているイルミネーションがとてもキラキラと輝いていて、周りに集まって来ていたカップルや家族を照らしていた。
 
 「見てください神谷さん!すごく綺麗ですよ!」
 「おお、確かに綺麗だな」
 「こんなに大きなクリスマスツリーってなかなか見られる機会も少ないので、しっかり目に焼き付けとかないとですね!」
 「まあ、ここまでのはあんまり見ないよな。写真でも撮ってやろうか?」
 「だったら二人で撮りましょうよ!」

 心愛が近くにいた若いカップルに自分のスマホを渡し、写真を撮って欲しいとお願いした。
 こう言うコミュ力の高さは俺にないところだ。
 是非見習わせて頂こう。

 「さあさあ神谷さん、私の方に近づいて来てください」
 「こ……この辺か?」
 「そうですね。ちょうど私たちの間にクリスマスツリーが入る感じにしたいので、もう少し私に近づけますか?」
 「お……おう」
 「はい、大丈夫です!」

 おいおいまじか。
 肩とかもう当たっているんだが……。
 これってセクハラとか未成年なんとかになったりしませんよね?
 
 スマホを渡されたカップルの彼女の方が、俺たちへ「撮りまーす」と合図を送る。
 その合図を聞いた心愛が、可愛らしくポーズを取りニコッと笑う。
 俺はあまり写真とかは慣れていないので、どうしたらいいか分からず無表情棒立ちのまま撮影に臨んだ。

 「はい、撮れました~!ちょっと確認お願いします」
 「はーい!ありがとうございました!」
 「ありがとうございました」

 撮影してくれた方の方へと心愛が駆け寄る。
 撮られた写真を確認した心愛が、すぐさま俺の元へと帰ってきた。

 「ちょっと神谷さん!何ですかあの写真は!」
 「何って、何だ?」
 「どうして何のポーズも表情もしていないのかって聞いているんです!私一人だけノリノリで、バカみたいじゃないですか!」
 「そう言われても、俺は写真とか慣れてないしなぁ」
 「慣れてなくてもピースと笑顔くらいは出来ますよね!次はちゃんとしてくださいよ!」
 「まあ、努力はする」

 心愛から強く指摘され、俺は今時ポーズというものをスマホで調べた。
 そして心愛が後一枚だけ撮って欲しいと先ほどのカップルにお願いしている間に、ポーズを完璧に頭へ叩き込んだ。

 「神谷さん、次が最後ですからね」
 「分かってる。俺に任せておけ」
 「その自信が逆に怖いですけど」
 「俺が自信満々の時は、大抵物事が良い方向へ行く前兆なんだ」
 「悪い方向の間違じゃないですか?」
 「俺を舐めるなよ」

 俺たちは先ほどと同じ距離感でクリスマスツリーの前に立ち、撮影者の掛け声と共にポーズと表情を作った。
 撮影者がスマホを返しに俺たちの元へとやって来て、良い写真が撮れましたと言って帰っていく。
 若干笑いを堪えてたように見えたのは、気のせいだよな?
 
 「さて、あれだけ自信満々だった神谷さんがどんな風に写っているのか楽しみですねー」
 「凄過ぎて腰抜かすかもな」
 「自分でハードル上げすぎじゃないですか?」
 「それだけ自信があるって事だ」
 
 心愛があまり信用してませんと言わんばかりの表情で、スマホの写真フォルダを開く。
 先程撮ってもらった写真をタップすると、画面に大きく映し出された。

 「……何やってるんですかこれ」
 「どうだ驚いたか?これが今時ポーズのルダハートというやつだ」
 「……はぁ。神谷さんは自分の年齢を考えれないんですかね?」
 「それってまさか……」
 「はい。またやらかしてます」
 「……すまん」

 ちゃんと調べたはずなのだが、なかなか若い者に合わせると言うのは難しいものだな。
 あまり慣れていない事をするのは、自分が傷つかない為にもやめておいた方が良さそうだ。
 
 俺が一人反省会を開いている時、心愛はクリスマスツリーの撮影を必死に行なっていた。
 どれだけツリーが好きなんだよ。
 必死な顔の心愛を眺めていると、スマホを構えた二人組の男性ニューチューバーっぽい連中が俺に話しかけてくる。
 
 「すいませーん!少しなんですけど、インタビューとかって受けていただく事可能だったりしますか?」
 「えっと……、俺ですか?」
 「はい!お兄さんを見た時に思ったんですよ。この人はいかにも一人でクリスマスを過ごしますってタイプだって」
 「それとインタビューにどんな関係が?」
 「今回の企画がクリぼっち男性のさみしいエピソードなので、お兄さんがぴったりかなって」

 なんとも礼儀のなってない連中だ。
 こんな言い方で本当にインタビューを受けてもらえると思っているのか?
 
 「悟お待たせ~。ツリー撮るのすっごく大変だったんだよ~」
 「……え?心愛?」
 「ねえ悟、この人達だ~れ?」

 何なんだ一体。
 さっきまでの心愛と全然キャラが違うし、なぜ俺の事を下の名前で呼んでるんだ?

 「えっと……こちらはお兄さんの妹さんですかね?」
 「妹じゃないですけど」
 「あ、そうなんですね。ではどう言うご関係なんでしょうか?」
 「私は悟の彼女です。それってあなた達に関係ありますか?て言うか、あなた達こそ悟の何なんですか?」
 「……彼女?歳が全然違うように見えるんですが……」
 「そもそも恋に年齢って関係ないですよね。その人の事を好きになったって言う気持ちが全てですし。そんな事も分からないから、全くもってつまらない企画しか出来ないんだと思いますよ。ニューチューバーだからって自分達が私達より偉いとかイケてるとかって変な勘違いしないでもらえますか?あなた達よりも悟るの方が何億倍もかっこいいですし、今年のクリスマスは悟と楽しく過ごすのでさっさと別の場所に消えて欲しいんですけど」
 「す……すいませんでした」

 理由はわからないが、これまで一度も見た事がないくらいにキレてる心愛がそこにいた。
 口調やトーン、表情までもがかなり恐ろしすぎた。
 その威圧感にニューチューバーの二人組も怯えてしまい、俺と心愛へ謝罪をした後すぐにいなくなってしまった。
 
 「……なんか、ありがとな」
 「いえ。私は何にも知らないああ言う人達に、神谷さんを悪く言われるのが嫌なんです。だからちょっとムキになっちゃいました……てへ」
 「ちょっとじゃなく、かなりムキになってたぞ。てへやめろ」
 「悟のいじわる~~」
 「悟って言うな」

 こうして心愛への償いデート?は終了した。
 ……女性は怒らすと怖い。

 
 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...