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02夏休みの出来事
ダイヤのネックレス事件01
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(四)ダイヤのネックレス事件
アスファルトの道路の左右で木々が生い茂り、灼熱の太陽がそれらをあぶる。そんな処刑場のような、見ただけで汗が湧き出てくる光景も、今は別世界だ。俺は振動の少ない乗り心地の優れた車に乗って、エアコンの冷風に快適な気分を味わっていた。
トヨタの15人乗りハイエースコミューターGLは、4WDの実力で、山に切り開かれた道をぐんぐん飛ばしていく。運転手は英二の護衛である黒服の一人、車の運転に抜群の才を示す福井さんだ。車内でくつろいでいるのは、総勢6名の『探偵部』と、福井さんを初めとする身の回りの世話係である黒服6名。
そう、今回我々『探偵部』は、英二の山荘に向かっていたのだ。1泊2日の予定で、バーベキューや川釣りや花火などをして遊ぶ予定だった。そもそも前回の『バーベキュー事件』の借りを返すため、英二が「今度こそ安全だ」と額縁付きで保障してきたのが発端だ。これに反対する『探偵部』部員は一人もいなかった。さすがに2度連続襲撃を受けることはないだろうし、増員された黒服たちが身の安全を守ってくれると信じたためだ。
俺は後部座席に座る、今回のホスト役の英二に焦点を合わせた。
「おい英二、何かガムを持ってないか? 口寂しいんだ」
「ガムならブルーベリーがあるぞ。一枚分けてやる。おい結城、渡してやれ」
「はい、英二様」
英二と結城は主従関係にある。だが恋人関係ではなかった。公私は分ける、ということか。彼女は腰を上げ、一枚俺に手渡した。
「ガムはこれで終わりですね」
「サンキュー」
俺は直後、横から抗議の声を浴びせかけられる。
「ちょっと、私もガム欲しいなって思ってたのに!」
『探偵部』の花、飯田奈緒だった。俺は幸運か英二の配慮かは知らないが、片想いの相手の隣の椅子を与えられていたのだ。
俺は苦笑いしてガムを二つに折った。
「じゃあ半分ずつ分けようぜ」
大きい方を差し出すと、奈緒は途端に頬を緩めた。
「優しいんだね」
奈緒だけな。
ふと前の席を見れば、二つの隙間から固く握り合った手と手が確認できる。これは純架と日向の恋人繋ぎだ。俺はガムを噛んでブドウ味を楽しみながら、随分積極的な前席の二人に思考を集中させた。
「畜生純架め、いつの間に辰野さんと……。見せ付けやがって。何て嫌な奴だ」
逆恨みでしかない言葉を吐くと、純架と日向を冷やかしてやろうと、俺は立ち上がって首を伸ばした。
「ん? これは……!」
よく見ると、それはがっちり握手したマネキンの手を、純架と日向がそれぞれの端を掴んで持っているだけだった。純架が俺を見上げる。
「やあ、やっと引っ掛かってくれたね。もういいよ、辰野さん」
「はい」
どうやら後ろの席の俺を騙すために、こんな真似を敢行したらしかった。奇行である。
このためだけにマネキンを買ったのか?
