超人類無双~俺は進化し続ける

よなぷー

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 俺は空中から元マーレイを見下ろしながら、ハンシャたちに叫んだ。

「助太刀はありがてえが、これは俺と帝王の喧嘩だ! もう邪魔せず、そこで大人しく見てろ!」

「邪魔って……あんたねえ」

 ミズタがこめかみを指で押さえている。ハンシャは微苦笑した。

「では、ここで見守らせていただきます。ご武勇を」

 とはいえ、さっき治癒の白い光弾を浴びて、俺はすっかり回復してしまった。まあ巨龍に変貌出来た帝王と、これで勝負はどっこいどっこいだろう。俺は奴の左目も潰してやろうと、手刀を構えて急降下した。

『研磨め……! よくもこのわしを……っ!』

 怪物は傷ついた口を開いた。真っ赤な血液をうがいのように音立てながら、その奥で執念の種火を作った。やばい!

「くっ」

 次の瞬間、ドラゴンの火炎放射が俺を襲った。まさかまだ炎を吐けるとは思っていなかったのと、距離が近過ぎたこともあって、俺は回避しきれず左足に被弾した。だが俺から散々ダメージを受けたこともあり、その火力は変身仕立ての頃に比べ、だいぶ弱まっていた。俺の左のすねから下は、即座に炭化することなく、原型をとどめて火傷やけどしたのだった。

「痛ってえ!」

 しかしもちろん激痛が走ることには変わりがない。ただ、女王の力でだいぶ体力が戻っていたらしく、負傷した左足は即座に元通りになった。ミズタが遠くでぼやく。

「あんた、どんどん進化して人間離れしていくわね」

 うるせえな、だから俺を呼んだんだろが。

 何にせよ俺は攻めあぐねた。近づけば炎や爪が待っているし、かといって遠距離では衝撃波が鱗に弾かれる上、『無効化波動』も通じない。短く思考をまとめている間に、黒龍はまた種火を燃やし始めた。再び衝撃波をもらわないよう口を閉ざしたまま、口端から黒煙を湧き立たせる。どうする?

 俺は熟慮の末、自分らしい大博打おおばくちをうつことにした。右手を前方にかざし、その肘を左手で押さえる。そして、そのまま帝王へと突っ込んだ。ミズタとマリが、レンズやハンシャさえもが、俺の行動に仰天して声を上げた。

「炎にやられるわ、研磨!」

 元マーレイが喜悦の声を上げる。

『愚か者め! 焼け死ぬがいい!』

 かっと開いた口から、即座に業火の柱がこちらへと伸びてきた。俺はそれへ――右の手の平より『無効化波動』を放った。衝突した二つの光は、より一層の輝きを放って明滅する。神族たちの悲鳴を背景に、俺はその光輝の乱流へ飛び込んでいった。

 熱くない。『無効化波動』はドラゴンの火炎放射を完全に無力化したのだ。俺はそのまま奴の口腔に突撃すると、構えていた左手を思いっきり振り抜いた。

『があああっ!』

 超人類である老人の断末魔の悲鳴が、俺の頭に響く。俺は相手の頭部を内側から裂断すると、魔龍の口から反転して逃げ去った。巨体が力を失って横倒しに倒れる。振動が伝わってくるような物凄い地響きを立てて、ここに帝王はその命を失ったのだ。

 俺ははぁ、と溜め息をついた。

「やったぁ!」

「とうとう帝王を倒しましたね!」

「素晴らしいです、超人類様!」

 着地した俺の元に大挙飛来する、歓喜に沸いた神族たち。その中でミズタとマリは、人目もはばからず思いっきり号泣して抱きついてきた。精神的な疲労でくたくただった俺は、思わずよろけて彼女らごと地面に倒れる。

