超人類無双~俺は進化し続ける

よなぷー

文字の大きさ
31 / 39

31

しおりを挟む
 写がにやにや笑う。今すぐぶっ殺してやらねば気が済まないほどの、感情を逆撫さかなでする笑い。

「僕とアシュレは帝王を殺せない。でもそれじゃ駄目なんだ。『大統一』によって神の座に登り詰めるには、神界の女王ハンシャ、魔界の帝王マーレイの2人の死が必要だったんだ」

 俺は疑問を叫んだ。

「『大統一』? 神の座? ……詳しくは知らねえが、それは女王ハンシャが死ねば起こるっていう、神界と魔界の一体化のことだろう?」

「何も知らないんだね、研磨。神界の主だけじゃ駄目なんだ。魔界の主も同時に死なないとね。……そら、始まったよ」

 大気が鳴動する。大地がひび割れ、遠くの火山が次々に噴火した。津波のような地鳴りが鳴り響き、それは轟音となって世界を包み込む。『大統一』とやらが開始されたのだ。

 あの両親が炭化した夜、写は俺に言った。『今は君を殺すことはしない。その代わり、必ず異世界に来てもらえるように火炎魔人アシュレに両親殺害を頼んだんだ』。俺は写を睨み殺さんばかりに凝視する。

「俺が進化し続け、魔界の帝王マーレイを倒すことを、おめえら2人は望んでいたんだな。だから俺を神界側につけたんだな」

「そうだよ。僕はね研磨、君を買っていたんだ。そして僕の期待通り、君は動いてくれた。僕からも礼を言うよ。ありがとう」

 アシュレがくっくと笑う。

「俺様は研磨と帝王が戦い始めたと知るや、部下の火球たちと共に、魔方陣で人間界の火山へ行っていた。あそこで溶岩に浸かって能力を高めている間、ずっとお前の勝利を願っていたよ。俺様に何も出来なかったあのときからしたら、大した成長ぶりだ。見事だったぞ、研磨」

 写が世界の崩壊する音に、まるでオーケストラのコンサートか何かのように聞き惚れる。

「僕は待った……このときを……! ああ、美羅みら、今会いに行くからね」

 その、人をあやめたばかりとは思えない自己陶酔がしゃくさわった。俺は受けたばかりの火傷が回復すると、写目掛けて突撃していく。魔人が炎の鞭を構えるが、写が大声で制した。

「構わないよ、アシュレ。僕がる」

 火の玉どもとアシュレがさっと脇にどき、俺と写との間にトンネルを作る。俺は手刀衝撃波でもない、『無効化波動』でもない。ただ一発でもいいから、この鉄拳を叩き込もうと愚直に突進した。写が薄ら笑いを浮かべる。

「殴り合いなら応じるよ、研磨。もう帝王は死んだ。僕らにとって君は用済みなんだよ。穏やかに退場してくれ」

 そして、神速の勢いでこちらへとまっしぐらに飛び出した。俺の右ストレートが屈んで避けられる。次の瞬間、写の鋭い右の突きが俺のどてっ腹を貫通していた。皮膚が、内臓が、脊椎せきついが、滅茶苦茶に粉砕されて背中から飛び出す。

「がはっ……!」

 あまりの痛みに脳が焼けるようだ。写の左手が俺の顔面を鷲掴わしづかみにする。せせら笑いが聞こえた。

「どうやら研磨は凄い回復能力を手に入れたらしい。でも、これなら死ぬでしょ?」

 目の前が真っ青な光で染め上げられた。『無効化波動』だ。写も使えたのだ。俺は超人類としての全ての能力を失った。一時的なものとはいえ、致命傷を負わされた状態でのそれは死を約束する。

「ばいばい、研磨。これでおしまい……!」

 右腕を引っこ抜くと、弟は俺を蹴り飛ばした。俺は無残な姿で落下し、神族たちの死体にバウンドして地面に転がる。痛みどうこうじゃない。全ての力が急速に失われていくのが感じられた。俺は首だけ動かした。

 写……! アシュレ……!

 俺は奴らが仲良く飛び去っていくのを見ながら、意識の摩滅まめつに必死に抵抗していた。無駄な足掻あがきというものだったが……



 人が生きる、というのはどういうことか。俺はふと立ち止まったとき、ふと空を眺めたとき、いつもそんな取り留めのないことを考える。いつぞやの商店街。いつぞやのバクー湖。そこでも俺は自問自答していた。

 なぜ俺は生きているんだろう、と。

 男と女の間に生を受ける。成長する。老いる。死ぬ。ただそれだけの人生。無駄にしか思えない。

 途中でパートナーと子をなすこともあるかもしれない。だがその子供に、お前は何のために生まれたのかと正しく教えられる親など、この世にどれだけいるのだろう? お前の人生は無駄だと正直に言ってやることしか出来ないのではないか?

「また馬鹿なこと考えてる」

 ミズタの声だ。金色の長髪、俺好みの美貌、抜群のスタイル。彼女は白い世界で体育座りする俺に、優しく寄り添って手を取った。俺はその温かみに、思わず涙をこぼしてしまう。

「何を泣いてるんですか?」

 今度はマリの声。赤いショートボブに、紐で耳に引っ掛けた眼鏡。凹凸に乏しい稚拙な肢体。彼女は反対側の手に手を重ねてきた。

「ミズタ……。マリ……」

 守れなかった。救えなかった。いつわりだと、虚像きょぞうだと分かっている2人に対し、それでも俺は落涙して身をゆだねる。謝罪する。

「ごめんな。俺が情けなかったばっかりに……ハンシャを、神族を、2人を死なせちまって……」

 ミズタは俺の手を自身の頬に当てた。柔らかい。

「いいのよ研磨。あんたはもう十分頑張ったわ。あたしやマリやハンシャ様……みんなのことで、自分自身を責めないで」

「鏡さん、貴方が悔やむことはないんです。貴方が出来なかったことは、他の誰でも出来なかったことなんですから……」

 勝手だ。俺は自分自身をなぐさめ、いたわるために、勝手にミズタとマリを創り出し、勝手に喋らせている。何て情けない俺なんだ。俺は慟哭どうこくし、それでも彼女らの言葉にすがりついた。

「俺、生まれてきて良かったのかな? 勉強も出来ず、喧嘩ばっかりして、両親を困らせて……。あげく神界にやってきてもまだ魔人どもや帝王と喧嘩して……。最後は写の奴に負けて死んじまった。何のために、俺は、この世に……」

「好きよ」

「え?」

 俺は顔を上げた。俺の問いかけになぜ唐突な告白が返ってきたのか、不審で理解できなかったからだ。ミズタとマリはこれ以上ない慈悲深い笑みをたたえている。

「あたしは研磨のこと、好きよ。マリも好き。マリも研磨が好きでしょう?」

「はい! 大好きです」

 俺は2人を等分に眺めた。涙が溢れて止まらない。

「ミズタ……! マリ……!」

 声にならない。俺はむせび泣き、同時に答えをさとった。

「俺も好きだよ。二人が大好きだ……!」

 それは簡単な事実。愛する人が、想いを伝えたい相手がいるなら、それだけで……

 しかし2人は消えていく。弾力と温もりをまとった手が、見慣れた姿が、俺の目の前から失われていく。いつまでも笑みは残したまま……

 彼女らは俺の前から消失した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...