純架はこちらに振り返り、椅子の上に乗って頭を出した。
「英二君、今日は君のご家族は来るのかい?」
英二は一瞬の空白の後、やや言いづらそうに口ごもった。
「……ああ、親父が、な」
親子の関係が良好でないと、言外にほのめかす答え方だった。
車は更に山奥へ分け入ること15分、やがて山荘の屋根が見えてきた。小川のせせらぎが聞こえてくる涼やかな場所で、いよいよ本格的になってきたセミの鳴き声が、対抗するようにさんざめいている。
「着きましたよ、英二様」
福井さんが車を停めた。
山荘は3階建てだった。外観はちょっとしたマンションだ。森林の一角にぽつんとそびえ立つそのたたずまいは、そこだけ高級リゾート地のような雰囲気を漂わせている。ハイエースから一泊分の荷物が入ったケースを引きずりつつ、『探偵部』部員たちは続々と降車した。あまりにも立派な建物に、あちこちから歓声が上がる。
英二が両腕を天に伸ばしつつ語った。
「このログハウスは3階建てだ。1階はRC――鉄筋コンクリート構造の居住空間。2階はノッチ組みのログ壁。3階部分は小屋裏だ。通しボルトや鋼製ダボを入れて耐震性も確保している。ログハウス建築の素材として最高級のウェスタン・レッドシダーを用いているんだ。部屋数自体はそう多くないから、男女それぞれ二人ずつ相部屋で寝てもらうぞ」
奈緒が冷え切っていた車から外に出され、早くも汗をかきながら訴えた。
「エアコンはついてるの? 暑いわ」
「ソーラーパネルと蓄電池があるとはいえ、電気は稀少だ。昼間は窓を開けて風通しを良くするしかないな。まあ冷たい飲み物とお菓子でも出そう」
日向がログハウスをスマホで激写した後、臀部をさすった。
「長く座ってたら腰が痛くなってきました。早速中に入りましょう」
俺も同調してキャリーバッグの車輪を鳴らし、入り口へと通ずる階段へ足をかけようとする。
しかしその前に、英二と結城が先回りして行く手を塞いだ。何事かと一瞬固まる俺と日向。純架がこちらの様子を見咎めたか、そばに歩み寄ってきた。
「どうしたんだい、英二君、菅野さん。ゴールテープの真似かい?」
んなわけないだろ。
英二がにやりと笑い、両手を腰に当てた。ふんぞり返って、さも楽しげに胸を張る。
「なあに、実はちょっと趣向を凝らしていてな。推理好きの俺たち『探偵部』部員たちに――特に純架に――ある娯楽を用意したんだ。結城と相談してな」
俺はぽかんと口を開け――二人を軽く睨んだ。もちろん好意的な視線である。
「またぞろ変なことをやり出したな。どんな内容だ?」
英二はスマホを操作し、俺たちに向けて差し出した。
「この写真を見ろ」
俺たち4名の『用意された側』は、大人しく頭を集めた。携帯電話の画面を視覚に捉える。
「またマネキンかよ」
俺はさっきの純架の奇行を思い出して不愉快になった。ディスプレイには胸像のマネキンが映っており――その首にはきらめくばかりの宝石をあしらった美しいネックレスがかけられている。
結城が説明書を読み上げるように解説した。
「希少性の高い、1カラットの天然ダイヤモンドのネックレスです。大手機関発行の鑑定書もついていますよ。時価にして100万円以上になるでしょう」
俺は頓狂な声を放った。
「ひゃ、百万円?」
奈緒が口笛を吹いて面を上げる。
「三宮君、ひょっとしてこれを私たちにくれるの? もしそうなら大歓迎なんだけど」
答えたのは咳払いを一つした結城だ。
「残念ながらそうではありません。このペンダントは1本しかないのです」
「どういうこと?」
「実は私と英二様とで、これをこの山荘のとある場所に隠しました」
純架が結城の顔面目掛けて、「ダンカン! ダンカンこの野郎!」とビートたけしの物真似を叩き付けた。何の脈絡もない、唐突な奇行だった。
本人は息を切らし、「やってやったぞ」とばかりに得意げな顔をして周囲を見渡す。しかし不快な表情ばかりだということに気が付いて、今度は「何故なんだろう?」と深刻そうに悩み始めた。
お前のそれ、ベテランの医者に看てもらうことをお勧めする。
純架は口の端を吊り上げた。見え透いた随喜が今にもこぼれ落ちそうだ。
「話が見えてきたよ、英二君。つまりは僕らに宝探しをやらせたいんだね? この山荘に存在するダイヤのペンダントを発見した先着一名が、それをもらえるという条件で……」
ああ、なるほど。そういうことか。英二が満面の笑みを浮かべた。
「さすがは部長だな、純架。話が早い。その通りだ。これが俺たちが提供する娯楽というわけだ。『探偵部』の人間なら俺たちを出し抜いてみろ、ってことだな。なお刻限は1時間半まで――だいたい日没辺りだ――とする」
俺は広壮なログハウスを見上げてちょっと気をくじかれる。普通のそれとは比べ物にならないでかさだ。これを調べ上げるのか?