「研磨、研磨……!」

「鏡さん……!」

 俺は2人の頭を撫でてやった。ちと照れくさい。

「どうだ、約束守っただろ、俺。必ず戻ってくるってさ」

「うん、うん……!」

 ミズタは泣き笑いで顔をくしゃくしゃにしていた。マリも額をすりすりとこすり付けてくる。

 俺は2人の頭の隙間からハンシャを見た。彼女は俺たちを眺め、幸せそうに微笑んでいる。まさに慈愛の女王といった貫禄かんろくだった。俺も微笑み返す。

 そのときだった。

「――え?」

 俺は信じられないものを見た。ハンシャの首がずれ、頭部が転げ落ちたのだ。切断面からシャワーのように血潮がほとばしる。その後ろにいたのは――

 いたのは――

「写!」

 俺はそこに、まがまがしい黒装束を着込んだ、憎き弟の姿を見い出した。写は誰もが――ハンシャ女王でさえも――『境界認識』をゆるませた一瞬の隙を狙い、背後から接近して、手刀で斬首したのだ。

 女王の体が首を追いかけるように落下する。と同時に、まわりの神族たちが失神したかのように一斉に倒れていった。俺に泣いてすがり付いていたミズタとマリすらも、その全動作を停止させる。ぐっと体重がかかってきた。

「おい、ミズタ、マリ。冗談はよせ……」

 俺は2人が嗚咽を止め、うつろな眼差しを無意味な方向に投じている姿に戦慄せんりつした。がばっと起き上がった俺は、左右に転がったミズタとマリを交互に揺する。

「おい、ミズタ! マリ! 死んだ真似なんかするな! 本気で怒るぞ! 他の連中もそうだ!」

 重なり合うように倒れた神族の女たち。全く動かなくなったミズタとマリ。首を斬られて落ちていったハンシャ。示すところは間違いなく分かっていたが、俺はそれでも受け入れがたくて、必死に愛する――そう、愛していた――2人の肩を掴んで揺さぶった。

「ミズタ! マリ!」

「無駄だよ、研磨」

 写の無慈悲な、ぞっとするような冷酷な声が鼓膜を叩く。それは俺の肺腑はいふに無情な現実を突き刺した。

「ハンシャは僕が殺した。代々の女王の爪から生まれた神族たちも、それで全員死んだ。そして帝王マーレイは研磨の手で殺された……。全ては計画通りだよ」

 俺は瞳孔が開き、半目で人形のように動かなくなった二人を絶望的な思いで眺めた。また奪われた。俺は写に、実の弟に、二度に渡って大事な人々を奪われたのだ。

「てめえ……!」

 俺は爪が食い込んで皮膚が破けそうなほど、両拳を固く握った。ぎりぎりと何か鳴っているなと思ったら、俺の歯軋りの音だった。写は黒いマントをなびかせ、ハンシャがいた場所に浮遊してこちらを面白そうに見つめている。俺はその薄ら笑いに、もう歯止めがきかなかった。

「うつるーっ!」

 俺は大地を蹴り、復讐の鬼と化して写に飛び掛かった。その頬桁ほおげたをぶん殴ろうと、右のパンチを思い切り振りかぶる。だが、奴は叫んだ。

「アシュレ!」

 写のそばに黒地で赤文字の魔方陣が現れた。そこから飛び出してきたのは、無数の火の玉と火炎魔人アシュレ! いつの間にか飛行能力を獲得したらしく、奴は宙に浮遊した。

「どうやら帝王は死んだようだな」

 自分たちが仕える主をこともなげに切り捨てると、アシュレは目を細めて俺を炎の鞭で叩いた。俺はあまりの激痛に空中で止まってしまう。するとそこへ火の玉どもが体当たりしてきた。傷こそ自然治癒能力で治るものの、苦痛の連打にさらされて、俺は仕方なしに写とアシュレから距離を取らざるを得ない。

 火炎魔人は哄笑した。まるで親父とお袋が殺された、あの夜の再現だった。

「鏡研磨よ、帝王を殺してくれてありがとうよ。写は転移時に、俺様は誕生時に見えない烙印らくいんを押されたんだ。帝王に逆らうことが出来なくなる、強固な力を持った烙印をな。だから帝王を殺してくれる存在が必要だった。ハンシャでも良かったが、俺たちは奴より帝王の方が強いと見た」
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