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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!

第11話 労災隠し①

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池園先輩から妹さんのお話を聞いてしまった。衝撃的だった。益々伊集院係長のことが分からなくなる。非常識で俺様系な御方だと思っていたけど、哀傷漂う一面がおありのようで……

あぁ、彼の見方が変わってくるじゃないですか。

「おい、休憩はとっくに過ぎてるぞ」
「はっ、も、申し訳ございません!」

哀傷の係長に見つめられ思わずドキッとした。

「ん、何だそのリアクションは? まぁいい。これからを調査する。報告書を見ろ」
「はい。えーと、労働災害の隠蔽ですね」
「そうだ。健康診断の問診で従業員から保健師へタレコミがあった。大した事案じゃないが、展開によっては大物が釣れるかもしれん。いいや釣れるだろう。だから労務係の案件を奪ったのさ」

自信満々だ。そして嬉しそうである。哀傷は何処へ行ったやら……

報告書によると、工場のとある職場で『いじめ』があったと記されている。かなり陰湿な内容だ。班長ら数人が被害者にフォークリフトで追いかけ回し排気ガスを浴びせるなど、悪質な行為を繰り返していた。挙句の果てに接触事故を起こしている。肋骨の骨折……災害と言うより傷害事件なのでは?

「酷いです。訴えられますよ」
「そこは何とかする。気にするな」

え、気にしますよ? 何とかするって、被害者が可哀想です。

けれども係長が目をつけたのはそこではない。職場で怪我した事実を隠していたこと、誰までが把握してたのか?……である。日常的ないじめは目撃者も多いと推測する。報告書通り、職場の長である職長までなのか、それとも上司の係長、もしかしたら管轄のマネージャーまで知ってて虚偽の報告をした可能性も考えられる。工場系の幹部社員は門前専務の天敵である生産担当役員の配下だと、池園先輩から聞いた。だから係長が目をつけたのだろう。

「先ずは現場調査だ。行くぞ」
「かしこまりました」

私どもはアポなしで現場へ向かった。
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