「無理ゲーだろ。1時間半でどうやって探し出せってんだ」
英二は想定内の質問だ、とばかりに動じず受け答える。
「もちろんこの山荘全体を調べ尽くすのは時間的に無理がある。そこで、だ」
抜かりはないと言いたげに胸を叩いた。
「俺が5個の質問を受け付ける。ただしそれらはいずれも、答えが『はい』か『いいえ』かのどちらかになるような問いかけだけだ。一人が勝手に浪費しても仕方ないので、4人全員で相談してから代表が問いかけてこい」
英二は気分良さそうに一同を眺め渡す。結城と呼吸を合わせて左右に退き、道を開いた。手を叩く。
「さあ、始まりだ!」
謎解き好きとはいえ、純架はさすがに冷静に、先走ろうとする英二を制した。
「ちょっと待ちたまえ英二君。荷物ぐらい運ばせてくれたまえ。いくら何でも性急過ぎる」
そうだな。英二は自分からこういう催し物をやるのは、その勝気な性格上滅多にないことなので、少し浮き足立っている部分がある。
英二は部長の指摘に鼻白んだ。出鼻をくじかれて少し冷静さを取り戻したようだ。
「ああ、そうだな。おい川津! 男女それぞれの部屋に案内してやれ」
川津と呼ばれた黒服が、俺たち4名を「どうぞこちらへ」と招いた。こうしてようやく、俺たちはログハウスの中に足を踏み入れたのだった。
その広い廊下には、絵画や彫像、花の生けられた花瓶、引き出しの多い洋ダンス、狼の剥製の他、現代アートっぽい車のナンバープレートなどが所狭しと並べられていた。床はフローリングで絨毯が敷かれており、俺は目当てのダイヤのネックレスがどこかに隠されていやしないかと、きょろきょろ見回しつつ先へと進んでいく。
アスファルトの道路の左右で木々が生い茂り、灼熱の太陽がそれらをあぶる。そんな処刑場のような、見ただけで汗が湧き出てくる光景も、今は別世界だ。俺は振動の少ない乗り心地の優れた車に乗って、エアコンの冷風に快適な気分を味わっていた。
トヨタの15人乗りハイエースコミューターGLは、4WDの実力で、山に切り開かれた道をぐんぐん飛ばしていく。運転手は英二の護衛である黒服の一人、車の運転に抜群の才を示す福井さんだ。車内でくつろいでいるのは、総勢6名の『探偵部』と、福井さんを初めとする身の回りの世話係である黒服6名。
そう、今回我々『探偵部』は、英二の山荘に向かっていたのだ。1泊2日の予定で、バーベキューや川釣りや花火などをして遊ぶ予定だった。そもそも前回の『バーベキュー事件』の借りを返すため、英二が「今度こそ安全だ」と額縁付きで保障してきたのが発端だ。これに反対する『探偵部』部員は一人もいなかった。さすがに2度連続襲撃を受けることはないだろうし、増員された黒服たちが身の安全を守ってくれると信じたためだ。
俺は後部座席に座る、今回のホスト役の英二に焦点を合わせた。
「おい英二、何かガムを持ってないか? 口寂しいんだ」
「ガムならブルーベリーがあるぞ。一枚分けてやる。おい結城、渡してやれ」
「はい、英二様」
英二と結城は主従関係にある。だが恋人関係ではなかった。公私は分ける、ということか。彼女は腰を上げ、一枚俺に手渡した。
「ガムはこれで終わりですね」
「サンキュー」
俺は直後、横から抗議の声を浴びせかけられる。
「ちょっと、私もガム欲しいなって思ってたのに!」
『探偵部』の花、飯田奈緒だった。俺は幸運か英二の配慮かは知らないが、片想いの相手の隣の椅子を与えられていたのだ。
俺は苦笑いしてガムを二つに折った。
「じゃあ半分ずつ分けようぜ」
大きい方を差し出すと、奈緒は途端に頬を緩めた。
「優しいんだね」
奈緒だけな。
ふと前の席を見れば、二つの隙間から固く握り合った手と手が確認できる。これは純架と日向の恋人繋ぎだ。俺はガムを噛んでブドウ味を楽しみながら、随分積極的な前席の二人に思考を集中させた。
「畜生純架め、いつの間に辰野さんと……。見せ付けやがって。何て嫌な奴だ」
逆恨みでしかない言葉を吐くと、純架と日向を冷やかしてやろうと、俺は立ち上がって首を伸ばした。
「ん? これは……!」
よく見ると、それはがっちり握手したマネキンの手を、純架と日向がそれぞれの端を掴んで持っているだけだった。純架が俺を見上げる。
「やあ、やっと引っ掛かってくれたね。もういいよ、辰野さん」
「はい」
どうやら後ろの席の俺を騙すために、こんな真似を敢行したらしかった。奇行である。
このためだけにマネキンを買ったのか?
