サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。

チョコズキ

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新プロジェクトとニューチューバー

第47話 翔と居酒屋

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 月曜日の朝、会社に着くなり部長から会議室へ来るようお達しがあった。
 まあ、呼ばれた理由なら検討がつく。
 9割型、俺と翔と早見ちゃんが任されている新規プロジェクトの件だろう。
 裏ではそれなりに動いてはいるが、表立っては未だ何も動きはない。
 それを懸念して、部長は俺たちに招集をかけたのだと思う。

 「お疲れ悟、朝から呼び出しってキツイね」
 「まあな。呼び出されたところで、何も報告出来ることなんてないのになぁ」
 「せめて来週に呼び出してくれてたら、少しは報告出来ることもあったのにね」
 「ごちゃごちゃ言ってても仕方ねえし、パッと行ってパッと終わらそうぜ」
 「うん、そうしよう」

 俺達は会議室へと移動した。
 すでに部長は来ているようで、会議室へ入るとピリついた空気が感じ取れた。

 「お前ら遅いぞ」
 「……すいません」
 「遅くなってしまい申し訳ございませんでした。神谷と二人で、今後の新規プロジェクトの流れを部長に分かりやすく説明するために資料を作成しておりました。」
 「ほう、その資料は?」
 「こちらです」

 翔が鞄の中から数枚の資料を取り出して、部長へと渡した。
 あいつ、あんな資料いつの間に用意してたんだ?
 部長からの呼び出しはついさっきだし、今日準備するのは絶対不可能だよな。
 となると、こう言う事態を想定して事前に準備しておいたって事か。
 ……ありえない。
 なんて仕事の出来る優秀な同期なんだ。
 それに比べて俺ときたら……不甲斐なさすぎるだろ。

 その後は完全に翔ペースとなり、部長はただただ黙って説明を聞いていた。
 翔の説明には指摘出来る箇所が一つもなく、部長はとても悔しそうだった。
 どうせ上司から色々言われてその腹いせを俺達にしようとしてたんだろうけど、人生はそんなに甘くねえっての。
 まあ俺は今回何にもしてないのだが。

 「じゃあこれからもよろしく頼むよ」
 「はい。また何かありましたら部長の方へ報告させて頂きます」
 
 何とか無事に部長への報告会は終了した。
 これも全て、翔がしていた事前準備のおかげだな。

 「ナイスだったぞ翔!」
 「いやぁよかったよ。ちょうど悟や早見さんに確認してもらおうと持って来てた資料があったからさ」
 「……早見ちゃん?あ!つか何で早見ちゃんこの場にいないんだ?」
 「確かね、早見さんが千年堂創設者の令嬢っていう噂が流れて部長達中間管理職の人達がこぞって早見さんに媚を売り始めたんだよ。そんな事もあって、部長が早見さんに何か指示をするって事はなくなったから今日も呼ばれてないんだと思うよ」
 「おお、なんかすごい事になってたんだな。今じゃ早見ちゃんはこの会社の裏ボスって事か」
 「そういう事になるね」

 早見ちゃんやばい問題について色々と二人で話し合った後、今夜久々に翔と飲みに行く約束をした。
 最近は女子高生とばかり絡んでた感じだったので、時々はこう言う大人同士と言うのも悪くない。
 俺は定時で帰る為に、仕事を必死で終わらせた。
 
 
 ◇◇◇

 
 大手居酒屋チェーン店である【鳥平民】。
 おすすめは豊富な種類を取り扱う焼き鳥で、安くて美味いのも特徴の一つだ。

 「やっぱ仕事終わりのこの一杯は格別だな」
 「だねぇ。この一杯の為に仕事を頑張ってるって言っても、過言ではないね」
 「分かってるなぁ、ほんとその通りだぜ」

 楽しくなった俺達はどんどん飲み進めていった。
 会社の愚痴が良い酒のつまみとなり、これは深酒間違いなしだ。
 そして話題は恋愛の方へとシフトチェンジしていき、翔の質問タイムとなる。

 「それでどうなの?」
 「何がだよ」
 「早見さんとだよ。上手くいってるの?」
 「うーん、よくわからんな。前よりかは距離が縮まってるような感じはするけど」
 「悟がもっと積極的にアプローチしていかないと、早見さんが千年堂の令嬢だって噂が広まったから今社内じゃ早見さん人気が凄い事になってるよ。のんびりし過ぎてると、誰かに取られてしまうかも」
 「……だよな」

 早見ちゃんが俺じゃない誰かと付き合ってしまうかもしれないと思った時に、なぜか心の奥底が少しだけ軽くなった。
 この現象が一体何なのか、全くもって理解が出来ない。
 自分がずっと片思いをしている相手が自分じゃない誰かと付き合ってしまうって、普通に考えたらショックすぎて心が重くなるはずだよな?
 なのにその逆で軽くなったって事は、無意識で早見ちゃんが誰かと付き合う事を喜んでしまっていると言う事なのか。
 くそ、わからない。

 「かなり悩んでるね」
 「まあ、ちょっとな」
 「自分の感情がよく分からなくなっているんでしょ」
 「お前はエスパーか」
 「付き合い長いからね。顔見たら大体わかっちゃうよ」
 「ちょっと怖えな」
 「いいから話を聞かせてみな」

 翔に言われるがまま、俺は今の自分のよく分からない感情の説明をした。
 こう言うのは自分一人で抱えてても良くないような気がしたので、誰かに話が出来るならそれがベストだった。
 特に翔なら、このよく分からない感情の答えを出してくれるかもしれない。
 俺は静かに、翔の一言目を待った。



 
 

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