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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!
第10話 物品横領③
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荷台には空パレットが多数積み上げられており、それ以外は古びた段ボールが少しある程度だった。
「あの箱の中身は何だ?」
「あ、えーと……トラックのメンテ用具などです。はい」
おいおい、何か違うっぽいぞ? さっきから超絶偉そうな態度で接してるけど?
「お前、荷台へ上がって確認しろ」
「え、私がですか?」
普通こういうのは男性でしようが……といいますか、『お前』ってなによ。人前なんだから、ちゃんと名前で呼んでよね!
「あ、あの……もう勘弁してください。ホントに急いでるんです」
けれどもこの運転手、何か焦ってる様ね。やっぱり怪しいな。
「おい、早く上がれ」
「かしこまりました」
私は警備員が用意してくれた踏み台を登り、荷台へ上がった。そして疑惑の段ボールの中身を確認する。
「……ああっ、これは何?」
思わず手に取ったのはビニールで包まれた新品のタブレットPC。自社製品だ。段ボールいっぱい入ってる。
「ふん。写真撮っとけ。で、説明してもらおうか。あれは何だ?」
「い、いやぁ、実は頼まれて預かっただけでして……」
「ほーう。詳しく話を聞こうか」
その後、運転手は全てを白状した。首謀者は情報通り幹部社員だった。それに加担した社員が複数名存在する。
全員、人事へ呼びつけ事情聴取を行った結果、タブレットPCは不具合と偽り廃棄処分を装って業者へ横流ししていた。それを通販サイトで売り捌くという手口で被害損額は数百万にのぼるらしい。幹部社員は当然のことながら、協力した社員らも懲戒免職となった。
けれどもこれは犯罪だ。社内だけで片付ける話ではない。警察に被害届を提出する事案だと思うが?
全ては人事労政担当役員である門前専務の指示だと後で聞いたーー
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
※池園視点
わたくしは池園絵梨花。人事Gr人材育成課で新入社員の教育を担当している。オフィスは教育棟と呼ばれる専用施設で本社から徒歩十分の場所にあるが、昼休憩になるといつも彼女が訪れてくる……
「ホントにこれで良かったのでしょうかねー」
相談と言うより愚痴だ。それを毎日のように聞かされる。
「花さん。伊集院係長は会社の指示に従って行動してるだけよ。ま、確かに奇人変人な御方ではあるけれど」
「え、池園先輩! うちの係長ご存知で?」
「だってわたくし、元特命係ですもの」
「何ですってー!?」
そう、実は特命係初代アシスタントはわたくしなのです。謎めいた彼のお目付役を命じられたけど、逆スパイを疑われて配置転換されたの。でもそれは事実。だって彼の目的を知ってしまったから……
ーー伊集院ララ。
二年前、わたくしの同期で親友の彼女が突然失踪した。恐らく財務部で噂されたアレが原因だと思う。そして程なく、元刑事で兄の伊集院翔が中途入社する。
大企業に蔓延る巨大なモンスターを捕まえるためにね。
「花さん、今からお話すること、誰にも言わないって約束してくれる?」
さて、わたくしは綾坂花を少しづつ洗脳させなければならない。
「あの箱の中身は何だ?」
「あ、えーと……トラックのメンテ用具などです。はい」
おいおい、何か違うっぽいぞ? さっきから超絶偉そうな態度で接してるけど?
「お前、荷台へ上がって確認しろ」
「え、私がですか?」
普通こういうのは男性でしようが……といいますか、『お前』ってなによ。人前なんだから、ちゃんと名前で呼んでよね!
「あ、あの……もう勘弁してください。ホントに急いでるんです」
けれどもこの運転手、何か焦ってる様ね。やっぱり怪しいな。
「おい、早く上がれ」
「かしこまりました」
私は警備員が用意してくれた踏み台を登り、荷台へ上がった。そして疑惑の段ボールの中身を確認する。
「……ああっ、これは何?」
思わず手に取ったのはビニールで包まれた新品のタブレットPC。自社製品だ。段ボールいっぱい入ってる。
「ふん。写真撮っとけ。で、説明してもらおうか。あれは何だ?」
「い、いやぁ、実は頼まれて預かっただけでして……」
「ほーう。詳しく話を聞こうか」
その後、運転手は全てを白状した。首謀者は情報通り幹部社員だった。それに加担した社員が複数名存在する。
全員、人事へ呼びつけ事情聴取を行った結果、タブレットPCは不具合と偽り廃棄処分を装って業者へ横流ししていた。それを通販サイトで売り捌くという手口で被害損額は数百万にのぼるらしい。幹部社員は当然のことながら、協力した社員らも懲戒免職となった。
けれどもこれは犯罪だ。社内だけで片付ける話ではない。警察に被害届を提出する事案だと思うが?
全ては人事労政担当役員である門前専務の指示だと後で聞いたーー
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※池園視点
わたくしは池園絵梨花。人事Gr人材育成課で新入社員の教育を担当している。オフィスは教育棟と呼ばれる専用施設で本社から徒歩十分の場所にあるが、昼休憩になるといつも彼女が訪れてくる……
「ホントにこれで良かったのでしょうかねー」
相談と言うより愚痴だ。それを毎日のように聞かされる。
「花さん。伊集院係長は会社の指示に従って行動してるだけよ。ま、確かに奇人変人な御方ではあるけれど」
「え、池園先輩! うちの係長ご存知で?」
「だってわたくし、元特命係ですもの」
「何ですってー!?」
そう、実は特命係初代アシスタントはわたくしなのです。謎めいた彼のお目付役を命じられたけど、逆スパイを疑われて配置転換されたの。でもそれは事実。だって彼の目的を知ってしまったから……
ーー伊集院ララ。
二年前、わたくしの同期で親友の彼女が突然失踪した。恐らく財務部で噂されたアレが原因だと思う。そして程なく、元刑事で兄の伊集院翔が中途入社する。
大企業に蔓延る巨大なモンスターを捕まえるためにね。
「花さん、今からお話すること、誰にも言わないって約束してくれる?」
さて、わたくしは綾坂花を少しづつ洗脳させなければならない。
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