悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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「うーん、そこそこ…あ、気持ちいいわ」

 日課となったお風呂上がりのマッサージを受けていた時の事だ。妙に機嫌の良いポピーが気になった。いつもより丁寧に揉んでくる。いえ、ちょっと痛いくらいだった。

 その理由は直ぐに分かった。ミーアが生徒会室へ入ったのを目撃したらしく、聞き耳立てたところ「陰険な虐めを繰り返し受けている」と王子様に訴えたみたいだ。しかもわたくしが扇動してるって。

 やはり馬鹿女は王子様と繋がってるって事よね⁈ マズい、マズいわ。王子様はわたくしの可愛い嫉妬だなんて思っちゃくれない。

「…それで?」

「はい、婚約を考え直すと仰ってました」

 これは完全に嫌われたな…。バッドエンドってヤツ。それにしても婚約破棄ですって??? いえいえ、幾ら何でも…?

「そんなのできっこな~い! 考え直す~? あのねポピー、これは陛下とお父様がお決めになった縁談よ。王子がひっくり返すなんてアンタ、出来るわけがないわ~」

 わたくしは動揺を隠すので精一杯だ。コイツにショックな感情なんて見せたくない。

「うーん、まあそう思いますけど、もしかしたら王子様は陛下を説得するかも知れませんよ?」

 くそう、反論しゃがる。小生意気な!

「まぁさぁかぁー? たかが王子に群がるムシを懲らしめたくらいでー? そーんなアンタ、くだらない理由で陛下が納得するもんですかー、うふふ」

「でも一応、虐めるのはお控えした方が宜しいと思います」

 言われなくたってもう控えてるわよ。

「ふん! 明日とっちめてやるわ!」

 ここは強がりを通すしかない。わたくしは余裕な素振りを見せてお部屋へ戻った。そして隠し持ってたワインをグラスに並々注いでがぶ飲みする。幾ら飲んでも酔わない。

「はあ…。うっ…う…」

 やがて自然と涙が溢れてきた。考えたくもないけどと言う言葉が頭から離れなかった。はっきり分かった事がある。わたくしは王子様にのだ。

 ベッドに潜り込んで誰にも聞こえない様、口に手を当てて嗚咽した。

「うう…っ…うわ…ん…ううっ…」

 思えば十歳の時、宮廷で「婚約者」だと紹介されて以来、わたくしの気持ちはエリオット様しか無かった。逢えない時もいつも想っていた。八年間、ずっと変わらずに。それなのにーー。

 何でこうなった? ポピーのせい? いえ、本当は分かってる…わたくしが馬鹿だから、おてんばだから、王子様のお相手らしい淑女になれなかったからだ…。

 その晩、泣きながら自分を責め続けていたけど、いつの間にか眠っていた。

 そして、次の日は貴族院へ行けなかった。
















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