純架はこちらに振り返り、椅子の上に乗って頭を出した。
「英二君、今日は君のご家族は来るのかい?」
英二は一瞬の空白の後、やや言いづらそうに口ごもった。
「……ああ、親父が、な」
親子の関係が良好でないと、言外にほのめかす答え方だった。
車は更に山奥へ分け入ること15分、やがて山荘の屋根が見えてきた。小川のせせらぎが聞こえてくる涼やかな場所で、いよいよ本格的になってきたセミの鳴き声が、対抗するようにさんざめいている。
「着きましたよ、英二様」
福井さんが車を停めた。
山荘は3階建てだった。外観はちょっとしたマンションだ。森林の一角にぽつんとそびえ立つそのたたずまいは、そこだけ高級リゾート地のような雰囲気を漂わせている。ハイエースから一泊分の荷物が入ったケースを引きずりつつ、『探偵部』部員たちは続々と降車した。あまりにも立派な建物に、あちこちから歓声が上がる。
英二が両腕を天に伸ばしつつ語った。
「このログハウスは3階建てだ。1階はRC――鉄筋コンクリート構造の居住空間。2階はノッチ組みのログ壁。3階部分は小屋裏だ。通しボルトや鋼製ダボを入れて耐震性も確保している。ログハウス建築の素材として最高級のウェスタン・レッドシダーを用いているんだ。部屋数自体はそう多くないから、男女それぞれ二人ずつ相部屋で寝てもらうぞ」
奈緒が冷え切っていた車から外に出され、早くも汗をかきながら訴えた。
「エアコンはついてるの? 暑いわ」
「ソーラーパネルと蓄電池があるとはいえ、電気は稀少だ。昼間は窓を開けて風通しを良くするしかないな。まあ冷たい飲み物とお菓子でも出そう」
日向がログハウスをスマホで激写した後、臀部をさすった。
「長く座ってたら腰が痛くなってきました。早速中に入りましょう」
俺も同調してキャリーバッグの車輪を鳴らし、入り口へと通ずる階段へ足をかけようとする。
しかしその前に、英二と結城が先回りして行く手を塞いだ。何事かと一瞬固まる俺と日向。純架がこちらの様子を見咎めたか、そばに歩み寄ってきた。
「どうしたんだい、英二君、菅野さん。ゴールテープの真似かい?」
んなわけないだろ。
英二がにやりと笑い、両手を腰に当てた。ふんぞり返って、さも楽しげに胸を張る。
「なあに、実はちょっと趣向を凝らしていてな。推理好きの俺たち『探偵部』部員たちに――特に純架に――ある娯楽を用意したんだ。結城と相談してな」
俺はぽかんと口を開け――二人を軽く睨んだ。もちろん好意的な視線である。
「またぞろ変なことをやり出したな。どんな内容だ?」
英二はスマホを操作し、俺たちに向けて差し出した。
「この写真を見ろ」
俺たち4名の『用意された側』は、大人しく頭を集めた。携帯電話の画面を視覚に捉える。
「またマネキンかよ」
俺はさっきの純架の奇行を思い出して不愉快になった。ディスプレイには胸像のマネキンが映っており――その首にはきらめくばかりの宝石をあしらった美しいネックレスがかけられている。
結城が説明書を読み上げるように解説した。
「希少性の高い、1カラットの天然ダイヤモンドのネックレスです。大手機関発行の鑑定書もついていますよ。時価にして100万円以上になるでしょう」
俺は頓狂な声を放った。
「ひゃ、百万円?」
奈緒が口笛を吹いて面を上げる。
「三宮君、ひょっとしてこれを私たちにくれるの? もしそうなら大歓迎なんだけど」
答えたのは咳払いを一つした結城だ。
「残念ながらそうではありません。このペンダントは1本しかないのです」
「どういうこと?」
「実は私と英二様とで、これをこの山荘のとある場所に隠しました」
純架が結城の顔面目掛けて、「ダンカン! ダンカンこの野郎!」とビートたけしの物真似を叩き付けた。何の脈絡もない、唐突な奇行だった。
本人は息を切らし、「やってやったぞ」とばかりに得意げな顔をして周囲を見渡す。しかし不快な表情ばかりだということに気が付いて、今度は「何故なんだろう?」と深刻そうに悩み始めた。
お前のそれ、ベテランの医者に看てもらうことをお勧めする。
純架は口の端を吊り上げた。見え透いた随喜が今にもこぼれ落ちそうだ。
「話が見えてきたよ、英二君。つまりは僕らに宝探しをやらせたいんだね? この山荘に存在するダイヤのペンダントを発見した先着一名が、それをもらえるという条件で……」
ああ、なるほど。そういうことか。英二が満面の笑みを浮かべた。
「さすがは部長だな、純架。話が早い。その通りだ。これが俺たちが提供する娯楽というわけだ。『探偵部』の人間なら俺たちを出し抜いてみろ、ってことだな。なお刻限は1時間半まで――だいたい日没辺りだ――とする」
俺は広壮なログハウスを見上げてちょっと気をくじかれる。普通のそれとは比べ物にならないでかさだ。これを調べ上げるのか?
「無理ゲーだろ。1時間半でどうやって探し出せってんだ」
英二は想定内の質問だ、とばかりに動じず受け答える。
「もちろんこの山荘全体を調べ尽くすのは時間的に無理がある。そこで、だ」
抜かりはないと言いたげに胸を叩いた。
「俺が5個の質問を受け付ける。ただしそれらはいずれも、答えが『はい』か『いいえ』かのどちらかになるような問いかけだけだ。一人が勝手に浪費しても仕方ないので、4人全員で相談してから代表が問いかけてこい」
英二は気分良さそうに一同を眺め渡す。結城と呼吸を合わせて左右に退き、道を開いた。手を叩く。
「さあ、始まりだ!」
謎解き好きとはいえ、純架はさすがに冷静に、先走ろうとする英二を制した。
「ちょっと待ちたまえ英二君。荷物ぐらい運ばせてくれたまえ。いくら何でも性急過ぎる」
そうだな。英二は自分からこういう催し物をやるのは、その勝気な性格上滅多にないことなので、少し浮き足立っている部分がある。
英二は部長の指摘に鼻白んだ。出鼻をくじかれて少し冷静さを取り戻したようだ。
「ああ、そうだな。おい川津! 男女それぞれの部屋に案内してやれ」
川津と呼ばれた黒服が、俺たち4名を「どうぞこちらへ」と招いた。こうしてようやく、俺たちはログハウスの中に足を踏み入れたのだった。
その広い廊下には、絵画や彫像、花の生けられた花瓶、引き出しの多い洋ダンス、狼の剥製の他、現代アートっぽい車のナンバープレートなどが所狭しと並べられていた。床はフローリングで絨毯が敷かれており、俺は目当てのダイヤのネックレスがどこかに隠されていやしないかと、きょろきょろ見回しつつ先へと進んでいく。
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